FF14とエコーチェンバー現象(黄金のレガシー感想)
はじめに
この記事はFF14の運営開発とユーザーコミュニティへの批判、および一部黄金のレガシー本編のネタバレが含まれております。
エコーチェンバー現象とは
なんというか、我々のとても良く知るゲームの事のように思えます。
経緯
筆者はFF14歴がもうすぐ11年になる、新生2.0開始ユーザーでした。
大抵のコンテンツは実装すぐに遊びました。エンドコンテンツは新生~漆黒までプレイし、以降ストーリーを追いつつSSやハウジングに明け暮れるエンジョイ勢でした。
課金は開始から一度も切らしたことがありませんでしたが、後述の理由によってゲームと界隈に嫌気がさし昨年から休止がちになり、黄金のレガシーの評判は見聞きしつつも自身が10年を費やしたゲームだから…と復帰しメインストーリーを終えたもののやっぱり絶望して今に至ります。
運営開発への異様な崇拝
「運営さん遅くまでメンテお疲れ様です!ゆっくり休んでください!」
FF14のSNS垢を持っている方なら一度は目にしたことのある投稿ではないでしょうか。
2013年新生当時、それはもう大盛況でしたがサーバーが現在より貧弱なことも相まってログイン戦争が耐えませんでした。
「よしだあああああああああ!!!」というおなじみの叫びは本来、その当時いつまでもログイン待ちが解消されない事によるP/Dの吉田直樹氏への怒号でしたが、それがいつしか氏への黄色い歓声に意味合いが変わっていきました。
旧FF14を新生させた立役者である氏の功績は称えられるものだと思いますが、ユーザーの声には称賛すると同時に旧版スタッフへの批判と攻撃性も垣間見え、氏自身も満更ではなさそうで事あるごとにインタビューや各メディアの露出で10年間絶えず武勇伝の如く語り続け、いつまでも内輪で称賛し合っている様子にうんざりしました。
未プレイの方々に説明しますと、FF14ユーザーには毎年元旦に吉田氏から新年の挨拶メールが氏の描き下ろしイラストと謎のポエム付きで届きます。
ゲームのキャラクターではなく吉田直樹氏個人のイラストです。本当です。
また8月の発売◯周年を祝うシーズナルイベント(新生祭)ではゲーム内のNPC「ヨシダ・ナオキ」として登場し、近況やユーザーへの感謝、これからの展望と抱負などをプレイヤーに語りかけてきます。
2023年では後述の理由からか「10周年めでたいけど色々あって疲れたわ、でも吉ちゃんはFF14をやめへんで~!だから皆もついてきてね!(意訳)」という事を仰っていました。
私はゲーム内では所詮一介の冒険者に過ぎないのと、そもそもエンタメ作品の生産者表示は要らない派なのでそんな事を言われてもハァ…と覇気のないちいかわのうさぎみたいな反応しかできませんでしたが、信仰心の深いユーザーは神イベント!一生ついてくよよしだあああああああああ(涙)と大感激だったようです。
氏曰く、自分は目立つのは嫌いだしメディアとか興味ないけど周りに色々言われるしPの務めだから仕方なく露出しているのだそうです。本当にそうでしょうか?
