アクティブなリフレクション

ALACTモデルでリフレクションの「説明」も時にはする(日本に紹介したのに、実は学生にはほとんど解説しない。8つの問いのワークはする。参考書も渡してはある)。

けれど。

学生たちがアクティブに体験している「学びの瞬間」に
「今ここ」で起きている「学び」を指摘して、
その瞬間に「今、主体的で対話的で深い学びが起きているでしょう」
と「教えて」、
その直前の自分がどうしていたかをリフレクションさせるのが、
「アクティブラーニング」のアクティブなリフレクションによる学び。

生徒役である自分をリフレクションすると同時に、
先生役である仲間(明日は我が身)の状況のリフレクションが自然に起きる。

さらに、その学びを起こさせた「教師である私」が
今、なぜどのように何をしたかを教員志望者に解説すると、
そこまでやって、教師教育。

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十数人の教育実習事前学習のいわゆる一斉授業の部類(だけれど、実際には混合になる)。

実習を終えた4年生の羅生門の授業を10分だけ3年生が体験した。
結論が出されて終了したかのような読解に、詰めが甘いところがあった。
これってどういうことかなあ?としつこく何度も私が問いかける。
(私は国語教育者ではなく、事前にほとんど予習もできておらず、よくわかっていない状態)

でも…といろいろな意見が出始めて、5人の学生たちがディスカッションし始める。と、そこから少し離れた別の場所で、3人の輪が2つできて別々のディスカッションが起きる。一人で考えこんでいる学生、原文を読み始める学生、スマホを調べ始める学生、プリントを見直している学生。

じっと観察して待つ。数分経過したところで、介入する。

「今、全員の脳、アクティブじゃない?つまり、アクティブラーニングって、こういう状態のことだよね。あなたも、あなたも、あなたも、全員それぞれがそれぞれの形で考えていたね。先生として大事なことは、『正解』を出させることよりも、『判定』することよりも、生徒たちがいろいろな意見を思わず出し合い、学び始めるそのプロセスを起こさせること。言葉を実際に使って人と対話をすることで、人の意見を聞くことで、原文を読んでエビデンスを探すことで、資料を調べることで、より深く言葉で思考できるという体験の場を作ること。家で一人きりで勉強しているときには起きない意見の化学反応を教室で起こさせること」

というような解説をして、

「こういう解説をして、先生になろうとするみんなに気づきを起こさせるのが私の仕事。
 国語は、ことばの力をつけて行く時間。だから、授業の進行がどうだとか、最後まで終わらせなきゃいけないとか、羅生門の読解をあらかじめ用意した結論まで持っていくとか、読解を完璧にするとか、形だけやっても仕方ない、そんなことを考えるより、灘の橋本武先生のように、みんなの力で読解を深堀りしていくことで、生徒たちはことばの力を獲得するんだということが今、わかったでしょ。これがアクティブラーニング」

結局、学生たち自身の力で、そこで出ていた疑問に対しては、原文からエビデンスを示しつつ読解出来るところにまで到達した(*)。

「いやいや、現場ではこんなふうに時間使えないでしょ、っていう感想もあると思う。教育実習では指導案通りにできることが求められると思うから、ちゃんとやってね!でも、大学生の間に理想を学んでおいてもいいと思う。そこから先、現場に入ってからどうやっていくか、だよね。羅生門を自分の立てた予定通り最後まで終わらせなければならないって学習指導要領には書いてないから、自分の現場でどう扱うか考えてほしい(教育を変えていくのはあなたたちだから!)」

さて、来週から3年生の模擬授業が始まる。大量に集めた資料を持つ12人全員が、「羅生門」の自分の決めた箇所の授業に10分ずつ取り組む。

注1)この授業には、本学卒業生で元中学国語教諭、玉川大学講師の代島克信先生が本学実践指導員として参加して下さっていて、要所要所で国語教育の視点からまとめのコメントを下さっている。この授業が可能になっているのは、その刺激と支えがあってこそである。そして、26日午後の8人連続模擬授業には研究協力者の石川晋先生と今井清光先生、11月9日には甲斐利恵子先生の応援が入る予定である。国語教育を専門としない私が現場の先生との協働でできる授業を模索しての現在である)

(*)「きっと、そうか」の「そう」は何を指しているか、という学生の問いから、「生きるために仕方ないから悪事も大目に見てもらえる」という老婆の言葉を確認し、なぜ死体からではなく生きた老婆から着物をはいだのかという問いとその解に進んだ。このレベルの読解まで自分たちでは行けないのが、残念ながら教員免許を取得して国語教員になる大学生の現実である。

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