多間野 蓮

英雄とは、決めたゴールを達成した時の自分自身である。

多間野 蓮

英雄とは、決めたゴールを達成した時の自分自身である。

最近の記事

劇「空夢」を見た感想

ひそかに楽しみにしていた演劇を見てきた。「劇団papercraft」の新作公演である『空夢』。今まで本劇団の作品を二つ見て感じたことは、独創的な世界観を広げつつ、散りばめられた断片的な情報から解釈の幅を持たせる作品が多いこと。本劇団を見に行くときは、事前にぐっすり寝て頭を空っぽにして、何でも取り込める万全の体制で臨むようにしている。過去作の『世界が朝を知ろうとも』と『檸檬』の感想はこちら。 あらすじ これからネタバレ注意 感想 同級生の街に住む婚約したての夫婦に舞い込

    • 宮古島のサーフィンと移住のコツ

      5月中旬に宮古島へ。GW明けから梅雨入りと聞いていたが、運よく天気に恵まれた三泊四日だった。宮古島はリゾートの印象が強く、Youtubeでもホテルステイで都会の疲れを癒す動画が多く上がっているが、私はマリンスポーツ(主にサーフィン)を通して、宮古島の暮らしにできるだけ迫れればと考えていた。やっぱり観光客と住民では越えられない壁があるし、観光客が住民になるためには通過儀礼のようなものがあるらしかった。それには、平良市の時から受け継がれた豊かな自然だけでなく、そこにある営みや暮ら

      • 台湾行きました(3日目)

        3日目(台中) ホテルとの相性はよかったみたいだった。酒を飲んだ翌日は運が悪いと喉が全滅する。旅なのに不調だとなんだか悲しくなるよな。相変わらず外は灼熱で影を踏んで歩道をそろりそろりと歩く。前日のビビりが今日まで尾を引いてる。朝は第四信用合作社でアイスを食べることにした。 王道の宮原眼科に行かず、姉妹店に行くあたり拗らせた性格が出てるよな。連休明けだったからか10時頃の店内は空いていた。周りを見渡しても誰も一人で来てないんだよな。意外と家族ずれが多くて、幸せそうにアイスを頬

        • 台湾行きました(2日目)

          2日目(高雄・朝ごはん) チェックアウトを無事に済ませ、サウナの如く蒸し暑い港沿いに出てきた。肉まんが有名な興隆居へ朝ごはんを食べに行くためだ。距離にして3kmなのだが、炎天下で心が折れると思い、Uberを使わせてもらうことにした。12分の道のりで140元(630円)。店の前はすでに行列ができていた。だいたい20人ぐらいだろうか。しかし、回転が速く10分もかからず注文にこぎつくことができた。店先では肉まんが蒸気で温めてられており、逃げ場を失った熱気が全身に襲い掛かってくる。も

          台湾行きました(1日目)

          2024年5月、台湾の台北・台中・高雄に行きました。台湾は八年前に友達と一度訪れてましたが、といっても当時のメインは香港で乗り換えついでの一泊二日。遊びつくせないなというのが率直な感想でした。今回は三泊四日と長く、台北だけでなく、台中と高雄にも行ってみました。せっかくですので、思い出すためにもここに書いていきたいと思います。 1日目(羽田空港) 羽田空港を5時半に出発するフライトのため、当日にタクシーで行くか、前泊する必要がありました。しかし、その日は巨人vs阪神の試合を東

          台湾行きました(1日目)

          短編小説:公園での話

          ひらひらと舞い落ちる桜の向こうには、みずみずしい葉が顔をのぞかせている。4月は一番好きだ。花粉症もないし、じめじめしているわけでもない。それに秋よりは春のほうが、なんだかさわやかな感じがしないか。 そんなことを考えていると、表示板の前に男がいた。ダウンにスラックス、おまけに靴まで黒いときた。ナイロン生地のダウンは朝日に反射して、テカテカと小刻みに光っている。腕を組み、人差し指を上下に動かしては、小声であーでもない、とつぶやいている。異物さを例えれば、公園のゴキブリである。

          短編小説:公園での話

          転職ブームで感じること

          転職ブーム近頃、周囲には転職を考える人々が増えてきた。それはまるで、新たな風が吹き始めたかのように、自然に力強く、選択を迫ってくる。しかし、私は転職を思い立っていない。仕事の不満もなければ、業種を変えるほど挑戦したいことがないからなのなどだが、一番は低燃費で仕事ができているからになるだろう。 仕事は何も背負ってないと長く走れるこの状況を例えるならば、私は荷物を背負っていない長く走れるトラックのようだ。一方、熱量や思いを背負った人々は、その重さを抱えて走るトラックだ。彼らは

          転職ブームで感じること

          東京の村社会について

          東京の村の存在東京は日本の首都であり、全国から集まる人々の多様性と活気にあふれている。しかし、その中には"村"と呼べるような独特のコミュニティが存在する。村と聞けば、田園風景や木々を思い浮かべる人も多いだろうが、今回の”村”とは具体的な地理的な位置づけや農業地帯を指すものではなく、そこに根付く人と人との強いつながりや共通化されたルールを指す。 バーの暗黙のルールこの"村"の一つがバーの世界。バーには、特定の暗黙のルールや常連客との特殊な付き合い方が存在する。例えば、特定の席

