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お腹の中の赤ちゃんが小さい。パパとママ二人で共有すべき危険性。

お腹の中の赤ちゃんが小さいってどういうこと?

妊婦健診で、「お腹の中の赤ちゃんの体重は何グラムですよ」と言われますよね。
どうやって体重を計測しているかご存知ですか?

「赤ちゃんの頭の大きさ、お腹周りの大きさ、足の骨の長さ」から、赤ちゃんの体重が推定出来る計算式というものが存在します。
それらを超音波で測定することで、お腹の中の赤ちゃんの体重を計算しています。

妊娠週数毎に、これくらいの体重であれば成長が順調ですよという目安があります。
例えば、妊娠30週の赤ちゃんの平均体重は1500gくらいです。
では妊娠30週で1400gというのは、成長は順調でしょうか?
答えは順調です。

ここで標準偏差(SD)という言葉が出てきます。
簡単に言えば、平均的な体重の赤ちゃんからどれくらい離れていますか?という目安を数値に置き換えたもので、ピッタリ平均が0SDです。

平均から小さくなればマイナスに、大きくなればプラスになります。
平均の範囲内は-1.5〜+1.5SDであり、この範囲内であれば成長が順調であると判断します。
(ただし元々0SDだったのに次の健診では-1.3SDになっていた場合には、小さいという診断にはなりませんが、成長が順調でない可能性があります。そのためSDの推移も大切です。)

-1.5SDを下回ってくると平均からかなり離れているので、体重が小さすぎますよという病名(胎児発育不全)がつきます。
先ほどの30週で1400gというのはマイナスのSDですが、-1.5SDまでは小さくないということになります。



お腹の中の赤ちゃんが小さい原因は?


様々な要因がありますが、大雑把に言えば個性の問題お母さん側の問題赤ちゃん側の問題、お母さんと赤ちゃんを繋ぐ胎盤や臍の緒の問題、本当は小さくないのに小さいと誤って測定してしまう問題が挙げられます。

・個性の問題
赤ちゃんの大きさは千差万別です。
小さい子もいれば大きい子もいます。当然ですよね。
実は-1.5SDという基準を用いても、70%くらいは個性の問題と言われています。
つまり「妊娠中に赤ちゃんが小さいですよ!」と言われても、特に原因がわからず、個性の問題だったということが大多数なんです。

・お母さんの問題
お母さんが原因で、赤ちゃんが小さく産まれてしまう場合があります。
その原因の一つにタバコがあります。
お母さんが喫煙者であったり、副流煙を多く吸ってしまう環境にあると、胎盤血流の悪化により、赤ちゃんが小さくなってしまうことがあります。
タバコの危険性については記事でまとめているので読んで頂ければ幸いです。

次にお母さんの体型や妊娠中の体重増加の問題があります。
痩せているお母さんや、妊娠中の体重があまり増えないと赤ちゃんは小さくなりやすいです。

近年、痩せている妊婦さんが増えていることが問題になっています。

ここで、「妊婦さんの理想的な体重増加」の目安があることをご存知でしょうか?
これくらい妊娠中に体重が増えてくれれば、妊娠中の合併症が少ないですよという目安です。
これは妊娠前の体型によって、理想的な体重増加は異なります。

痩せている妊婦さん(具体的にはBMIが18.5未満)の理想的な体重増加は12-15kgです。
これは平均的な体型の人と比べて多く、このことを考慮して妊娠時の体重増加のペースを考えて欲しいと思います。

他にも高血圧や糖尿病、膠原病という自分で自分の細胞を攻撃してしまう免疫の病気がある場合には、赤ちゃんが小さくなってしまうことがあります。

・赤ちゃん側の問題
赤ちゃんに何か疾患があって、小さくなってしまうことがあります。
具体的には染色体異常やウイルスの感染などが挙げられます。
他にも胎児疾患といって、臓器などに何らかの異常がある赤ちゃんは小さめであることが多いです。
この場合には超音波の検査で、何らかの異常所見が見つかることがあります。

・胎盤、臍の緒の問題
胎盤はお母さんからの栄養を赤ちゃんに送り届ける大切な臓器です。
その胎盤がうまく作られず血流の流れが悪い場合には、赤ちゃんが小さくなる原因になり得ます。
胎盤がうまく作られず発症する病気を覚えているでしょうか?
それは妊娠高血圧症候群です。
胎盤の形成がうまくいかず胎盤の血流が悪くなるけれど、お母さんは本能的に赤ちゃんに血液をあげようとして、代償的に血圧が上がるんでした。
下記の記事でまとめているので読んで頂けたら幸いです。

臍の緒の問題としては、臍の緒が胎盤の端っこの方に着いていたり、また臍の緒の捻れが非常に強い場合などが、赤ちゃんが小さくなってしまう原因となり得ます。

・本当は赤ちゃんが小さくないのに、小さいと測定されてしまう
原因として、週数間違えがあります。
例えば本当は妊娠30週の赤ちゃんなのに、妊娠32週と医者が思い込んで測定したら、妊娠32週の赤ちゃんの平均からどれくらい離れているかなという基準を使うので、小さいですよという診断がつきやすいです。

そんなことあるのか?と思うかもしれませんが、結構あります。

例えば予定日は最終生理から決定することがあるのですが、生理が不規則な方だと排卵日が結構ずれたりするので、予定日を謝って決定してしまうことがあります。

また、赤ちゃんの大きさから予定日を決定する場合もありますが、実は予定日をある程度正確に決定できる赤ちゃんの大きさというものが決まっています。
つまり、赤ちゃんが結構大きくなってから初めて病院に来ましたという妊婦さんは、予定日を正確に決定できず週数のずれが生じてしまう場合があります。

他にも医者の技術的な問題や赤ちゃんの体勢にも左右されます。
超音波の測定で赤ちゃんの体重を推定すると言いましたが、その技術が未熟であったり、また赤ちゃんの骨は産道を通れるように非常に柔らかいのですが、赤ちゃんの体勢によっては骨が変形して、小さく測定されることがあります。

なぜ本来は小さくないのに小さいと測定される原因を考えなくてはいけないかと言うと、不必要な治療を避けるためです。
次の項で詳しく説明しますが、小さい赤ちゃんは長期入院が必要であったり、あえて早く産ませたりすることがあるのです。



お腹の中の赤ちゃんが小さい場合の管理は?

