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英国現地観戦レポート Vol.1

Watford vs Swansea at Vicarage Road (第36節 24/3/7)

欧州サッカーは2024-25シーズンが開幕し、主要の移籍マーケットも閉じて気付けばすっかり9月。そんな中、昨シーズンの話になってしまい大変恐縮ではあるが、現地レポートVol.1ということで実際の観戦記を今回。

記念すべき現地初観戦はなんとなんとのイングランド2部リーグに相当するタイトルに記したチャンピオンシップの一戦だった。
理由としては「はじめに」と題したこちらの記事で紹介したようにチケット代が安く席も取りやすかったからだけのことであった。


試合概要

試合の内容や感想にゆく前に、私自身このプレミアリーグに次ぐカテゴリーであるEFL Championshipの熱狂的なサポーターでもあるので、ワトフォード(通称:ホーネッツ=スズメバチの意)とアウェイチームとして挑んだスウォンジー(通称:スワンズ=白鳥の意)、この両チームについて簡単に触れたい。

ホームチームであるワトフォードは、かつて昇降格を繰り返すようプレミアリーグでプレーしていたシーズンも記憶に、ここ数シーズンはチャンピオンシップの中位に甘んじている状況。ロンドン近郊ではあるが本拠地にヴィカレッジロードを構えロンドンのチームとして位置づけられ、練習場がアーセナルの練習場と目と鼻の距離だそうで、同じくロンドン近郊ルートンタウン
がライバルチームである。ワトフォードで一番有名な話としては、イギリスのレジェンド歌手であるエルトン・ジョンがかつてクラブオーナーを務め、今は名誉会長としてホーネッツをサポートしている。

一方のスウォンジー、こちらもホーネッツ同様プレミアリーグでもお馴染みのチームでフリークの皆様にも浸透しているだろう。スワンズの一番の特徴として、イギリスを構成する4つの連合国の一つであるウェールズのクラブであり、プレミアリーグにはイングランドのクラブのみだという認識が一般的かもしれないが、現在までイングランドのクラブ以外で最上位カテゴリーに所属した過去があるのが、このスウォンジーとその一番のライバルであるウェールズ首都のカーディフシティの2クラブのみだ。


試合内容と雑感

試合結果としては1-1のドロー。中身について掘るべく試合観戦中にとった手元メモを参考に、いくつかのポイントを挙げながら。

まず試合全体の簡単な印象として、やはりチャンピオンシップ12位(WAT)と15位(SWA)中位同士の対決というイメージ。ボールが地に落ち着く展開よりはビルドアップでもキーパーや最終ラインから対角や前線にロングボールを送るシーンがよく見られ、セカンド拾った前向きの選手がサイドに張る選手たちに送って局面を打開するようにゴールに向かう。

前半
分析として、ホーネッツは中盤フラットの4-4-2、スワンズは4-2-3-1のシステムでスタート。前半は特にアウェイチームがボールと主導権を握る展開。スワンズはあえてダブルボランチ2人が開いて距離を取ることによって空いたスペースをトップ下のパターソンがスルスルっと下りてボールを引き出すことにより、アンカーのポジションからビルドアップの起点と相手プレスの出口に。その中盤3枚の構成とポジショニングに対し、ホーネッツの中盤横並びの2枚、リヴァモアとバシルーは数的不利になる形でうまく捕まえきれずマーク受け渡しの混乱を生み、スワンズは効果的に中盤でスペースを作り出していた。

一方のホーネッツは2トップ2サイドハーフが相手の4バックに対して同数で人を捕まえにいくようそのままプレスに出ようとはするが、余ったキーパーのラッシュワースからフィードの精度が高く、又サイドバックが内側に絞ることでウインガーをフリーにしたり、サイドバック自身がスッと中でボールを受ける配置やポジショニングが見られたりと、パターソンのフリーマン的役割含めたスワンズのビルドアップに苦労するように、自然と後方で構えるような展開に。デニスとセマのスピードある選手を活かしたカウンターから好機を伺うが、18分右SBアンドリュースがロングボール処理を誤りOGでの失点でホームチームがビハインドで前半を折り返す。

