観た映画の感想を綴る #11『ベネデッタ』
『ベネデッタ』を観ました。
ヴァーホーヴェンが史実もの? しかもなんだかアート映画っぽいテーマだ。なんてことを考えていたけど実際観てみたら大丈夫、ヴァーホーヴェンの映画だよ。と言わんばかり、エロもグロも露骨でたっぷりのいつものヴァーホーヴェン節。
生臭坊主っぷりが凄まじい教皇大使とか出世欲まみれの主任司祭だったり、「正しい教義」の為ならどこまでも残酷になれる教会の腐敗っぷりも徹底的に俗っぽく、かつ容赦なく描かれていて。(そもそも冒頭で修道院に入るには多額の寄付金という名の実質賄賂が要るという生臭さもきっちり)
『スターシップ・トゥルーパーズ』の徹底しすぎて逆に変なことになってる男女平等描写とかもそうだと思うんですけど、たぶんヴァーホーヴェン監督って世間一般が考える「善きもの」を基本的に信じていないんじゃないですかね。所詮人間のやることなんてそんな高尚なもんじゃないぜ? っていう。
じゃあ主人公のベネデッタが、そんな男性中心社会の中で権力を掴み取ったカッコイイ女性なのかっていうと全然そんなこともなくて、この映画の中での彼女ってむしろいわゆる信頼できない語り手に近い。ベネデッタの身に奇蹟が発現するシーン、ずっと「その奇蹟、ホントか?」っていうような描写なんですよね。民衆から熱烈に支持されている(らしい)ことは火刑に処されようとする場面でも分かるけど、一方で修道院長らしい仕事をしていることが分かる描写もないし。
人を選ぶ内容ではあると思う(レーティングも18禁だし)けど、
「この人は何を思ってこういう行動に出たのか?」
「あの時この人は何を考えていたのか?」
みたいなことを、映画を観た人同士で喋りたくなる映画でもあることは間違いないかな。