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【エッセイ】恋猫物語
恋猫と言えば、普通『さかりのついた猫』を意味します。
でも、ここで私が話したいのは、恋人ならぬ『恋猫』のことです。
私が小学生の頃、ニャーゴと名付けた猫を飼っていました。
他にも2匹の猫を飼っていましたが、ニャーゴは食欲旺盛で、他の2匹の猫にあげた餌まで取り返して食べるくらいでした。
体格の大きいニャーゴは、近所でもボス猫だったらしく、いつも威風堂々としていました。
そのニャーゴに異変が起きたのは3歳くらいのときでした。
急に何も食べなくなって、どんどん痩せていきました。
心配になった母が病院に連れていくと……。
病名『消化不良』
なぁんだ。食べ過ぎて消化不良を起こしただけか。
一安心しましたが、ニャーゴの食欲は戻りません。
お医者さんからもらった薬を飲まなかったのです。
骨と皮だけのような体。
息をするのも大変そう。
そのとき、母はミルクなどを飲ませるための注射器に薬を溶かして入れ、ニャーゴの口に突っ込みました。
抵抗するニャーゴ。
母の手をガブリと噛みます。
しかし母はやめません。
「ニャーゴ!これを飲まないとお前死んじゃうんだぞ!」
涙を流さんばかりに絶叫する母。
その声にビクッとしたニャーゴ。
その後、抵抗こそするものの、ニャーゴは薬を受け入れ始めました。
嫌がって。
涙を流すほど嫌がって。
それでも毎日薬を飲みました。
徐々に回復して何週間かした頃、ニャーゴは元の食欲旺盛なニャーゴに戻りました。
その頃からです。
ニャーゴが母の帰宅を出迎えるようになったのは。
人間には聞こえない遠くから来る母の音を聞き取って、100m先まで走って出迎えるのです。
そして母が家にいる時は片時もそばを離れません。母がいるところにはいつもニャーゴがいました。
まるで恋人と寄り添うように。
そんなある日、母が帰ってきたのにニャーゴは帰って来ませんでした。
いつものお出迎えもせずに。
心配して周囲を探しました。
そして……。
ニャーゴは見つかりました。
家に帰る途中だったのでしょう。
家の近くの道で、もう歩くことも、食べることも、母をお出迎えすることもできなくなった変わり果てた姿で。
5歳でした。
大好きなご飯をもっと食べたかったでしょう。
もっと母と一緒にいたかったでしょう。
もっとお出迎えしたかったでしょう。
ニャーゴの一生は短かったかもしれません。
でも、私たち家族の心には、大きく燦然と輝く、母の恋猫として今も生き続けています。
終
こちらに参加させて頂きました。
ニャーゴのことを書くのは2回目です。
以前、創作物語として書きましたが、今回は私の目から見たものとして書きました。
よろしくお願い致します🙇