ICT教育導入に伴う子どもの健康被害予防のための提言
ICT教育の導入にあたり、以下、提言致します。
この提言は、2019年8月20日に書いたものです。私はICTにも行政や政策にも強い人間ではありませんが、当時、さまざまな情報を集めて勉強し、記述しました。間違っている部分やよりよい提案があったら是非、教えて下さい。また、こういう内容は誰がどこのどなたにどういうふうに届ければいいでしょうか。知恵と情報をください。
子どもたちの健やかな発達のために、私たち大人が今なすべきことを、
どうぞ、皆様、一緒にご検討いただけませんか?
よろしくお願いいたします。シェアも歓迎いたします。
提言の内容を一言にしますと、
「ICT教育導入のスピード感で、同時に子どもの発達に対するリスクヘッジを取る(危険を予測し、それを避けるように対策する)ことが必要である」ということです。
1.ICT教育の周辺リスクについての検討が不足していると考えられる。
学校教育へのICT導入に関わる担当者が出席する学習会を開催し、専門家の意見を聞いてほしい。
2.ICT教育周辺の課題の検討が不足しているので、インターネットやモバイル機器の脳への影響に関する科学的研究を内閣府等の協力も得て国家主導で開始する。
たとえば、米国のNIH(アメリカ国立衛生研究所)のような機関で脳科学研究を進める。韓国もこの分野では先進的なアクションを起こしている。
また、障害特性や発達特性によるプラスとマイナスに関する研究も推進する。
これらにあたっては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の活用可能性、研究者と内閣府、内閣官房等の協働の可能性、加えて厚労省、文科省、総務省との連携の可能性も検討する。
3.研究が進み、安全性の基準ができるまでは、例えば一日一時間程度の利用で目的とした効果が得やすい内容に絞って利用する、というような制約が必要である。
4.研究により、ICT機器が子どもの健康及び発達に及ぼすマイナスの影響が確認された場合には、利活用のあり方を再検討しなければならない。
また、もしICT教育の推進(とそれに伴う家庭での使用量の増加)によって、子どもたちのインターネット依存症が拡大した場合、その責任はどこが負うのか明確にしておく必要がある。発症後に果たして責任がとれるか、治療体制はどうするか等の検討も必要である。
5.多様な特性を持つ子どもたちにとって、ICTを用いて個別最適化を図る教育は効果が期待されるが、それだけ子どもたちへの影響力が強いことも意味する。ICT教育は、例えて言えば誰にでも効く抗生物質のような効果を持つといえよう。そこで、以下への対応が必要である。
1)効果が高いゆえに依存性も高くなる。既に視覚障害児、聴覚障害児にその傾向が見られている。役立つ、世界が広がる、楽しいものだからこそ、子どもも保護者も教員も歓喜し、利用時間が長くなり、実体験の時間が減じている。用途の制限が重要であるが困難である。
2)また、もともと対人コミュニケーションに抵抗感のある発達障害等の子どもは、メディア接触の心地良さからより一層対人接触の時間や体験の減少が生じ、対人コミュニケーション能力を育てる機会を失う可能性が高く、後に社会との接点に困難が生じやすい。また、既にそのような子どもたちによるネット上のコミュニケーションにおけるトラブルも頻発している。事前学習等それらへの対策が喫緊の課題である。
3)特別支援学校では教員数も多く個別対応が可能かもしれない。しかし保護者は教育的な活用ということでコントロールを外しがちであり、その結果としての家庭での長時間使用が既に起きている。特に家庭では積極的な目的のない用途に用いられている場合が多く、厳しい基準で制限を加えることが必要である。
4)人数の多い普通学級では個人個別の発達特性の把握、個別の制限は困難である。普通学級に一斉にタブレットなどを導入すると、弊害のリスクはより高くなる。対策の検討が必要である。
6.上記等の研究成果や事例の検討により、特にタブレットやスマートフォンを使ったICT教育の導入にあたっては、慎重さが必要であり、子どもの発達上のリスクを勘案して、導入学年、時期、使用時間、活用方法、個体差や経験による最適な導入の方法等を決定する。
