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ベージュ

「ベージュ」と「バウムクーヘン」は一緒に借りた。
俵万智さんとの対談に出ていたから。二つの詩集を、
知っていたのに読む機会がなかったのではなく、知らなかった。
知らない事ばかりなのである。


ベージュでの一編は「明日が」

老いが身についてきて
しげしげと庭を見るようになった
芽吹いた若葉が尊い
野鳥のカップルが微笑ましい

亡父の時代から住んでいる家
もとは樹木だった柱
錆びた釘ももとは鉱石
どんな人為も自然のうち

何もしない何も考えない
そんな芸当ができるようになった
明日がひたひたと近づいてくる

転ばないように立ち上がり
能楽の時間を歩み始める
夢のようにしなう杖にすがって

明日が

「バウムクーヘン」で引用した詩と制作年は何年も離れていないと思う。
けれど雰囲気はだいぶ違う。
ソネットという形式。
老いるとはどういうことかを学ぼうとしているせいか、こういう詩ばかり気になってしまう。


もう一つ、「退屈な午前」という詩の最後の二行

 惨めに生きてはいないのに、そこに見え隠れする惨めな思いと縁が切れない、そんな風に人間世界はなりつつあるような気がする。

退屈な午前

「退屈な午前」には2019.6.1という日付が入っていた。




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nobuko fj
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