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不登校児の親が見た『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』
映像も音楽も人物もすべてが美しい映画でした。反面、いろいろな問題を含んだ「痛み」を感じる映画でもありました。
「いじめ」「マスク依存症」「自傷行為」「ヤングケアラー」「離婚」「血のつながらない父親」
いじめや不登校を経験した2人の子を持つ母親として、映画の中に感じた「痛み」を紐解いていきたいと思います。
※ネタバレ含みます
あらすじ
マスクが手放せず、周囲の空気ばかり読んでしまう「優等生」の茜。
自由奔放で絵を描くことを愛する、銀髪のクラスメイト・青磁。
何もかもが自分とは正反対の青磁のことが苦手な茜だったが、
彼が描く絵と、まっすぐな性格に惹かれ、茜の世界はカラフルに色づきはじめる。
次第に距離を縮めていくふたりの過去はやがて重なりあい、
初めて誰にも言えなかった想いがあふれ出す――。
マスク依存症
高校生の茜はマスクが手放せません。
マスクを忘れてしまった日。バスの中で周囲がゆがむような感覚に陥ります。マスクがないと落ち着かない。マスクがないと安心できない。コロナ禍を経験して、同じように感じる人も少なからずいるのではないでしょうか。
実は、うちの娘もマスクが手放せない一人。
もともと花粉症でマスクをすることが多かったのですが、コロナ禍を経た今でも、毎日マスクを付けて外出します。
そこには『顔を見られたくない』という意識があるようです。
丁寧にメイクをして、マスクで覆う。
自信と不安が入り混じる複雑な心境を感じずにはいられません。
自傷行為
茜はストレスを感じると、爪の周りをシャーペンで刺します。血が滲み、痛みを感じるのに止められない。これは自傷行為と呼ばれるものです。
自傷行為とは、物理的な痛みで、精神的な痛みや苦しみから一時的に逃避して心を落ち着かせる行為のこと。言葉で表現できない感情や苦痛を外部に示す方法、自罰の行為とも取れるそうです。
息子が不登校になった時、大量の髪の毛がベッドの下に落ちていたことがあります。「抜毛症(ばつもうしょう)」という自傷行為の一種でした。
それを見た時、胸が苦しくなりました。もう髪の毛を抜いて欲しくない。そう思いました。
茜にも止めてくれる人がいました。それが同級生の青磁です。
いじめ
茜がマスク依存になったのは「いじめ」が原因でした。
小学生の頃、人気者のクラスメートが「綺麗なペン」を盗んでいるのを見つけて注意したのがきっかけで、仲間外れにされてしまいます。
何でもはっきりモノを言う子どもだったのが、それ以降は本音が言えなくなりました。本心を隠すためにマスクを付けるようになったのです。
そして青磁も「いじめ」にあっていました。
病弱だった青磁は、サッカークラブでいじめの標的にされています。いじめの加害者は有力者の子ども。試合中に髪をひっぱったり、突き飛ばしたり。それを大人は見て見ぬふりをします。
そんな青磁を助けたのが茜でした。
いじめのことを思い出したくないという気持ちから、茜は青磁のことも忘れてしまっていたのです。
いじめの問題は深刻です。
茜は「いじめ」がなければ、自分を抑え込むことも、マスクに頼ることもなかったかもしれません。一人の人格を変えてしまう。その後の人生を変えてしまう。「いじめ」はそんな大きな危険をはらんでいます。
助け合う手
映画の中で印象的なシーンがあります。
優等生を演じて苦しむ茜を、青磁が学校の屋上に連れていきます。狭いマンホールのような扉を開けて先に飛び出す青磁。茜に「ほら」と手を差し出します。
外に出ると、そこは別世界のように開放感にあふれています。
「どうだ!世界は広いだろう!」
そんな青磁も実は病気におびえています。いつ再発するかわからない恐怖。
今度は茜が青磁を屋上に連れ出します。
「はい」
青磁に手を差し出すその顔は、勇敢にいじめに立ち向かう小学生の頃の茜に戻っていました。
不登校のお兄さん
映画には登場しませんが、原作では茜にはお兄さんがいます。
原作にだけ存在するお兄さんは「不登校」
難関の進学校に進んだお兄さんは学校に行かずに引きこもっています。小説の最後に、お兄さんは高校を辞める決心をします。高卒認定試験を受けて大学進学を目指すことにしたのです。
「不登校も引きこもりも、もう終わりにするって決めたんだ」
もしこれが、今、引きこもっている我が息子の言葉だったら。そう思うと、胸が熱くなりました。
青磁の描く空の絵も、2人で眺めた夕焼けも、最後に映し出される夜明けの空も、本当に美しくて。それぞれが抱える痛みも希望も、空が優しく見守っている。そんな風に思える素敵な映画でした。
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