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延藤 直也
2025年2月18日 08:28
鯨の呼吸のような電車の乗降吐き出されるものと吸い込まれるものほとんど同じでまったく異なる肩をぶつけ合い 足を踏み合う睨み合い 怒鳴り合い 殴り合う 鯨の口内で穏やかな波は醜い往来を流さない底へ 呼吸を許さない底へ沈める昨日より暖かい凪の水温
2025年2月17日 08:22
夜は暗ければ暗いほどいい、なぜなら誰にも見つかることなく、わたしの悪事すべて独り占めできるから。
2025年2月16日 08:39
硝子のように澄んだ空気の中で、煌めく渇きは、凛と。
2025年2月15日 08:03
眠れぬ夜、ここから海までの距離を思い出す。
2025年2月14日 08:19
呼ぶ声、母か、妹か、先生か、友人Kか、あるいはそこのあなたか、知る由なく尽きる、音
2025年2月13日 08:27
指間腔の冷たさ、斜め上、月は満ちた
2025年2月12日 08:32
いつやめてもいいとおもいおもうようにして続けてきた日常を振り返れば、それぞれの日々は少しずつちがうようにおもえ、すべての日々はまったくおなじようにもおもえる。なんでもない日々の中に、たしかになにかあった日があったはずなのに、振り返ればなんでもない日々の連続だったようにおもう。これから先も、これまでの日々とちがう日々が、まったくおなじ日々として続くとおもうと、おだやかにかなしい。
2025年2月11日 08:20
アスファルトのような砂浜とマグマのような海の境目は浅く深い。わたしではないだれかを呼ぶ声がはっきり聞こえる。その声にまとわりつくわたしを呼んでいるような声も聞こえる。定かではない。少しずつ遠ざかる声、溺れながら優雅に浮遊する。
2025年2月10日 09:55
言葉の破片を拾う。時に、手指の隙間からこぼれ落ち、時に、同じ破片を何度も拾い、時に、手に傷を負い、それでも、また言葉を拾う。探していた言葉はたいてい見つからないが、思いもよらぬところですばらしい言葉を拾う。拾い集めた言葉の破片を、つなげたり、ちぎったり、こねたり、まるめたり、しながら、一編の詩を作ってみる。ひとり、たったひとりで、詩について考える。詩を形成する言葉の
2025年2月9日 06:25
青と白、黒と黒、青と赤、境界や輪郭の明確さは、夏の様陽光が溢れて、微風が走る。梅の木影の揺れが、眩い。
2025年2月8日 08:10
ハンカチの落下音が静かに響いて同時に踵を返す歩みは速くそれより速い北風が登り坂を一気に駆け上がる
2025年2月7日 08:14
夜、洗濯物の乾きが揺れる。たったひとつも星が輝かぬ見上げる空、呼気の白さはのびやか。冷めたほうじ茶の甘さが、冷えた体内でゆっくり焼けていく。
2025年2月6日 07:57
本当の事言えないぼくはほんとのこといいたいんだ、ずっと。
2025年2月5日 08:00
昨日の続きの今日曇空の隙間ない広がり街の輪郭を縁取る小川の渇き行き交う電車の間に吹く風の速さ進み続ける刻み続ける時間が今が今であることに無自覚な身体をただひたすらに揺さぶっているほろ甘い微香が曲がった背筋をぐっと引き上げるとやわらかい音が鳴って瞬間が止まった