正直私は紅蓮の頃から違和感を覚えていましたが、漆黒でメガヒットを飛ばし過去最大の盛り上がりを見せて以降界隈はより熱を帯びていき、その頃にはとてもSNSで正直に心情を吐露できる空気ではなくなっていました。
冒頭の声のように開発をねぎらい応援の言葉を送り、一見温かい界隈のように見えますがそれ以外の意見や批判は一切許されず、その実開発とユーザーの距離が近すぎる閉鎖的な空間となっていました。
私事ですが、妻がグラフィックアップデートに懐疑的なポストをした際には捨て垢でもないFF14垢の人から「最近子供産まれたみたいだけど、こんな親を持った子供が可哀想」という引用がつけられました。
たったそれだけでそこまで言う?怖すぎるよFF14
2022年4月放送の「しくじり先生」
吉田直樹氏は出演した中で、旧版FF14は「10年に一度のクソゲーと言われた」「強すぎる成功体験は挑戦と研究への貪欲さを鈍らせる」と発言し、ユーザーを顧みずグラフィックを追求した結果失敗したと語りました。
なるほどそれは事実でしょうが、スクエニ社内の旧版スタッフをそこまでこき下ろす必要があったのか?と甚だ疑問です。
そして昨今のグラフィックアップデートで数え切れない程の不具合を連発しライティングやオブジェクトなどが重すぎて遊べないレベルの現状、初期はあれほど熱弁していたキャラグラへの言及は鳴りを潜め、いつしか草や岩、池などの背景に拘り始め何故かハウジングの滝は枯れ果て、代わりに水を使った家具が大瀑布と化す等、ユーザーのグラボと共に再新生する気なのかと思うほど旧版と同じ轍を踏みまくっている現状に対して
氏にはいま一度過去の発言を顧みて頂きたいと思わざるを得ません。
10年に一度のクソゲーと言われた旧版からもう10年以上経っていますからね。
2023年7月放送の「情熱大陸」
吉田氏率いる第三開発事業部渾身のFF16発売後におそらくPRの一環として放送された番組について、私も開発の様子や制作秘話などを楽しみに録画しつつリアルタイムで視聴しましたが、実際の放送では開発の紹介は一部分に留まりその殆どが氏個人をフォーカスしたもので、FF16の批評動画についたコメント欄を眺めながら氏曰く「なんか不思議なんですよね。なんかしたかい?って。君たちに俺。わかんないっすねマジで。うんざり」
(ナレーション「悪質な誹謗中傷の大半は日本からのものだった」)
と正直な心情を赤裸々に語っていました。
事実氏はゲーム開発者として群を抜いた知名度と絶大な人気を誇る傍ら、それに比例して尋常ではない批判や中傷に晒され続けており
番組自体にもそれを牽制しようとする意図があったように思えます。
氏としても擁護も批判も含めいちゲーム開発者に向けるには過ぎた意見が飛び交う様に懸念があったのか、苦言を呈されておりました。
一言で言うと、お気持ちファンネルを日本に向けて飛ばされました。
(ウンザリコレ、賢者ナオのなせる技でしょうか)
ユーザーの反応は多様ですが、SNSでバズりTLに流れてきたものは
「私もよしぴに密着取材して匂いを嗅ぎたい」でした。いや~キツいっす氏の思いは果たしてユーザーに正しく伝わっているのかと疑問です。
ぶっちゃけこれを見せられたのが一番萎えました。この界隈異常だよ…
運営開発とユーザーの蜜月な関係、意識の乖離
新生当初、ネトゲの開発とユーザーは敵対するものという風潮を覆すために
PLL(プロデューサーレターライブ)の配信で開発の意図や状況を全てユーザーに伝え、誠意を持って接することで信頼を勝ち取るという方針は功を奏し、FF14が成功を収めた最大の要因だと思います。
リアイベも積極的に打ち、ファンフェス会場で直に会いに行ける開発者、肩を組んで写真を一緒に撮れる開発者、間近で見れるゲーム開発者兼アイドル業のオッサン達の麻雀大会、バンドライブ。吉田氏がイベントや配信で着ていたTシャツは放送中に特定され、あっという間に完売します。花火イベントにも氏は登場し、SNSではトレンド入り、氏とのツーショット写真はバズり倒します。具なし焼きそば(1000円)はそれよりもっとバズってたけど
そうして育ったユーザーの信仰心は有り余って開発への評価が全て肯定的なものになり、拡張発売直前に延期を発表する事態になっても盲目的に許容し(俗に言う「ええんやで騎士団」)、自分たちが信じたい開発の偶像を作り上げる。
開発も正しいユーザーの評価が返ってこず現状を把握できなくなっていき、自分たちで想定した都合の良いユーザーのモデルを作り上げる。(実際にユーザーから汲み取れない以上、自分たちに想像できる範囲でしか作れない)
その乖離が進んだ結果、今回の黄金のレガシーに繋がったのだと思います。
黄金のレガシー感想:過去作のオマージュを多用する陳腐なストーリー
