懐かしくも新しい「自給生活」のイメージ|編集こぼれ話②
2024年7月、農文協から『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』という本が発売されました。
『北の国から 家族4人で幸せ自給生活』を担当しました荘司と申します。今回は、編集しながら感じた、三栗さん流の暮らし方の魅力についてご紹介したいと思います。
気がつけば懐かしい農家の暮らし?
三栗さんの「自給生活」の特徴は、何といっても手作りの守備範囲の広さです。住まいに始まって、トイレやお風呂、北国ならではの断熱対策、そして水やエネルギー(太陽光発電や薪の利用)、そして食べ物や衣類まで。前回の記事では、現代農業WEBの担当から、「私が選んだ三栗家のスゴイ自給3選」として、三栗さんの自給生活の一端をご紹介しました。
この本では、「ここまでやるの!」と思うくらいの手作りいっぱいの暮らしぶりが、余すことなく紹介されています。
本のなかでは、食べ物や衣類などの自給についてやり方を紹介する、「実践編 暮らしの手作り術」というコーナーも設けました。梅干しや味噌や醤油、漬け物、石けんなど、作り方も紹介していますので、「これは!」と思うものから、ぜひ挑戦してみてください。
もうひとつ大事なポイントが、一年の生活の流れができていることです。一番わかりやすい例が冬にストーブの燃料として使う薪の準備です。本のなかでも書かれている通り、薪の準備は春から始まります。秋が近づいて始めていては間に合いません。この薪の準備を中心に、菜園での野菜栽培や保存食作りなど、暮らしに必要ないろんな仕事が組み合わさっています。季節ごとに、やるべき仕事の段取りがきちんとつけられているのです。
私が感じたのは、手作りをベースに、季節ごとに必要なことをやっていく暮らし方は、昔ながらの農家の暮らしそのものだということでした。三栗さんは、別に農家になろうとしていた訳ではないと思いますが、結果としてどこか懐かしい農家の暮らしと重なっている、そのように思いました。これまで農文協の書籍では、そんな農家の暮らしに学ぶことをコンセプトにしてきました。原稿を通して三栗さんの暮らしぶりを見て、やはり農文協から本を出す強い縁があったのではないかと感じたところです。
新しい「自給生活」のイメージ
一方で、「自給生活」には、マイナスのイメージがあるのも事実かも知れません。お金をかけない生活=貧乏暮らし、俗世間から離れた場所で仙人のような生活…。正直に言うと、私自身、編集担当者としてこの本に関わるまでは、そんな印象(偏見)を持っていました。
しかし、三栗さんの自給生活は、そうではありませんでした。三栗さんは、必要なものは買うし、海外旅行にも行っています。手作りは大切にしながらも、決して、自分の家の敷地に閉じこもっている訳ではありません。
加えて、いろんな人に囲まれているのも重要なポイントです。住まいを紹介し、薪ストーブを作った山家さんご夫婦、コミュニティ菜園を作っている仲間の人たち、三栗さんが手伝い行って米や野菜を買っている農家…。「自給生活」の根っこの部分で、豊かな人間関係が作られていることがわかります。一言でいえば、「外とつながった自給生活」になるでしょう。
自分で作る=手作りを基本軸にしつつも、外との人間関係がきちんとできている。いままで、「自給生活」という言葉に付いていたかも知れない閉鎖的なイメージは、この本にはどこにもありません。そんな新しい「自給生活」を三栗さんの実践から提案していることが、この本の一番の魅力だと思います。
本の写真に写っている、三栗さん一家の表情をぜひご覧ください。明るい笑顔がとても印象的です。
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