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【短歌・語り】「一本の糸」/シロクマ文芸部"マフラーに"
マフラーに
編まれた毛糸
人の世の
つながりであり
歴史でもあり
じいさんとはな、お見合いだった。
結婚する前に会ったのは、たった2回。
別に惚れた腫れたの感情もなかったが、3回目に会った時は結婚式だった。
でもどういう縁か知らんが、一本の糸だった私の人生にな、じいさんという糸が絡んできて、そこに生まれたお前たちという糸が編み込まれていった。
お前たちが結婚して、新しい娘や息子ができて、さらに縁が広がって。孫が生まれて、どんどん編み込まれていく。
家族だけじゃない。親戚、知り合い、友達。そういう糸も絡み合って、一目一目編まれていく。
そうやって世の中は作られているのかもしれんなぁ。
でもな、マフラーは元々一本の糸でできている。
不思議だよなぁ。解けば一本の糸なんだよ。
解けばたった一人の人。
たった一人の人生。
絡んで編まれて広がって。
それが他の人を温めるマフラーになるんだよ。
そう言いながらおばあさんは、おじいさんの遺影を見上げた。
昔おじいさんに作った手編みのマフラーに空いた穴を繕いながら。
元に戻ることのない穴を繕いながら。
終
こちらに参加させて頂きました。
半分実話です。
2作目ですが、よろしくお願い致します🙇