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献灯使

究極のディストピアである、と評する声もあるそうだ。
短編集であるが、ちょっと連作っぽい感じもする。
地震や原発による汚染で済めなくなった東京。
鎖国している日本。外来語も使わない。政府も民営化。
日本列島の位置さえ、今よりだいぶ大陸から離れているような。

百歳の死ねない年寄りで作家の義郎は、曾孫の『無名』と暮らしている。
放射能を浴びても老人は死なないが、子どもはどんどん弱っていく。
『無名』は噛むのも飲み込むのも着替えるのも歩くのも大変なのだ。
『無名』という名は義郎がつけた。
ある時突然髪が銀色になり、曾祖父が泣くので、僕たちは『銀色同盟』だよ、おじいちゃんみたいに長生きするから、と言って泣き止ませた。
中学生になる頃には歩けなくなり車椅子になる。

鎖国状態の日本だが、ときおり子どもたちを乗せた船がでる。
子どもたちの体調が良くなるかもしれないし、医学的に役に立つかもしれない。

時間感覚も曖昧だし、無名の食べ物を探すのが大変と言いつつ、
お金や買い物、義郎の仕事などのリアルな描写はないので、
どこか幻想的でもあるがディストピアであるのは間違いない。


そうした日本の状況を海外から見た視点で書かれたのが「不死の島」という短編なのだが、密航したというポルトガル人の本のことで話が終わる。


若いという形容詞に若さがあった時代は終わり、若いと言えば、立てない、歩けない、眼が見えない、ものが食べられない、しゃべれない、という意味になってしまった。

「不死の島」

「韋駄天」という短編では地震が起きた前後のことが書かれ、
「彼岸」という作品では、たまたま爆弾を積んだ飛行機が原発に落ちる
ということを経て日本には住めないと判断した国民が中国やアメリカなどの対岸をめざすという作品。原爆被害の時のような描写もあった。


戦争が身近にある現在
日本は原発に通常ミサイルが落ちてもヒロシマの何百倍もの被害が
あるんだろうな と思う。
活断層を無視して動かそうとするのも異常だと思うけど。


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