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ビワの実 坪田譲治

金十は木こりである
あるとき山の中で桃かと思うほど大きいびわの実をみつける。
せっかく見つけたその実を、食べるまでの話も長い。
食べれば
夢のようにおいしくて
気づけば種しか残っていなかった。

金十はそれを庭に埋める。

すると、あっという間に芽が出て育ち
実をつけるが
何十羽と飛んできた鳳凰がみんな食べてしまう。

本当にもうないのか、と失意の金十が探すと
葉の陰に、一つだけ残っている

そしてどんどん大きくなる
最後には西瓜を超えて樽のように
ビワを守るため、金十は木材で櫓のようなものを作るのである。

そのビワを守るように
大きなガマガエルが来る
キツネや蛇を追い返してくれる。

ビワを気にしつつ、金十は眠る。


これは夢でしょうか
起きたらその実はあるのでしょうか 


そんな終わり方である。
最後の最後で突き放されたような。



私にとって「びわ」と言えばこの話

そんな風に突き放されて終わるから
こんな風にいつまでも覚えているのかもしれないとも思うのである。

びわの実 と言われて思い出すのはこの話である。





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