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アイアンハンド シルバータン

この本の中で、生きている人間は、ジョージとイーディだけだ。
「タイント」は心を持たない石像
「スピット」は人が心を込めて作ったブロンズ像
長い長い月日の中で、タイントとスピットが話し合う事もあり、
スピットを理解するドラゴンがいる。
悪しきタイントに染まってしまうスピットがいる。
善悪に微妙に傾くスフィンクスの双子がいて、
やっぱり質問にはなぞなぞで答える。

王も女王も、先史時代の女王も妖精も、神も入り混じっての「闇」との戦い。
鳴らないはずの13回目の鐘が鳴り、ロンドンの普通に生きている人間たちの時間が止まる。
今までは、普通の人に見えない存在とのやりとりだけであったのに。
時が止まり、人も車も一切の音も止まる。

ドラゴンにつけられた傷からジョージの腕に三本の筋が延び始める。
「過酷な道」を選んだジョージの腕の傷は心臓に向かって延びはじめる。
止めるためには三度決闘しなくてはならない。
父譲りの「作り手」のジョージは、作ったり、分解したりすることが徐々にできるようになる。
ガーゴイルの翼を溶かすとかくっつけるとか。
ロンドン中のガーゴイルとブロンズ像の戦いはすさまじいものであった。

イーディはグリントと呼ばれる、
モノに触れるとそのモノの過去を見てしまう特別な子
 例えば、ロンドンの中にも、過去、ペストが流行った時に
 人が生き埋めにされたことがあったという。
 そういう、ものと人々の苦しみ痛みをを見て感じてしまう。


死ぬことのできない呪われたジョン・ディー。ジョニーウォーカー。
闇の鏡の呪いを解くために、
代々のグリントたちの「海のガラス」を集めている。
海のガラスだけが、闇の鏡を探すことができるから。
守りのガラスを奪われると、グリントたちは次第に心身を病んでいく。
犠牲者の中にはイーディの母親もいて、イーディは母親の過去を追いかけるために過去を旅する。
特別な合わせ鏡の中に入ると、時空間を移動できるのだ。

ジョージの戦いと並行しての旅だったが、
それはジョージとの関係を理解するのにも必要な旅だった。
なぜ人々から透明になった街で、ジョージを見つけることができたのか。

イーディには理解できなかったことを、
付き添って旅したガナーが理解する。
ガナーとは砲兵のブロンズ像で、ジョージが追われ始めた最初から、
二人を助けてくれていた保護者的存在だ。

イーディとジョージが本当の兄妹なのか、因縁深い「ある意味兄妹」なのかは、謎なのである。

こんな風に端折って書くと荒唐無稽な話ではあるが、ファンタジーなので。
500ページ二冊分のあらすじは、書くととんでもないことになる。

ただ、戦いの中で二人とも、親との関りや、自分の悔いについて
昇華し、人として成長していくのである。

ロンドンに行って、いろいろなブロンズ像を見てみたいと思うのである。


映画化の話もあったみたいだが、進まなかったみたいだ。
エピソードの取捨選択が難しいと思う。


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