          東京の村社会について

          ブルームーンになりたくて

          数か月前の話。 これがブルームーンってやつか。酒を1杯ひっかけて気持ち良くなってた俺らは月が見える高台に来ていた。蒸し暑い日中も夜になって風が吹くと心地がいい。夏はこうでなくっちゃなと喉に流し込むビールがなおさら美味しかった。はしゃぐ彼女を耳で感じながら、右手はポケットに突っ込んでただただ月を眺めてたんだ。 高台といえど、ビルの光が強くて、月がなんだか申し訳なさそうなんだよな。ブルームーンっていうくらいだからもうちょっと頑張れよ。だけど、そんな弱弱しい月を見ながらなんだか同

          ブルームーンになりたくて

          糞みたいな世界で楽しく生きていきたい

          生きていれば辛いことだらけだ。それは日常的なもんで、飯を食らうと糞をするような頻度で平等に訪れる。そりゃあ、褐色がかった吐しゃ物みたいな糞を見たら気分が悪くなる。だが、キショい糞を便所以外でまき散らしたら駄目だ。ましてやぶん投げたり、まじまじと大事な人に見せつけるなんて、こっちが見ていて吐き気がする。だから、糞をしたら便座を占めて流さなくてはならない。トイレの常識だ。 しかし、糞を投げつけては周りを不快にさせてる輩を時々見かける。日々の恵まれない境遇を吐き捨てては、そうだよ

          糞みたいな世界で楽しく生きていきたい

          久しぶりに高校の同級生に会いました

          鼻にツンとする臭いは隣のスーツからにじみ出ているようだった。臭いは車内の上空に滞留し、前へ後ろへと行ったり来たり、逃げ場を失ったようにさまよっている。もし君の背が高いのであれば拷問でしかないだろう。そんなことは何処吹く風と、隣のスーツはニタニタした表情を浮かべ、窓ガラス越しに身だしなみを気にしている。これから推しにでも会いにいくか。金曜日の夜に。神奈川に向かう電車は、1週間の疲れと微かな週末の楽しさをかき混ぜて運んでいた。 集合場所は傾斜のあるエスカレーターの先にあるドンキ

          久しぶりに高校の同級生に会いました

          出世ルートから外れる中で

          長旅で疲れた頭を窓ガラスに預けて、後ろへと過ぎ去る風景に思いを馳せていた。私は激しく瓦解した2年半の努力をゆるやかに市街地から郊外へ運んでいたのである。それは敗戦の一言ではまとめられない、忸怩な出来事であった。 新案件にアサインされた私は浮かれていた。重要な役割かつ大規模な案件だったからである。それに、2年半の経験で会社に貢献できることが少なからずあるという自負が私にあった。 しかしながら、案件に対する私の期待値は想像していたよりもはるかに高いものだった。日を跨いで作成し

          出世ルートから外れる中で

          彼女と別れた理由が未熟だったので

          この胃もたれは、夜ごはんにパフェを食べたからだけではないようだった。金曜の終業後、一緒にパフェを食べた帰り道。そっと明日に向かって彼女に話しかけた。 「今夜、泊まりに行ってもいい?」少し間が空いて、「ごめん、明日の朝は楽器の練習がしたくて...」かすかに聞こえた声は少し奥歯に何か詰まったような、ぎこちなさを含んでいた。少しうつむいた彼女の横顔は髪に隠れて、見えない。 澄み渡った東京タワーの下で、僕は「好きを大切にする彼女」に惚れ、告白をした。周りに流されず、大切にしたもの

          彼女と別れた理由が未熟だったので

          天才を車窓で説明してみた。

          中野のバーでまどろんでいた金曜の夜。隣の会社員が「天才とは?」という話題をひざを突き合わせて熱心に語り合っていた。 目のギョロリとした方が、輪廻転生には時間の逆行性があり、現世のひらめきを過去に持ち込めると言っている。 正直なところ、私の中では輪廻転生の概念はあったらいいな程度の願望に過ぎず、現実味を帯びないものとして位置していた。 そんな感じで蚊帳の外でぼーっとしていた私だが、「天才とは?」に対する比喩的な解答をぼんやりと持っていた。 天才とは、人生というキャンバス

          天才を車窓で説明してみた。

          劇「檸檬」を見た感想

          運命とは都合がいい言葉である。ある時には心の緩衝材として、ある時には免罪符として機能するからである。 劇団papercraft第8回公演『檸檬』の感想を本日は書いていきたい。 この作品は、「口の消滅」と「超次元的存在の井上さん」の非リアルな設定に意識を持っていかれがちだが、対峙する名取の心の動きにもぜひ注目して欲しいし、そうすれば、より香ばしく作品を楽しめるなと感じた。 私が読み取った名取の心情の変化は以下のとおりである。(以下、ネタばれを含みます。) 名取は、学生時

          劇「檸檬」を見た感想

          山をたとえにした2つの教訓

          教訓を伝えるとき、例えを持ってくることが多い。 それはマラソンであったり、壺であったりと様々だ。 今日は「山」を例えとした教訓を共有したい。 1つ目は小学生の恩師の言葉で、2つ目は私が社会人になって学んだことだ。 登るなら高い山に登れ 小学の卒業式の前日、J先生は黒板にそれぞれ大小の山を6つほど書きならべた。 「これから、お前らは中学生、高校生、そして社会人となっていく。そこで、俺が大事にしていること伝えたい。登るなら高い山に登れ。高い山には危険がつきものだ。楽ではな

          山をたとえにした2つの教訓