黄金のレガシーへの不満点については凡そ出尽くしている意見と同じですが
一点だけメインストーリーの出来について、私にとっては7.0どころか6.1のヴォイド編から既に評価できるものではなくなっており、FF14のオリジナルストーリーであるはずなのにFF4からゴルベーザ周りをそのまま登場させた事に愕然としました。今作も例によって過去作から名前と設定を借りてきて貼り付けただけ、名前を出せばファンサービスになるだろうという安易な考えが透けて見えました。
今回のFF9は引き合いに出されるばかりか、自らこの手で全て消し去る事になるという暴挙。スタイナーっぽい騎士団長と子供が手を取り笑い合っている最中無慈悲に消し去るシーンは、吐き気を催す程悪趣味でした。
ライターの人が悪意を持ってFF9ファンの脳を破壊して笑っているならまだ救いがありますが、これで本当にFF9ファンが喜ぶと思ってこのシナリオを書いたのなら恐ろしいです。
紅蓮のオメガ編で登場したFF5のエクスデスとFF6のケフカ、その他過去作のボスキャラについてはオメガの仮想空間で再現された別世界からの強者データという設定がよく練られており演出も相まって素晴らしいものでした。
あくまでサブストーリーという立ち位置であり、IFの世界で歴代のFFボスと戦えるという展開に当時はとても興奮しました。
2.0新生~6.0暁月に至るまで浮き沈みはあれどFF14の描く、旧版から始まり新生し10年をかけ完結したエオルゼアの壮大なストーリーが大好きでした。暁月でのヴェーネスの「あなたの旅は、良いものでしたか?」という台詞を聞いた時には今までの10年が走馬灯のように思い出され涙腺が緩みました。
ハイデリンとの決戦も「あなたの旅が、良いものであったなら……
勝利を以て、示しなさい!」と問われ、今までの旅で聞いて、感じて、考えてきた自分の答えを(曲名も「Your Answer」)ぶつける戦いです。
私にとってはこれ以上ない、10年をかけて得ることの出来たゲーム体験であり、最高の物語でした。
それが6.1から先、ただただ陳腐なものに成り果てていました。
苦楽を共にした暁の血盟の面々も黄金では頭の悪いセリフを言わされ続けるだけの舞台装置のようなキャラクターとなり、これは私の大好きだったFF14とは違う、別の二次創作を読まされているんだと言い聞かせました。
黄金発売前に今回のシナリオライターは6.1以降から担当されているというニュースを見て嫌な予感はしましたが、案の定という感じでした。
FF14どころかFF歴代で最もヘイトを集めたとまで言われるウクラマトですが、行動理由や人格描写に全く深みがなく、笑顔笑顔知りてぇ知りてぇとbotのように繰り返す様は彼女もまた陳腐なストーリーの被害者であると思いました。
本人が望んでいるかはともかく、ラマチ呼びの同調圧力は本当にキツかったです。特にグルージャジャが光の戦士に彼女を託してくるシーン、厳格な連王様が他国の冒険者の前で娘の愛称を連呼している様が威厳もへったくれもなくて白けました。
あと劇中で「路(みち)」って何回言うねんと。ライターの人が最近ハマってる表現なのか知りませんが厨二臭すぎて痒くなったのと、どのキャラクターにも言わせるせいでライターの人格が浮かび上がり、キャラクターがやはり舞台装置として画一的になってしまい非常に残念でした。
そのくせゾラージャ討滅戦ではゾラージャが吹出しで「道」と言っているのを私は見たぞ。誰か校正する人はいなかったのでしょうか?
おわりに
変わり果ててしまった開発とユーザーの関係性、界隈に萎えた理由を書き連ねて来ましたが、引退に至った一番の理由はやはり今拡張の出来栄えです。
ゲームの不具合は数あれど、お金と時間を費やせばいずれ修正できますが
今拡張をこれでウケるだろうと思ってお出ししてきた事実は覆りません。
ユーザーとの対話を重視してきた開発ですから、過去の拡張でそうであったように今拡張のレビューや反応を見ているはずです。肯定も否定も受け止め顧みてきた開発だからこそFF14はここまで成長したのだと思います。
ですが今回の対応は今までと違い、何も発信しないばかりか
「黄金のレガシーはともかく、ヒカキン氏のCM動画が思ったより伸びてないから全部再生してから感想を書いてね!」とかいうイカれたアンケートを送りつけてくるのみでした。開いた口が塞がりませんでした。
既にユーザーに向き合う気など更々ないのだと失望しました。
私が10年余り、人生で最も長い時間を費やした趣味であり
たくさんの素晴らしいフレンドとの出会いをくれたFF14には今も感謝しています。この先辞める事なんて想像もつかず、きっといつまでも続けていくんだろうとさえ思っていました。本当に悲しいです。
長文駄文に目を通して下さり、有難うございました。