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仕事を辞めて育児に没頭した半年間を振り返る。そこで見つけた大切なこと。

私は子供が1歳半の時に、半年間仕事を辞めるという選択をしました。

「育休を取れず、でも子供と向き合いたい」


葛藤の末、決断したことでした。


一般企業において、パパの育休が広まりつつありますが、医療界は少し異なります。

私は産婦人科医をしていますが、男性医師が育休を取るハードルは非常に高いのが現状です。
女性医師であっても、早いと産後2,3ヶ月で職場復帰するなんてざらにあります。
そのため、半年間も仕事を辞めるという決断をした時には、稀有な目で見られました。

応援してくれる人がいる一方で、
否定的な意見もたくさん言われました。

「半年休んで何するの?」
「遊び放題だね。」
「プー太郎だね。」
「キャリアに傷ができたね。」
「暇なんだから夜勤だけでも働きに来なさい。」
「そんな父親で良いの?」

当時は子育てと仕事の両立にもがき苦しんでいた時期だったので、
小さな子供がいる夫婦の大変さを理解していないんだなと悲しくなりました。


同時に、

「自分がこの風潮を変えたい、変えなくてはいけない」

と思いました。


3月末、いよいよその時がやってきます。

子供と24時間一緒にいれる時間が始まり、どんな晴れやかな気持ちになるんだろうと思っていましたが、想像していた気持ちとは全く異なりました。

何となく漠然とした不安を感じたのを覚えています。


収入が無くなるので経済面の不安はありました。
しかし主な原因は、
「同期や先輩が仕事をしているのに、自分は何をしているのだろう」
という取り残された不安感から来るものでした。

「男は仕事をしなくてはだめ!それも働き盛りに何をしているんだ」と言われているようで、
自分自身の決断に自問自答する日々が続きました。

社会からの眼差しも感じました。

平日に、子供と公園やショッピングモールに行くと、周りはママばかりで、なんとなく居心地が悪い感じがしました。
「平日の昼間なのに、あのパパは何をしているのだろう」と思われてないかなって。

おむつ替えスペースが女性用トイレにしかない場所がいまだにあり、
「パパは育児しちゃいけないの?」と悲しくなったこともありました。


そんな漠然とした不安が続く中、4月末に妻の友人に会う機会がありました。
子供3人を育てている大先輩です。
私自身仕事をしておらず、何となく気まずさを抱えたまま会ったことを覚えています。

しかし、その時言われた一言に救われました。

「子供1人を2人で見れるって本当に幸せなことだね」


自分の選択は絶対間違いじゃない。

「間違いじゃないようにしっかり子供と向き合おう」

と強く思った瞬間でした。


この経験を通じて、私と同様の気持ちになってしまうパパもいるんじゃないかなと感じました。
勇気を持って長期の育休をとっても、仕事をしないことに対する不安や、居心地が悪い気まずさを感じているかもしれない。

時間がかかるかもしれないけど、この空気感を変えるためには、

「パパが長期の育休を取ることが当たり前の世の中にしたい」

と強く思いました。



6月に入り、妻が仕事復帰をします。
そこから息子と私の二人の生活が始まりました。
ワンオペ育児の大変さを肌で感じるとともに、妻への感謝の気持ちが益々増えました。

二人で手を繋ぎ、近くの公園にはよく遊びに行きました。
昨日出来なかったことができるようになると、自分のこと以上に嬉しく感じました。

「葉っぱって言えるようになった!」
「滑り台をパパの手なしで滑れるようになった!」
「蟻さんを怖がらず触れるようになった!」

些細なことでも本当に嬉しい。

子供の成長を一番近くの特等席で見れる喜びは、何にも変え難いです。


記事を書いていると、普段の何気ない日常がフラッシュバックします。


7月、育児中心の生活にも慣れてきて、やっと自分自身のことを考える時間ができました。

今までの人生は目まぐるしく過ぎ、目の前の仕事だけをただひたすらやってきた日々でした。
本当に自分がやりたいこと、大切にしたいことを考える余裕もなく10年が過ぎていました。

仕事から離れて初めて、それが何なのかを自問自答する時間ができました。


やっぱり自分は、子供の笑顔や成長を見ることに幸せを感じる。

自分自身が一番大切にしたいこと、それは育児のことだって気が付きました。



育児は本当に楽しくて尊い。
しかし自分自身もそうでしたが、本来楽しいはずの育児で、なぜ苦しんでしまう状況が発生してしまうんでしょうか?

