イタリア語の野宿メモと、ジェノバでの思い出
懐かしいメモが出てきた。
4カ月間ヨーロッパで自転車旅をしていた時のものだ。
フランスからの国境を渡る直前、グーグル翻訳を使って書いた下手くそなイタリア語である。
「私の名前はMOEです。日本人です。
ポルトガルから自転車で旅をしています。
今夜寝れる場所を探しています。
御宅のお庭にテントを張らせてもらえませんか?
明日の朝には去ります。ありがとう。 」
チャリ旅をしていた当時、7割は野宿、3割は都心のホステルや有料のキャンプサイトを利用していたのだが
ひっそり野宿する場所がどうしてもみつからない、夕暮れまでに目指してた場所に到着できなかったなどのハプニングがあった時、ごく希に誰かのお庭にテントを張らせてもらうという「半野宿」をすることがあった。
スペインやフランスではそういう時の対策を用意していなかったので、困り果てた挙句、近所の人をつかまえて拙い言語能力やジェスチャー、グーグルを使いながらなんとかコミュニケーションをとっていたが
イタリアに入る頃には慣れたもので、挨拶や基本フレーズと一緒に、上のメモをあらかじめ用意してから入国したのだった。
当時はそのままバルカン半島の方まで漕ぎ続ける予定だった。フランスでよくしてくれた夫婦が「あなたの冒険談面白いからもっといろんな人のお庭におじゃましなさい」と言ってくれたのが嬉しくて、イタリアからは半野宿の回数をあえて増やしてみようかとも考えていた。
結局一度もやることはなかったのだけど。
国境を超えて数日後、Genovaに到着した。
この街と、たまたま泊ったホステルに惚れ込んで、そこで突如チャリ旅は終了。ホステルでスタッフをしながら、2カ月暮らしましたとさ。
ジェノバが恋しい。
築四~五百年が当たり前の建築も
パスタ(バジルの genovese、くるみの salsa di noci)も
1ユーロのエスプレッソも
上から見渡すスレート屋根の色も
ついつい買ってしまうフォカッチャやファリナータ(ひよこ豆お焼き)も
「母を訪ねて三千里」の舞台であるとふと気が付いた港も
不思議な食材に目を輝かせたMercato Orientale市場も
何度も通ったOrsoというバーや、その熊っぽいオーナーも
迷子になるのが楽しい細くて入り組んだ道も
安いのにめちゃくちゃ美味いワインも
アペルティーボで賑わうテラス席の広場も
徒歩でどこでも行けちゃうちょうどいい規模感も
あの歌のように抑揚の強い言語の響きも
表情豊かで、食にこだわりが強くて、地元愛が強い現地の人たちも
一緒に馬鹿やったスタッフやゲストたちとの出会いも
みんなみんな恋しい。
次ジェノバに帰えれるのはいつになるかな。
2020年12月5日 東京都祖師ヶ谷大蔵より
もえん