後半
不幸中の幸いとも言えるが、前半42分負傷により交代を余儀なくされたセマに代わってスクランブルで投入されたギオルギ・チャクヴェタゼの振る舞いにより、後半はホームチームのボール保持が改善される。記憶に新しいEURO2024ドイツ大会、ジョージア代表の10番として国を背負ったこの攻撃的MFはオンザボールの能力に優れ、相手パターソンのフリーマン的タスクを逆手にとるようトップ下に入り自由にボールを引き出しては前進させ違いを作る。後半はこれがホームと言わんばかりの雰囲気、良いプレーやゴールに迫るシーンが徐々に見られ始めると、サポーターのチャントや声援が選手を後押しするようヴィカレッジロードはポジティブなムードに。そして57分、チャクヴェタゼがトップ下に入ったことで本来の左WGにポジションを移したデニスが個の力で得たコーナーキックから、スコットランド代表ポーティウスがイコアライザー。ゴール後のサポーターのリアクションやその迫力は流石現地と言わせるような鳥肌をも感じる程の熱狂具合だった。

勢いそのままに、ファーストハーフとは立場が逆転するようホームチームが終始ペースを圧倒する。しかし前半からも課題だった最後のパスやフィニッシュのクオリティをアウェイチーム共に欠き、スコアには結びつかず、イーブンのまま試合終了。

Giorgi Chakvetadze

雑感
・このゲームは、典型的なミッドテーブルのチーム同士の戦いと申したように、高度な戦術的見どころやハイレベルな局面が沢山見られたという訳ではなかったが、ゴール前のブロッキングや体を張るプレー、フィジカルに強度あるシーンはイングランドフットボールらしい印象を大いに感じ取れた。
・長年ホーネッツに在籍しキャプテンを務める元オランダ代表フート(Hoedt)に対する「Hoo!」のコールも彼がいかに愛されているかがわかる現地らしい一コマでこの試合を一層盛り上げていた。
・Championshipの見どころとして、2部カテゴリーでプレミアには当然劣る部分が多々あるだろうが、個々で見ると代表でプレーするものもいたりと、既にプレミアレベルの選手や今後ステップアップで輝くポテンシャルを秘めた選手をこの段階で見れるということはロマンがある。例えばホーネッツであればチームのスターボーイとして更にコロンビア代表にも召集された20歳のヤセル・アスプリージャ。彼は今夏ステップアップするよう、昨季大躍進を見せCLにも参戦するラリーガのジローナへ移籍を遂げ背番号10番を背負うことに。

私が実際現地でポストしたインスタグラムのストーリーズ、右がアスプリージャ


✓おまけに

その後、ワトフォードは次節コヴェントリー戦の敗戦を受け、37節終了時点でイスマエル監督の解任を発表。暫定監督で迎えたのがなんと、マンチェスターユナイテッドやエヴァートンでプレーし最後はワトフォードでキャリアを終えたトム・クレヴァリー氏(34歳)だった。私自身、ワトフォードのプレミアリーグ最後のシーズンで彼が中心選手としてピッチにいた姿が記憶には鮮明なのでこの人事を知った時は驚きだった。34歳の若さでマネージャーを務めることは近年のサッカー界にとってすっかり珍しいことではなくなったが、今年プレミアに挑戦するイプスウィッチのキーラン・マッケンナ(38歳)やブライトンで指揮を執るファビアン・ヒュルツェラー(31歳)ら話題の方々のような30代でトップチームを率いる監督の一人にクレヴァリーもなった。


今季も中心選手として活躍するチャクヴェタゼ(背番号8)と抱擁を交わす、クレヴァリー監督

#EFLチャンピオンシップ #サッカー #サッカーライター

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