7.同時に、INSTITUTE FOR RESPONSIBLE ONLINE AND CELLPHONE COMMUNICATION (iroc2.org) のように、ネット攻撃、サイバー犯罪、性暴力、ドラッグ取引等の予防、問題発生に対する個別ケアの検討、メディア使用によるリスク・ベネフィットの明確化などに取り組み、ガイドラインを策定する。
8.ICTを利活用する場合、ICT機器への接触以前に、子どもの能力の基盤となる非認知能力の発達(とそれを促す自然体験、人間関係等の体験)が特に求められる。そのための研究、環境整備や人材育成といった施策を開始する。
9.ICT導入前の教師、養育者(保護者)、子どもへの教育(メディアリテラシー、予防教育、問題発生時の対処)を行う。
10.その結果、子どもにICT機器を使わせないという選択をした保護者、生徒自身が使わないと決めた場合の代替プログラムを用意する。
11.ICT教育と協働学習の両方ができる一般教員の養成計画を先に提案する。その際、養成にかかる時間や負担を教員の労働負荷としないための工夫を示す。
12.そもそもICT教育の導入は、教育改革とセットで論じられている。そこで、教育改革をボトムアップで促進する装置として、大量の若手教員海外研修を実現する。
学校を教師主体で変える形をとれないことは、子ども主体の教育ができないことと同型性がある。子どもたちに主体性を持たせてもうまくいかないと教師が言い、教師たちに主体性を持たせてもうまくいかないと官僚が言う。これこそが日本の問題ではないか?教師たちが主体性を持って学校改革に取り組むことを支援することが必要である。
13.教員の事務作業を軽減するために事務補助員を配置する。事務用のICT利用の仕組みを作る。
近年のICTによる業務効率化は情報処理の必要量を増やし、むしろ人の時間的余裕を減じている。コスト効率の高さからは専門職に対する補助員の配置が効果的であることが知られている。
14.ICT機器接触を開始する生徒たちに条件、たとえば運転免許のような資格付与システムを作る。
・生徒たちが不適切な使用をした場合、
・依存症症状、視力の低下など心身の健康に問題を生じた場合
はしばらく使用停止措置をとる。
15.14の結果、ICT教育に接することができない生徒には、10の代替プログラムを用意する。
16.なお、今後、ICT教育を推進するにあたって、パブリックコメントの収集と検討が必要である
以 上
なお、この半年後、コロナ禍が起き、ICT教育がさらに急ピッチで導入されようとしている。そのプロセスにおいて、子どもたちのメディア依存の進行が懸念されており、親からのSOSも聞こえてくる。しかし、親たちは周辺の情報を知らないまま、自分の子どもだけの問題と思っているのだろうか、声を上げることができずにいる。あなたとあなたの子どもが悪いわけではない。今の日本の子どもたちは安心できる居場所、自由に動ける時間と空間をネットの中に探している。
今、本当に困っている人たちの声を様々な形で収集し、現状把握をすることが喫緊の課題ではないか。
なお、具体的にどんな影響があるかについては、一年前の記事ですが、こちらに情報をまとめてあります。一年経って、さらに状況は悪化しています。
追記)
私の投稿をシェアしてくださる方も、
いろいろなご意見を寄せて下さる方も、
いつもどうもありがとうございます。
私の投稿は子どもに関係することが多いので、
当事者である子どもや、
子育てや教育の関係者などが、
いろいろな情報を得て、
皆で議論することが大事だと思っています。
日本の子どもたちのことですから、
誰かよく知っている人たちだけの問題ではなく、
私のようによくわからないけれど
知りたい、わかりたいと思う人たちが、
そういうことか、とわかる条件が整って、
いろいろなことが進んでいくといいなと思います。
ぜひ、自分の周りで、いろいろな対話をしていきましょう。
情報や意見、体験談を持ち寄りましょう。
投稿にいつも書くことですが、
私は何かに反対するというよりも、
わからないことをわからないときにわからないと書くのです。
いったん止まって考えませんかと書くのです。
よりよく進めるためにはどうしたらいいかを
教えてほしいし、
得た情報を基に、皆で考えたいと思うのです。
情報を持たない当事者たちのアドボケット、
伝えたつもりだけれど、伝わっていない部分への配慮、
経済効率、時間効率よりも、人々の心身の健康。
情報化が進む今だからこそ、
そういうことに丁寧に取り組んでいく姿勢を大切にしたいと、
私は思います。