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9歳の大実験 冬

これはわたしが小学3年生の時に、友達と行った大実験の話である。

言い出しっぺはわたしだったのか、友達だったのかは、覚えていない。ただ、あるとき急に

「サンタさんって本当にいるのかな。」

という話になった。なぜか夏の日だった。

サンタさんがいるかどうかは、これくらいの年齢の子どもなら誰しも疑問に思うことの一つだと思う。

わたしたちは、サンタさんが本当にいるかどうか、確かめようということになり、作戦を立てた。


「サンタさんって、欲しい物はお願いすれば何でもくれるんだよね。じゃあ、魔法の杖を頼もうよ!」

魔法の杖さえあれば、サンタさんに頼らずとも何でも手に入るという魂胆だった。


ということで、その年はサンタさんに魔法の杖をお願いすることにした。

その夏から冬にかけて、わたしと友達は魔法の杖を手に入れたらという妄想を繰り広げ、「秘密遊び」といって、魔法の杖を手に入れた前提で魔法使いとしてのごっこ遊びを楽しんだ。


さて、クリスマスが近づき、親から今年のクリスマスプレゼントはどうするのか聞かれた。わたしの家ではサンタさんに電話して、プレゼントをお願いすることになっていた。親の前で、サンタさんには筆箱がほしいとお願いした。

そして、親のいないところで、魔法の杖がほしいとサンタさんに電話した。ワクワクが止まらなかった。



12月25日。朝。
いつもより早起きして、自分の部屋を見渡すと、プレゼントが置いてあった。

筆箱、図鑑、色鉛筆、ハンカチ…。

魔法の杖はなかった。

リビングに行くと、親はもう起きていて、サンタさんは来たか、わたしに聞いた。

「うん、来たよ」

上手く笑えなかった。魔法の杖がなかったことは親には言えなかった。

いや、9歳ながら魔法の杖なんて、この世にないことは本当は分かっていたのだ。でも、サンタさんはいるんじゃないか、いるんだったら魔法の杖は用意できなくてごめん、みたいなメッセージがあると思っていたのだ。

確信は持てないけど、やっぱりサンタさんはいないんだなってそう思ったクリスマスになった。


冬休み明け。友達と学校で会った。

お互いにバカなことを期待してたんだなって恥ずかしかったのだと思う。クリスマスのこと、魔法の杖のことは全く話さなかった。

こうして、9歳の大実験は終わった。
このことをきっかけにしてなのか分からないが、一緒に実験をした友達とは少しずつ疎遠になっていった。


そして、あれから15年ほど経った今、時期はずれだと思いつつ、クリスマスについての思い出を書くわたしであった。


おわり。

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