お腹の中の赤ちゃんが小さい場合には、最悪の場合お腹の中で亡くなってしまうリスクが高くなります。
周産期死亡率といって、妊娠中や新生児期までに亡くなってしまうリスクが8%ほどあるとも言われています。
つまり、お腹の中の赤ちゃんが亡くなる前に、外の世界に出してあげることが求められます。
そのため状態によっては、あえて早く産ませることが必要になります。

しかし早ければ良いと言うものではありません。
早ければ早いほどまだ臓器の発達は未熟であり、外の世界に適応するのにも時間がかかります。
つまり、できるだけ妊娠週数を稼ぎ、これ以上は危険という週数で外の世界に出してあげることが求められるのです。

小さい赤ちゃんは急にお腹の中で亡くなることもありますが、多くはしんどいサインを出してくれます。
そのしんどいサインを赤ちゃんの心拍の変化であったり、超音波で測定する臍の緒や頭、心臓に戻る血流の流れなどで推察します。
この心拍のモニタリングや超音波検査は、多いと1日数回行うこともあり、通常は入院にて頻回のチェックが必要になります。
そのため、赤ちゃんが小さいとわかった場合には、長期の入院が必要になる場合があります。


実は危険なのは赤ちゃんだけではありません。
お腹の中の赤ちゃんが小さい場合には、お母さんも危険に晒されています。

例えば原因が胎盤の形成がうまくいっていない場合には、お母さんが本能的に血圧を上昇させて代償する、妊娠高血圧症候群を発症しやすいのです。
妊娠高血圧症候群については別でまとめていますが、お母さんにとっても痙攣や脳出血などの致死的な合併症を発症することもあるし、お母さん赤ちゃん双方にとって致死的な、常位胎盤早期剥離を発症する危険性も高まります。

そのため、赤ちゃんが問題なくてもお母さんが理由で妊娠を早期に終了しなくてはならない場合があります。


医療者も認識すべき個性で小さい子

赤ちゃんが小さくなってしまう原因をまとめましたが、実は個性が一番多いですとお話ししました。
しかし、日本の基準では体重が小さいというだけで一括りに「胎児発育不全」という病名がついてしまい、通常管理方法は一緒です。
病院によっては、小さい赤ちゃんは胎児死亡のリスクが高いので、かなり早い週数で早産にしてしまう場合があります。

しかし小さい赤ちゃんの管理において、人工的にお産の時期を決定した場合と、自然に分娩が来るのを待った赤ちゃんを比較した場合に、人工的にお産の時期を決定された赤ちゃんの発達や学業の成績が不良であるという大規模な研究結果が出ました。

理由としては、小さいけど個性の問題であって、胎児死亡のリスクが高くない赤ちゃんも早産にされてしまう現状が背景にあると考えられます。
個性で小さい赤ちゃんと、胎盤の機能が悪くて胎児死亡のリスクが高い赤ちゃんを区別して管理することが、医療者側の今後の課題であると言えます。


パパに出来ることは

小さい赤ちゃんの管理方法についてわかって頂けたでしょうか?
小さい赤ちゃんは、胎児死亡を防ぐためにしんどいサインが出ていないか何度もチェックする必要があります。
そのため長期の入院が必要になる場合が多いです。
旦那さんはそのことを考慮して、早めから家事スキルを磨いておきましょう。

また、小さい赤ちゃんは急にお産が決まることがあります。
それもかなり早い週数であえて早産にしてしまうことがあるのです。
そのため、いつお産になっても良いように、仕事の引き継ぎなどを早めに行う必要があります。

そして、お母さんの異変に気がつくことも旦那さんの使命です。
小さい赤ちゃんは、お母さんの血圧が上がる妊娠高血圧症候群を発症しやすいとお話ししました。
何度もしつこいようですが、妊娠高血圧症候群については別でまとめていますのでしっかり学び、お母さんの異変を見逃さないようにしてください。


まとめ

① お腹の中の赤ちゃんが小さいとは、週数毎の平均体重と比較してかなり小さい場合(-1.5SD未満)を言います。

② お腹の中の赤ちゃんが小さくなってしまう原因として、個性、お母さんの問題、赤ちゃんの問題、胎盤や臍の緒の問題、本当は小さくないのに小さいと測定しまう問題があります。

③ お腹の中の赤ちゃんが小さい場合には、胎児死亡を防ぐ目的で長期の入院やあえて早産にする場合があります。

④ お腹の中の赤ちゃんが小さい場合には、赤ちゃんだけでなくお母さんも妊娠高血圧症候群というリスクに晒されています。

⑤ 旦那さんは長期の入院や早産に備えて準備をする必要があり、またお母さんの異変を見逃さないように妊娠高血圧症候群について学びましょう。

2024/9/19時点のエビデンスを元に作成しています。

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