短編小説(猫シリーズ3)あまり猫ロココの物語2
のりちゃんは
そのころ高校生活に悩んでいるようだった。
のりちゃんは
小学校生の時も 中学生の時も
それなりに優秀な成績で
お母様の根回しのおかげか
先生方も構音障害によるいじめはないか
朗読や歌のテストなど辛い思いはしてないかと
それなりに気を配り
配慮してくださっていたようだ。
それに根は明るい性格で、実は饒舌だから
打ち解ければ、どこででも可愛がられる子供だった。
特にご両親が大切に育てたので
卑屈になることも
それまではあまりなかったようだ。
それでも一時
上級生のお兄さんたちにからかわれたことはあったが
直ぐに卒業し
高校性になるまではおおむね平穏な生活を送ったようだ。
だが、高校へ行ってみると
川の向こうとこちらの生活の違いが身に染みるばかりか
勉強も優秀とは程遠い状態になり
やはり障害のことがあり最初の一歩を踏み出すのに
大きな壁がはだかるのだった。
ようするに友達を作るのに困っていたのだ。
入学してからしばらく席替えがなかったので
席が近くだった春さんと洋子さんとは
なんとかおしゃべりできたが
ふたりともお城のある川向こうに住んでいて
身だしなみや立ち居振る舞いから
お金持ちの雰囲気を漂わせていたそうだ。
確かに春さんお家はご両親が公務員をされている家で
こぎれいな洋風の絵や花瓶などが応接間に飾ってあったが
のりちゃんのおうちは
薄暗い仏間と座敷に小さな神棚があるだけで
きらびやかな装飾品は何一つなかった。
そんなとき、春さんから僕の話を持ち掛けられたので
もう犬がいるからと
乗り気じゃなかったお母さまを泣いて説き伏せて
僕ををもらってくれたのだった。
のりちゃん家の犬はエルは
狩猟犬のような格好で
お父様が同僚からもらったものだった。
いつも鶏小屋を見張っていた
おうちが田んぼの真ん中だったので
誰からも見られず狙いやすかったのだろう。
人と見ると狂ったように吠え立てるので
ニワトリさんには大いに興味があったが
僕も鶏小屋には近づかないようにしていた。
エルを怒らせたらひとたまりもないことは
幼い僕にも容易に判断できた。
のりちゃんは普段の日はは学校に行くので
朝ご飯はお母さまが、
夜ご飯はのりちゃんがくれた
昼間は御祖母さんと一緒にお昼寝しているときが多かった
まだ僕は赤ちゃん猫だったから眠かったんだ
でも僕はその家族が大好きなり
家の近くを一日に2回パトロールして
2度ご飯を食べて
お昼寝もして
夜は2段ベッド下に寝ていた
のりちゃんの布団の上で寝た。
こんな風に毎日を過ごしていた。
僕がのりちゃんの家に来て2カ月ほどした夏休みには
春さんと洋子さんが僕の様子を見にやってきた。
のりちゃんは小さなお家のことを
少し恥ずかしく思っていたようだったが
春さんは
僕のことをコロロが元気で良かったと
抱きしめてくれた。
なんだかこそ場痒く感じ直ぐにすり抜けてしまった。
本当はのりちゃんが悲しんだらいけないと思ったんだけど。
お母様はいつものように明るく
「まあ。のりがいつもお世話になってありがとうね」
と言いながら、麦茶とお手製のドーナツを出し
小さな叔母さんが買ったステレオで
春さんが持ってきたオフコースのアルバムと
洋子さんが持ってきた
サイモンとガーファンクルのアルバムを聞きながら
談笑し、ドーナツを食べて帰って行った。
そんな風に穏やかに月日が過ぎ
のりちゃんもなんとか学校に慣れてきた
そんな秋の終わり
3月の中頃産まれた僕は
もう少年から青年になろうとしていた。
だから外にいる時間どんどんが長くなり
それでも夜になると
のりちゃんの布団の上に戻って眠った
でも僕はお正月が過ぎたころから
好き女の子が出来たんだ
もう気になって 気になって
夜じゅう泣きながら探しある歩いたこともあった
自分の声じゃないようんな変な声になったので
僕自身が一番驚いた
そうやって無事に好きな女の子に合える日もあるが
たまにはライバルに出くわし
一戦交えなければならないときがあった。
僕は強そうな相手に会うと逃げるようにしていた
それが飼い猫の役目だと母から教わっていたからだ
怪我をしたり、病気になったりしたら
お金を出して病院に連れて行ってくれる
春さんちのようなお家もあれば、
そのまま放っておかれて、
死んだら裏の庭に埋めるような家もあるから
自分の身は自分で守らなければいけないと
離れる日の朝に強く言い含められていた。
どんな恋も
春が終わるころには覚めるから心配ないと・・・
そうやってのりちゃんは2年生になり
ずっと英語と数学が嫌いなままで
国語と歴史と生物だけじゃあ大学にはいけないぞと
先生に言われ続けて頭を抱えていた
僕も同じ4月に無事に成人式を迎えていた
のりちゃんは好き嫌いが激しく
国語や歴史の勉強ばかりして
関数が出てきたらもう数学は嫌になったし
歴史の年号は頭にはいるのに
英語の単語や慣用句は全く頭に入らないと
直ぐに辞めて好きな小説を読んだり
でも深夜まで起きて、
鶴公のオールナト日本を聞いたりしてた。
そして2度目の冬がやってきました
また僕はソワソワと変な声を出しながら
外を歩きまあるようになり
去年よりすごい声で
自分で自分が嫌になりそうだった。
のりちゃんも
進路のことでお母様といつも言い争いをしていた。
お母さんは何とか頑張って栄養士か薬剤師のような
資格が取れるように理系へ行けと言い
のりちゃんは自分が理系になっても
もっと付いてゆけなくなるから
一番好きな国文科の学校に行くため
文系しかないじゃろと
またいつもの泣き作戦で訴えて
冬休み前までに文系選択
希望学科 国文科 法科と書いて
学校に提出したのだった
続く
見出し絵はあさのしずくさんの
可愛い猫のイラストを使わせていただきました
どうもありがとうございます