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韓国の『大学知性』が『K-POP原論』韓国語版の書評を!

『大学知性 In&Out』(대학지성)にイ・ヒョンゴン(이현건)記者が『K-POP 원론』(노마 히데키 지음. 연립서가. K-POP原論)韓国語版への精緻な書評紹介をお書きくださいました。日本語訳します。原文は最後部に。

「Kアートの誕生」…ことば(言語)+音(サウンド)+光(視覚的造形)+身体性'が統合された世界像
イ・ヒョンゴン記者

承認2024.10.26 10:00

■K-POP原論:ことば、音、光、身体性が調和した21世紀型総合芸術
野間秀樹著 連立書架 本文696ページ(+図録16ページ)

「ハングルの誕生」を世界文字の奇跡であり「知の革命」と宣言した著者・野間秀樹は、K-POPを、音楽という狭い領域を突き抜け、Language、Audio、Visualが渾然一体となり、インターネット上を高速で飛び回る「LAVnet(レブネット)時代」に最適化された「Kアート」と再定義する。そして「Kアートの誕生」を芸術の表現様式と存在様式、そして私的所有方式まで変革させた「アートの革命」と位置づける。 K-POPは舞台と客席の境界を壊して24時間を劇場化する「21世紀の地球型共有オペラ」、総合芸術として私たちのもとへに訪れた。

本書を貫く質問はこうだ。 「世界はなぜ「K-POP」に熱狂するのか?」楽観的な展望にとどまらず、問いは続く。 「K-POPの熱気はいつまで続くのか? それともK-POPは崩壊するのか?」答えを求め著者が選んだのは、アーティストとクリエイターが心血を傾けて作った「作品」自体を直視する正攻法だ。ことば(言語)+音(サウンド)+光(視覚的造形)+身体性'が統合された世界像であるKアート作品(=主に3世代以降のMV)を分析する枠組みは、著者の専攻領域である言語学と、彼の出発点だった現代美術家としての目を生かした美学だ。

著者が解説するK-POPの根本理論とは何だろうか? 『K-POP原論』は、社会学、マーケティング論、メディア論、ジャーナリズムなど周辺の言説に期待せず、ただYouTubeの動画を一つの独立した作品として位置づける「作品論」を目指す。つまり、私たちの時代のアートとして、私たちの時代の世界像としてK-POP MVを見据える。 MVの中の分析対象は当然のこと、歌詞とラップと、旋律、ダンス、そして映像のイメージと色彩だ。

著者はK-POPがデジタルと仮想現実の世界に従うのではなく、デジタルとLAVnetを徹底的に利用しながらも、デジタルと全く相反する人の「体」を極限的に追求する点に注目する。 「身体そのもの」ではなく、「身体性を共有」する生態を実現したという点である。これはカル群舞のようなアーティストの驚くべきダンスだけを意味しない。身体を弄する小さなジェスチャー、いたずら、戯れ、表情のような、さり気ない動作を意味する「アンティクス」までファンと共有して連帯を図る。アーティストとファンに加えて、単に撮る装置を超えて「一緒に踊る=身体化されたカメラ」までがこれに加勢する。

K-POPの「言語」を分析する3楽章は、著者ならではの「キルポ」(킬포 killing point)、独壇場である。 「なぜ世界各国のファンが意味も分からない韓国語の声とラップにはまるのか」という問いに対する答えが一つずつ明らかになる。英語の専有物だったラップが、韓国語でも可能なだけでなく、日本語を含む他の言語に比べて有利な点は、何だったのだろうか? 私たちには慣れきってきちんと感知できなかった韓国語の音の秘密は、非母語話者には見慣れない魅力的な要因となる。例えば、声門を綴じ、肺からから出る空気を遮断することで母音を切る声門閉鎖を、自由自在に駆使すること、韓国語の音節の末尾に立つ七つの子音が、徹底して閉鎖される非開放性が、代表的な例だ。 IVEの「Love Dive」とBTSの「血、汗、涙」(피 땀 눈물 / Blood Sweat & Tears)、Stray Kidsの「MANIAC」などの最初の小節から強打するこのようなボーカルの秘法は、この上ない密度感と緊張感を与える。世界でオノマトペ(擬声擬態語)が最も豊富な言語第一位と言われている韓国語であるがゆえに、K-POPには擬声語、擬態語のユートピアが繰り広げられる。

著者が挙げたK-POPの表現様式上の特徴を、最も広い範囲でまとめる用語を本書に求めるなら、「多元主義」だ。この性格はグループの構成だけでなく、作品自体が持つ旋律や歌詞など全方位で確認される。 K-POPグループのメンバーだけでなく、クリエイター(作曲作詞家、振付家、プロデューサー)まですでに世界中で集まった多民族的、多文化的なマルチエスニック(multiethnic)な性格を軸にする。このように様々な集合体がお互いがお互いの存在感を際立たせる非全体主義、非画一主義を目指す。歌詞も韓国語だけでなく、英語、日本語、中国語、スペイン語など2つ以上の言語が有機的に、または遊戯的に結合する複言語性(plurilingualism)を指向する。サウンドは複数の旋律と、相異なる「存在論的な声」が合わさってマルチトラックへと進み、多声性を浮き彫りにする。歌詞作法の側面から見ると、物語性を強調する系列だけでなく、象徴的な詩句の片鱗片鱗を集積して構築していく系列が、豊かな変化と多元性を裏付ける。これは音、旋律、ことば、事物、映像など多様な対象を選んで収集して単純に配列するのではなく、高速に変容させ、音とイメージの新たな動的造形を創出するブリコラージュ(bricolage)という野間秀樹式のK-POPの定義とも一致する。

印象主義、リアリズム、ポップアートのような美術史の流派を呼ぶように、K-POPなりの独特の表現様式とスタイルをこの本ではコレアネスク(Koreanesque)という用語で呼ぶ。単に「コリア風」程度と解釈できるが、単純な「韓国的なもの」をただ有していることを意味しない。絶えず変形する繊細な色彩に代表される「伝統の21世紀的メタモルフォーゼ(変形)」を、様々な動画作品を通じて確認することができる。

まさに世界を席巻したと評価されるK-POPの未来に関しては、著者はどんな見通しを下しているのだろうか。ひたすら作品論を目指すとしたが、K-POPの危機説と多様なノイズも絶えない現場にあって著者が下す診断と次のような課題は、様々な示唆点を伝える。 (a)「変化、変化、そしてより多くの変化を! (b) アーティストやファンダムに寄りかかるな! (c) 全体主義、集団主義、ミリタリズムと決別せんことを!

著作権者©大学知性In&Out
イ・ヒョンガン記者

■原文:

https://www.unipress.co.kr/news/articleView.html?idxno=11286


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