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小説

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ショートストーリなどを含め、小説を載せて生きます。それぞれの小説は文字数的に数回に分けて、連載の形になります。ストーリーや登場人物に共感していただければ嬉しいです。
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2023年3月の記事一覧

大きな玉ねぎの下で(17)最終回

 無邪気に笑う亜紀。また会えるかわからない、もしかしたら二度と会えないかもしれない。だか…

大きな玉ねぎの下で(16)

「たくちゃん、食べ終えたらどこに行く?」  僕は亜紀への質問を忘れることにした。聞いて欲…

大きな玉ねぎの下で(15)

 「うん、なかなか会えなかったし、友達から『たくちゃんに似ている人が毎日遅くまでたこ焼き…

大きな玉ねぎの下で(14)

 今、起きていることが10年前と同じように感じた。いや、今起きていることは10年前に戻って起…

大きな玉ねぎの下で(13)

 「あの時、並んで立つのに、たくちゃんは私の右がいいと何度も言って。写真を撮ってもらおう…

大きな玉ねぎの下で(12)

「私に聞いてもわからないけど、一緒にいる時間を長くするためじゃないかな。今日もあのエスカ…

大きな玉ねぎの下で(11)

 亜紀も学生時代の話を思い出しているようだった。亜紀と夜行バスで会ってからずっと気になっていることがあった。子供がいるということは結婚をしているのだろう。でも、とてもそうとは思えなかった。はしゃぎ回る学生の時の亜紀のままだった。何かわからぬ違和感を感じていた。 「たくちゃん、ここ覚えている?」 「あ、ここで写真を撮ったよな」 「そうそう、たくちゃんがブロンズ像に並んで撮るって背伸びしたり、頬を膨らませて顔を野球のボールみたいにしたりしていたよね」 「そんなことしていたかな?

大きな玉ねぎの下で(10)

 出版社の玄関を出る時、受付の方が僕を見て微笑んだ。僕は名刺を持って受付に行った。名刺を…

大きな玉ねぎの下で(9)

「確かに原稿を預かります。君はいい目をしているね」 その言葉だけでも嬉しかった。 「まだ出…

大きな玉ねぎの下で(8)

ちらっと腕時計を見た川染さんは次の用事がある感じだった。 「ありがとうございます」 「あ…

大きな玉ねぎの下で(7)

 電波腕時計を外し、コーヒーカップの横に置いた。アポを取った時間に遅れないように、ここで…

大きな玉ねぎの下で(6)

「12時過ぎるかも」 「了解、じゃ、10時ころから神保町に出没しま~す(w)」 「え、2時…

大きな玉ねぎの下で(5)

 ここは喫茶店のはずだが、これだけある本を自由に読んでもいいのだ。実家の本屋より本が多い…

大きな玉ねぎの下で(4)

 僕は秋田に戻り、実家で本屋を経営している病気がちな父の手伝いを始めた。最初は「来年はどうするんだ?」と母がよく声をかけていたが、それも半年をすぎる頃から全く言わなくなった。それどころか一人っ子である僕が地元に戻ったことで父も母も安心し、喜んでいるようにさえ見えた。でも、僕の気持ちは自分の進むべき道が決まらず、悶々としていた。  父が経営している本屋といっても、大きな書店とは違い、店内は狭い通路の両脇に本が並んでいるという木造の小さな本屋だ。店頭には、雑誌が並べられ、その雑