周りの助けが得られないワンオペ育児、シングルマザーファザーの問題。
そこに貧困が拍車をかけるお金の問題。
育児をしたいけど何をすれば良いのかわからない知識の問題。

様々な要因があると思いますが、それらを取り除き、みんなが本来楽しいはずの育児に向き合ってもらいたい。


産婦人科医として何が出来るかを自問自答しました。
「男性産婦人科医なんだから女性の辛さなんてわからない」と言われたことがあります。
でも男性の産婦人科医だからこその強みもあると思います。

私は産前産後のママの大変さについて、医学的な知識と言う面においては、一般の男性よりも知っているつもりです。
そしてパパとして妊娠、出産、育児に関わったため、パパとしてのしんどさや必要性もわかります。

じゃあ世の中のママとパパの橋渡しのような存在になれるんじゃないかと考えました。

パパであり産婦人科医である自分が、パパへ向けて発信し、

パパとママ二人で妊娠、出産、育児を乗り越える未来を、
ひいては社会に向けて発信し、パパとママ2人を支える未来を作りたい。



自問自答した結果、出てきた答えでした。
しかし、発信と言ってもSNSもやったことがない自分がどうしたら良いのだろう。
何となく怖かったのを覚えています。



7月下旬、子供が体操教室を始めました。
約2時間、親元から離れ預かってくれる習い事です。

初めて預けた時は、もう本当にギャン泣きでした。
私も心がギューと締めつけられました。
今まで愛情たっぷり育ててきてパパっ子になってくれたけど、それが逆に人見知りや場所見知りになってしまったのではないかと、自分自身を責めてしまいました。

預けている間は本当にソワソワしました。
こっそり見に行くと、息子は周りをキョロキョロ見渡しパパを探しています。
「頑張れ、頑張れ」と何度も心の中で言いました。

そしてお迎えの時。
迎えに行くと、引き攣ったような笑顔を見せてくれました。 
「本当に頑張った」
涙を堪える息子を見ると、泣かずにはいられませんでした。

「頑張ったね、頑張ったね」と何度も何度も言いました。
預かりの間に、切り貼りして作ってくれたお弁当の紙は宝物となりました。

息子の頑張りに背中を押され、私も意を決しました。


まずは色々な人に会って話を聞き、自分のやりたい事をより明確にしようと考えました。


パパの育休と言えば平野先生です。
私と同じ男性産婦人科医として、パパの育休の必要性やパパの支援を、社会に向けて発信しています。
いきなり連絡を取りましたが快く応じて頂き、オンラインで話す時間を作ってくれました。
同じ信念があることを確認でき大変嬉しかったです。
これからも切磋琢磨して頑張っていきたいです。


パパへ向けて妊娠出産育児本を執筆している、コウノドリのモデル荻田先生にも、遥々大阪まで会いに行きました。
本の出版のための道標を教えて頂き、このNoteを始めるきっかけにもなりました。
いつか形にして恩返ししたいと思っています。


パパの活動を知るために、ファザリングジャパンやパパ育コミュにも入り、オンラインでたくさんのパパと交流をしました。


こんな活動的になれるなんて、自分でもびっくりしました。
それくらい子供がくれるパワーは計り知れません。


9月下旬、いよいよ半年間のキャリアブレイクが終わりを迎えようとしています。
半年間続けたベビースイミングも、体操教室の送り迎えも、平日の公園も変わらずママばかりですが、今は居心地の悪さを全く感じません。

それは

「育児に没頭している」と胸を張って言えるから。




半年間のキャリアブレイクは、当初は子供や妻のためと思っていましたが、

何より自分にとって、意識改革をもたらしてくれた最高の時間でした。


長期の育休をとったパパは、同じ気持ちになっているのかな?



最後に感謝の気持ちを述べたいと思います。

息子、いつも最高の笑顔を届けてくれてありがとう。

奥さん、私が突如やりたいと言ったキャリアブレイクに賛同し、協力してくれてありがとう。

そしていつも記事を読んでくださる皆様、私がNoteを更新出来る原動力になっています。いつも本当にありがとうございます。
悩める夫婦の何かの足しになれば、そんな嬉しいことはありません。

「本来楽しいはずの育児で苦しむ人を減らしたい」



1人では世の中を変えられないけど、少しずつ輪を広げ、

夫婦2人で、そして社会全体で育児をすることが当たり前の世の中を作っていきたいです。



本当に有意義な半年間でした!
キャリアに傷じゃない!
キャリアに箔がついたって胸を張って言えるようにこれからも頑張ります!



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