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乃井 万
2024年7月28日 08:09
図らずも僕、小畑琉(11歳)は夏休み初日から、古蓮町という田舎にある親戚のおじさん家に滞在している。お母さんの都合によって生み出された世紀の大誤算だ。 友達と遊ぶ約束も、近くの公園で開かれるお祭りに行く計画も、充実した夏休みの計画は僕の予定からすべて消えてしまった。迷惑極まりない話である。 しかもここは暇すぎる。田舎すぎて携帯の電波も入らないし、インターネットもない。今どきそんな場所がある
2024年7月30日 11:14
初めて来た街。 アスファルトやビルの照り返しがない、純粋で清々しい暑さ。稲穂の上を波のように渡る風。 暑さも風に乗ってやってきて、風と共に過ぎ去って行くような心地良さを感じる。 田畑の間を縫うように続く畦道。こんもりと生い茂る森の緑。 その一角に佇む赤い鳥居は、冒険の始まりを感じさせる。 それなのに私、迫沼美森(10歳)は、店番をしなければならなかった。 おばあちゃんは近所の人