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80年の口癖
「ぼちぼちね」
これは一昨年の冬に他界した、ぼくのばあちゃんの口癖だ。
標準語にしたら「程々にね」という意味になる。いつも別れ際はにっこり笑顔で「ぼちぼちね、ありがとね。」と声をかけてくれた。その度にぼくも笑いながら「ばあちゃんまた来るから!」と大きめの声で別れるのがお決まりだった。
ぼくは手先の器用さに結構定評があるんだけど、完全にばあちゃんの遺伝子を受け継いでいる。ばあちゃん家の玄関には、人形とかオーナメントが飾ってあるんだけど、梅雨はカエルとか秋はウサギとかとにかくめっちゃカワイイし、中には手作りの物もある!それが毎回楽しみでもあったんだ。
ばあちゃんはかなり豪快な人で、まだ元気で車の運転をしてた頃はめっちゃアクセル踏んで飛ばしてた。アクセルの音が尋常じゃなくてばあちゃんの車に乗るのがすげえ怖かった思い出がある。
あと、50年くらい一緒に生活してたじいちゃんの好物を間違えてたって話とかめっちゃ面白い。魚が好きだと思ってたら、じいちゃんは肉が好きだったんだって。黙ってたじいちゃんも、寡黙が過ぎるだろってツッコミたくなる。
じいちゃんもなかなか面白くて、わざわざホットコーヒー頼んで。それに水入れてストローで飲んでた。アイスコーヒーって知らなかったのかな。
そんなじいちゃんも、ばあちゃんのあとを追うように去年亡くなった。
じいちゃんは、もう最後の方は、ぼくたちが誰か分かっていなかったと思うけど、お見舞いに行けばニッコリ笑顔で「みんな大きくなったなぁ。」って。
きっとこれまでの人生、たくさんの苦労や悲しいことがあっただろう。それでも、二人とも最後に笑顔でいられたっていうのは、とても素敵なことだと思う。
口癖の話に戻すが、よく口に出す言葉ってその人の思考の大部分を支配しているモノだと思う。それに自覚的かそうでないかは別として。それほど思考と言語は密接な関係を持っている。ばあちゃんはいろんな経験を踏まえて「人生は程々が良い。」って考えていたのだろう。
ばあちゃんには悪いけど今は全速力で生きたいと思っているし、そういう意識で日々を生きている。若い頃のぶっ飛ばしてたばあちゃんに近いかな。
わりぃ、ばあちゃん!そういうことやで!
そうして最終的にぼくは、ぼくの人生をどんな風に振り返るんだろう。ぼくがジジイになったときの口癖って、どんなんになるのかな。「ぼちぼちな。」って言ってるのかな。「昔はよかった。」なんてショボいジジイにはなりたくないな。
ことばに注目してみると、いろいろ自分が見えてくるかもしれない。逆に、ことばを変えれば、じぶんも変わってくるかもしれない。
みんなは、どんな口癖ですか?
(終)
*思考と行動も繋がっている。こちらも合わせてどうぞ。
*ばあちゃんのように誰かに声をかけるなら。これもどうぞ。
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