夫から盗んだ私の口癖が、我が家の幸福度を爆上げしている
夫と一緒に暮らし始めて最初の平日の朝、7年前の、あれは確か2月7日。
まだ寝起きでぼんやりした様子の彼が、私を見送りに玄関先まで来てくれた。
「いってらっしゃい。楽しんでね~」
彼が寝起きで本当に助かった。
同棲3日目の朝にはあまりにも不釣り合いな表情で私はドアを閉めた。
今年の結婚記念日、私が7年越しの衝撃を夫に伝えると、
「え?俺そんなこと言ってた?うーん?確かに言ってるかな?無意識だったわ!」
と驚いていた。
そう、無意識に、これから仕事に行く人に「楽しんでね」と声をかけられる人なのだ。
子どもが大きくなるまでは怒ったところを見たことがなく、少年のようではあるが、だいたいにおいて余裕がある。そしてポジティブ。
私は彼が人生1周目でないと踏んでいる。
人生1周目でこんなに素敵な人は、たぶん私にプロポーズをしない。
そうそう。「楽しんでね」だ。
私だったらせいぜい「がんばってね」が関の山。
がんばろうね、かもしれないし、ファイト!かもしれない。
とにかく、なんとか乗り越えてやってこうや!という気持ちで声をかける。
当時システムエンジニアだった私にとって、仕事は決して楽しくはないもの。つらいほどではなかったが、お金を得るための手段以上ではなかった。
職場を見渡しても、仕事ができる人はたくさんいたが、「仕事タノシー!!」なんて人はいなかった。
夫の仕事はまったく別で、世間的には「好きなことを仕事にしている」部類に入る。
楽しんでね、か。
そうかあ。
やっぱり好きなことを仕事にしてる人は言うことが違うぜ。
とか思いながら、コロナ前の満員電車に揺られながら通勤したのを覚えている。楽しめそうにないよと。
そこから私の密かな特訓が始まった。
と、したかったのだが、なかなか夫を仕事に見送る機会がない。
とてもじゃないけど楽しんでねなんて言えない形相の彼を目の前にして言葉をひっこめたり、こちらが寝ぼけている時間帯に、お疲れさま、と声をかけるばかりだ。
無事に結婚して数年経っても結局、いってらっしゃい、の後は恥ずかしくてぎこちないままだった。
そんな私にチャンスが訪れたのは、娘たちが保育園に通うようになったとき。
夫相手には照れくさいことでも、可愛い娘たちになら言える。
保育園で楽しい時間を過ごしてほしいというのも本心だ。
毎朝の「いってらっしゃい!楽しんでね!」を今こそ!!
毎朝毎朝、言い続けた。
玄関先で、夫と娘たちに。
保育園で、部屋へと送り出す娘たちに。
娘たちと一緒に、出掛けていく夫へ。
おかげさまで、もはや私にとって「いってらっしゃい」と「楽しんでね」はセットだ。
娘たちもその言葉で私を送り出してくれる。
長女に至ってはマインドがかなり夫寄りなので、寝る前にも「はあ~、今日も楽しい日だったねえ」とか言っている。
言葉は言霊。
いってらっしゃい、気を付けてね!で事故率が下がるのなら、
いってらっしゃい、楽しんでね!で幸福度は上がるんじゃないか。
この言葉のおかげかどうか分からないが、娘たちが登園時に泣き叫ぶことはほとんどない。ありがたいことに登園拒否も行き渋りも未経験だ。
この言葉を私にくれた夫と、私の数年がかりのプロジェクトを達成させてくれた娘たちに、私はこれからも伝えるよ。
大好きなあなたたちが今日も1日、楽しい時間を過ごせますように。
いってらっしゃい。今日も楽しんで。