信頼に足る情報を得るために必要なものは、お金であってよいのか

デジタル化が進むジャーナリズムの現状や問題点、逃れられないジレンマを整理してくれている記事です。
とても勉強になるんですが、ワケあって、クリックするのをちょっとだけお待ちください。

このサムネイル画像にも描かれているように、有料購読=ペイウォールと表現され、第2項のインデックスは『ペイウォールの功罪』となっています。

その第2項はこんな文章で終わります。

健全で独立した報道機関は、民主政が機能するうえで必要不可欠な存在だと広く理解されている。そうした報道機関があるおかげで、市民は確かな情報を得られ、デジタルプラットフォームにはびこるうわさや一面だけの真実、プロパガンダといったものに惑わされずに済むからだ。この点で、最もクオリティの高いジャーナリズムの大半がペイウォールに囲まれてしまうことは、やはり問題だと言わざるをえない

大事なのは最後の文です。

最もクオリティの高いジャーナリズムの大半がペイウォールに囲まれてしまうことは、やはり問題だと言わざるをえない

この文が最後、というか、この先は有料購読者限定(!)です。
ペイウォールに囲まれた中にあります。


いや、切る位置、そこだけはあかん!www

WIREDは別にクオリティの高いジャーナリズムなんてやってませんよ、ってことなのかな?
なんて思いつつ、原典からお送りします。こっちは無料公開です。

内容をザックリまとめると、

・デジタル化によるメディアのビジネスモデル変遷
・広告課金モデルからフリーミアム的モデルへの変化
・情報課金がもたらす格差助長への問題提起
・非営利モデルの登場
・広告/有料化以外の収益ソースの模索

みたいな感じです。

特に気になったのが3つ目。引用します。

A report released last year by the Reuters Institute for the Study of Journalism maps the divide that is emerging among news readers. The proportion of people in the United States who pay for online news remains small: just sixteen per cent. Those readers tend to be wealthier, and are more likely to have college degrees; they are also significantly more likely to find news trustworthy.

アメリカでオンラインニュースを有料購読している人の割合はわずか16%にすぎず、彼らは給与水準が高く大卒者の割合も多い傾向にあり、ニュースを信頼する傾向も大変高かった。

と。そして少し違う角度から、以下の通り。

Rusbridger writes that he and others who opposed charging for digital access worried “about the best information being restricted to those who could pay for it, while the rest fed on scraps.

(前略)有料化に反対するメンバーは「お金を出せる人だけが最良の情報を得て、残りはゴミをあさる(ような状態)」を恐れた。
the new reality in which 98 per cent of Americans were now excluded from the NYT’s journalism and might well have to make do with substandard information.

アメリカ人の98%がNYT(New York Times)の報道に触れられず、水準の低い情報でどうにかしている、という新しい現実

すなわち、

“In a world of almost limitless information, the best would be available only to the more affluent. The rest of America would make do with an ocean of free stuff; some true, some fake.

世界にはほぼ無限の情報があるが、最良の情報は裕福な人だけが触れられる。残りのアメリカ人は無料の情報の海(真実とフェイクが混じる)でどうにかするしかない


これはなんとも、辛い現実じゃないですか。

時代の変遷に伴って、情報取得にお金をかけることが当たり前になったと思っていたのが、正直なところなんですけれど、全くそれは一般的ではないということですよね。

嘘を嘘と見抜ける人でないと(ネット掲示板を)使うのは難しい」とは、かつて一世を風靡した名言ですが、まさしく、デジタル化によって民主化された情報の世界では、正しい情報にアクセスする方法と、正しさを見抜く力が必要です。


昨今の情勢で、日本においてもマスメディアの姿勢が非難されたりするシーンがありました。これは要するに、情報発信者としての責任を問うていたのだと理解していますが、視聴率≒収益のモデルである以上、経済活動の合理性情報の信頼度との間の関連性が低くなってしまうのも仕方ないものでしょう。

かと言って、情報の信頼度に直接課金するモデルに移行したところで、正しい情報に辿り着けない方の割合はさほど変わらないのでは、というジレンマを紹介してくれていたのが、今回の記事です。

根本解決するには、情報との付き合い方をキチンと学べる環境が必要なのだとも思いつつ、正しい情報に触れる方が増えてしまうことで不利益が生じる側面がある(特に既得権益を守る意味で)かもしれないと邪推すれば、果たして実現するかは眉唾かなぁ。という印象だったり。


まぁ、何はともあれ、時代の変遷に逆らわず自衛する他ないのでしょう。

と言いつつ、もしかすると僕の今こうしておこなっている、価値ある情報の紹介は、何かを打開する方法なのかもしれません。僕一人でできることなんて限られていますが、そんな一部の限られた人に"良い情報"を届けることはできるかも

マイクロコミュニティが持った可能性の一つを垣間見たような気がするのでした。

なんてね。


ということで、お付き合いいただきありがとうございました!

お相手は わたくし
納木 まもる でした。

次回も楽しんでもらえますように。

末尾ハンコ


しかし、WIREDのこのお茶目さには少しガッカリせざるを得ないのでした。

有料購読での収益源確保に関しては賛成ですし、WIREDの提供している価値は非常に高いと思っていますし、僕がファンの一人であることは明確です。

ただ、原文が無料公開されているものを和訳しただけで、価値を見い出せとは、機械翻訳の信頼度が極めて向上したこの2020年において、いささかお茶目すぎるような気がします。

まして、この記事の内容は、最も注意深く扱うべきものだったのではないかなぁ。などと。WIRED、大好きなんだけどなぁ。




読んでいただいてありがとうございます。貴重な時間をいただいていることは自覚しつつ、窮屈にならない程度にやっていきます。