時の町の伝説
ダイアナウィンジョーンズの小説は基本ファンタジーなのだが
この作品は、SFとも言えるようだ。
第二次大戦でロンドンから疎開する少女ヴィヴィアンを、未来の少年たちが連れ出す。
時の町と呼ばれる町を滅ぼそうとする「時の奥方」と間違われて。
誤解が解けていく中で、
「ヴィヴィアン・リー」というあの女優の名前を出すと、
それは連れ出した少年ジョナサンの従姉と同じ名前だとわかり、
「従姉」という扱いで
ジョナサン一家の家で暮らしながら、時の町の奥方や、
時の町の破滅を防ぐために
金銀鉛の「器」を探すことになる。
強い感情を持って通った人が、「時の幽霊」として残る町である。
何回か見るうちに
自分たちの幽霊や、重要人物の幽霊が何をしようとしているのかがわかってきたりする。
色んな時代を「不安定期」と「安定期」に分けて考えて、
「不安定期」に干渉すると時代の状況が悪化するから近寄るな、など、
実際に不安定期である戦争の時代の住民であるヴィヴィアンにとっては
理不尽な言われようである。
ヴィヴィアン自身は、解決したら戦争中であろうとロンドンに帰って
母に会いたいのである。
疎開の汽車が爆発しそうで逃げ込んだ時の門に
疎開の子供たちが入り込んで混乱したとき、
「外から見ているだけでなくて、助けなさいよ」とヴィヴィアンは叫ぶ。
この一言によって、停滞していた何かが動き出すのである。
結局、「時の町の破滅」とは、伝わっているものとは違うことがわかり、
「時の奥方」が悪人ではないこともわかる。
ダイアナジョーンズらしい逆転がある。
小道具として出てくるものが、なんだかドラえもんの道具のように思えたりする。
未来の自販機で買える「バターパイ」というおやつが、熱くてバターたっぷりでおいしくて凶器にもなるのが面白い。
「考えるアンドロイド」のエリオの存在が、ドラえもんや、
または「宇宙家族ロビンソン」に出てくるフライデーのようだ。
「保護者」から少し距離をおく守護者的味方なのである。