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【340字詩小説】「言葉のない時代の言葉のない物語」/木の実と葉

木の実と葉っぱを二人で集める。

男の子は木の実を差し出す。
女の子は朱色の頬を葉で隠す。

男の子は木の実を剥きはじめる。
女の子はきれいな葉っぱを並べる。

葉っぱの上に置かれた剥いた木の実。
二人は一つずつ手に取って、口をアーンと開ける。
男の子は女の子の口に。
女の子は男の子の口に。

コリッと同時に音が鳴り、二人はニコッと笑い合う。
男の子は女の子の手を握る。
女の子はその手を握り返す。

二人はゆっくり歩きはじめる。
笑顔のままで、つないだままで。

村の煙はご飯の合図。
二人は一緒に走り出す。
つないだ手と手が離れないように。

二人が残した木の実の殻。
二人が残した木の葉っぱ。
ギュッと大地と手をつなぐ。

新しい木の実を産むために。
新しい葉っぱを産むために。

新しい時代につながるように。
つないだ手と手が離れないように。


こちらに参加させて頂きました。
いつもありがとうございます😊
言葉のない時代を言葉で表現してみました。
よろしくお願いします🙇

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