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スモールワールズ
短編集であった。
短編の中に、書名と同じ作品がある本が多いと思うが、この作品は違った。
ひと家族、または少数のちいさな関係小さな世界を描いている。
冒頭の「ネオンテトラ」では姪が望まぬ妊娠をしたので、子どもができにくかった「おば」が赤子を実子として引き取るのだが、引っ越しをするときに大事に飼っていたネオンテトラをトイレに流すというエピソードがある。妊娠しづらい自分の、慰めでしかなかった生き物に対する態度として、なかなかな女性である。
最後の、人物の名が出てこなくて「先輩」と「後輩」とだけ書かれている話が最初の話とつながっている。後輩を虐待していた父親の葬式から焼き場、待たなくてはいけないので焼き場を抜け出してバスで移動しながら自分の事を語っていくのだ。
この先輩は常にイアモニをつけている。後輩にやめろと言われても外したことはなかったのに、その葬式の日、家に忘れた。この日は、先輩にとってもひとつのエポックとなった。
女の子を妊娠させ逃げたことがある という後輩は、ネオンテトラを飼いたいと語るのである。
この二つの話に挟まれた短編もそれぞれ読みごたえがあった。
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みんなちょっとずつ不幸で、生きる力を奪われている。
それでも負けないという主人公は描きづらい世の中なのだろうと
わかってしまうというか。いろいろな虐待で精神が委縮したり、
自己評価が低すぎる者が、高いモチベーションを持つためには
とてつもない精神力が必要だ。
イアホンを離せない青少年が話題になったのはいつからだろうか。
醜形恐怖という言葉が話題になったのは。
それからマスクをずっとしているという若者が増え。
もう20年は経つのではないか。
最近読む話の大半が、少しずつ不幸で閉塞感を抱えている物語で
みんな必死でいろいろ保っているんだろうなといたましい。
自分もそういうところがあったけれど、時代の閉塞感がどんどん
増していっている。
こんな世の中にしてしまってごめんね と時々思う。
ハチドリほどの力もなかった。
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