アプリで知り合った夫と初めて会った日②
マッチングアプリで知り合った夫と初めて会った日、私はとても緊張していた。
会話が一通り落ち着き、私にはプリンアラモード、夫にはあんみつがそれぞれ運ばれてきた。
いざ、プリンを掬おうとするが、プルプル震えて掬えない。プリンとはそういうものだが、何かおかしいと思い、答えを導くまで数分要した。
そうか、プリンでなく、私の手が震えている。
緊張のあまり、手がプルプル震えていた。
「あれ?プリン震えてる?」
と、夫がプリンに注目した発言をした。これ幸いとそれに被せるように、
「手が震えて…」
と自分から白状した。自分に不都合な出来事は自分から白状するのが身を助く。大人になって、そんな簡単なことに気づいた私は、プルプル震える手のひらを見せた。
すると、夫の顔が緩んだ。私の発言でカオスと化した空気まで緩むようであった。
さて、お会計になると、夫がひとまず払ってくれた。当然、「私も払います」と言うと、
「初回無料なんで!」
と笑う夫。彼なりの気遣いである。こう言われてもなお抗うのは不粋である。ありがたくご馳走になった。
カフェを出た後は、近くの神社にお参り。
もう帰ろうという時、知らないおじいちゃんが話しかけてきた。駐車場の場所を教えて欲しいと言う。
私はこの辺りに詳しくないので困っていたが、夫はさっき通っただけで分かったらしい。身振り手振りで教えている。
この様子だけで好感度は上がるものだが、夫はさらに上をゆく。
車まで戻ったおじいちゃんに「オーライ!」までしだしたのだ。
道案内の定義すら崩れてしまった。こんなに親切な青年がいるであろうか。隣で歩きながら、驚きで表情がぎこちなく動く。私も道をよく聞かれるタチだが、ここまでの親切はしたことがない。上には上がいるものである。
車に着くと、まだ物足りないね、という雰囲気になった。
「2軒目はごちそうします。初回無料なんで!」
と、私から先ほどの「初回無料」返しをするほど、すでに夫を気に入っていた。もう手は震えていなかった。
2軒目も楽しく会話した私はすっかり気が良くなり、
「明日空いてますか?」
と自分からデートのお誘いをした。こうして、私たちの付き合いは始まったのである。
これは余談だが、初デート後、病院に薬を貰いに行った私は、血圧を計って驚愕した。
「159」という、生きているのが心配になる数値を叩き出した。
そりゃ、プリンも震える訳である。
初デートの後は血圧を計ってみてください。
相手をどう思っているのか、よく分かりますよ。