若葉荘の暮らし
若葉荘は、40歳以上の女性だけが入居できる集合住宅だ。
トイレや風呂が共用で、台所も共同だ。
管理費を別に取るのではなく、トイレ掃除などは当番で
光熱費が家賃の中に含まれている。
しかも使っても良い食材があったり、入居者が作ってくれた
食べても良いおかずがあったり
食堂に行くと誰かいて、ちょっと会話ができたり。
そういうことが、実は孤独感から人を遠ざけるということがわかる。
主人公のミチルは、飲食店のバイトをしながら
ひとりで暮らしていて
多少貯金ができるくらいの収入もあり
大して不安を抱くこともなかったのに、コロナが始まった。
あの、いつまで続くのか不安だった時期
飲食店の関係者の不安は、ほかの仕事の何倍もだっただろう。
ミチルも、シフトが減って、ずっと貯金を切り崩す暮らしが
不安になった頃、若葉荘を紹介される。
外から見た感じは「無理」かと思ったのに
大家さんと話しているうちに住むことにしてしまった。
若葉荘には多様な人が住んでいる。
ミチルが住む前には、怒ってばかりいる人なども
住んでいたことがあると言う。
40歳以上の女性 というと
我慢して暮らすことがわかっていて
今独身でも、いろいろあっただろうことが推察されて
掃除当番くらいはきちんとするだろうと思える。
そういう場所があったとして
私自身は住めないかもしれない。
外面作るので疲れてしまいそうだ。
自然体を人前でキープできる気がしない。
できるかもしれないけれど。
アルバイトという立場の不安定さに気づき
店自体も、存続できるかどうか危ぶまれる。
この先独身でい続けるかどうかも悩む。
観劇の約束をしていた男性がいたが、コロナで上演は中止。
良い人だと思うしつきあいたい気持ちがあっても
恋愛に積極的になれるわけでもない。
第三思春期という言い方もしていたけれど
生きていく方向性を決めるのは難しい。
年代はいろいろでも
人生は一生過渡期なのである。
秘めた思いがあったり上手くいかない家族がいたり
大変な結婚生活があったりする中で
悩みがなくなることはない。
みんな悩みながら生きている。
このご時世
40歳以上の女性だけが入居できる下宿って
すごく需要がありそうだと思ってしまった。
女性を巡る状況は一進一退なのだ。
ゆるやかな関係の「仲間」がいるってとても良い。
孤独な夜に
一人きりではない と思えるのは救いになる。