起業と言葉vol.004 Airbnb
「伝え方を変えれば、世界は変えられる。」をミッションとするコミュニケーションテックカンパニー(株)NOBU PlanningのCEO兼コピーライター/クリエーティブディレクターで、グルメ動画アプリ「Popdish」のCEO(Chief Eating Officer)をしています、起業家のノブです。元電通のコピーライターとして、今回は「起業と言葉」について触れていきます。第3弾の勢いそのまま、第4弾も筆を走らせるぜ!
Airbnbのピッチデッキ
今回は、世界中に新しい宿泊の選択肢を提示した、Airbnbのピッチデッキについて分析します。日本でも5年ぐらい前から空前の民泊ブームが訪れたことは記憶に新しいかと思います!(そして最近は日本での民泊事業ブームはどこかに去っていった気がしますが・・・)何はともあれ、早速見ていきましょう!
徹底的に、ホテルと対比する
Airbnbのピッチデッキは、本当に単語数が少なく、わかりやすいです。
そのわかりやすさに拍車をかけているのは、やはりホテル旅との対比です。
表紙から、「ホテルではなく、地元の部屋を予約する。」というわかりやすいタグラインが書かれており、今までの当たり前だった「ホテル」に対して「地元の部屋」を対比させています。
さらに表紙の次のページでも、課題として、今のホテルを中心とした旅を仮想敵に見立てて、ロジックを組み立てています。
「旅行の宿泊先のオンライン予約において、値段はとても重要(今のホテル旅は高いよね)」「ホテルはあなたを都市や文化と切り離す(ホテルじゃ地元を知れないよね)」「(ホテルは予約できるけど)地元の人の家を宿泊予約する方法はほぼない」
ピッチ資料に必要な、サビのスライド
そしてこのピッチ資料における一番のサビが、この3ページ目のスライドだと思います。ピッチ資料や提案資料でも、音楽のようにサビを意識することはとても大切です。Aメロ→Bメロ→1サビ→Cメロ→2サビ…のように音楽は展開されていきますが、ピッチ資料も一つの曲だと考えて、どの順番で説明すると、サビが一番盛り上がるか、という音楽的な視点で考えてみるといいかも知れません。
話を戻すと、この3枚目のスライドのワード、あえて2語ずつ級数を大きくして、3つのポイントを揃えていますが、これにより、サビの効果が増大されている気がします。「SAVE MONEY」「MAKE MONEY」「SHARE CULTURE」(←この3つ目もさらに「〇〇 MONEY」で揃ってたら完璧だったけど)の短いフレーズが3つ並ぶ。そしてホストとゲストという典型的なツーサイドプラットフォーム(顧客が2方向いる)ですが、あえて、「旅行者ユーザー」「ホストユーザー」「地元の都市」の3つの視点でポイントをまとめている。これはもう、Airbnbのピッチデッキにおける、大サビですね。
それにしても、「3」という数字は不思議ですよね。なぜか頭に残る。歌手で言えば、例えばチャゲアスは「YAH YAH YAH」って3回並べてますし、ドリカムも「何度でも 何度でも 何度でも」立ち上がり〜♪って3回歌ってますよね。#古いと言わないで
最近だと優里がドライフラワーで「声」も「顔」も「不器用なとこも」全部ぜんぶ大嫌いだよ〜♪ってやはり3つの要素を並べています。1つだと少なすぎて、2つだと中途半端で、4つだとちょっと多い。人が一番気持ち良く覚えられて、かつ印象に残る、「3」のマジックナンバーを覚えておくのはおすすめです。
言葉の手法=仮想敵をつくる
Airbnbは「ホテル旅」と「地元の部屋」の対比を前面に押し出しつつ、「3」というマジックナンバーを活用した、サビのスライドで、誰が見てもわかりやすいピッチデッキに仕上げています。単語数も非常に少なく、短いフレーズが残りやすいピッチでした。では、今回は、そんなAirbnbと同じく、仮想敵を作り目立つことに成功した広告事例を2つ紹介します。日本では比較広告などと言われて避けられがち(CMなどでは暗黙の了解で御法度になっている)ですが、自分よりも上位の仮想敵をうまく活用することで間違いなく目立つことができ、認知獲得と、「巨大な敵に立ち向かう」という日本人が大好きな応援したくなるブランドポジションを築くことができます。
仮想敵を作った広告コピー①KDDI株式会社
広告コピーの世界で有名な仮想敵を倒す挑戦者のストーリーを作った広告が2000年のKDDIのNo.2広告です。
KDDとDDIとIDOの3社が合併し、携帯業界にKDDIという業界第2位の新しい会社が生まれる。その記念すべきニュースのタイミングに出された新聞広告。5日連続とかで違うコピーで新聞広告15段(全面広告)が出されていました。新聞広告以外も、屋外広告など、様々な媒体で、このオレンジベタに白の堂々としたコピーライティングが踊る広告で、話題をかっさらいました。
そしてTVCMでも、俳優の永瀬正敏さんを起用し、「2位が世界を面白くする。」というコピーがビシッと決まる同じコンセプトのCMが流れました。こちらも大好きなCMなので載せておきます。
仮想敵を作った広告コピー②株式会社ファミリーマート
KDDIのNo.2広告から、約20年。2021年に実施されたファミマのNo.2広告も、話題になりました。現在私もオフィスメンバーとして働く、Breakthrough Company GOが実施した事例になりますが、この広告もまた、非常に挑戦的で、応援したくなるNo.2ポジションをうまく活用しています。
ファミマの広告の場合、ただ単に業界2位と謳うわけではなく、おいしさの調査では業界一位のセブ○・イレブ○に勝っているという調査ファクトをうまくPRでも活用して、話題化させていました。やはり、PR(特に企業が何かを宣言するタイプ)は、ファクトがセットになることで、よりそのニュースに厚みが生まれますね。事実とセット、参考にしたいPR広報手法です。
今回は、コピーライターの視点で、スタートアップやベンチャー起業家向けに言葉のチカラについてまとめてみましたが、起業をしていなくても、すべての会社の新規事業や、広告やマーケティング活動、企業の広報やPR活動においても、これからの時代に言葉のチカラは必須だと思います。
ビジョンライティングやブランドを規定する言葉を作りたい方は、ぜひお気軽にご連絡ください!
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NOBU Planning CEO / コピーライター / クリエーティブディレクター
縦型グルメSNS「Popdish」CEO(Chief Eating Officer)
鈴木宣彦
nobu@nobuplanning.com
https://twitter.com/popdish_nobu
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