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映画感想 #140『ロボット・ドリームズ』

『ロボット・ドリームズ』を観ました。

監督、脚本:パブロ・ベルヘル
アニメーション監督:ブノワ・フルーモン

ニューヨーク、マンハッタン。深い孤独を抱えるドッグは自分の友人にするためにロボットを作り、友情を深めていく。夏になるとドッグとロボットは海水浴へ出かけるが、ロボットが錆びついて動けなくなってしまう。どうにかロボットを修理しようとするドッグだったが、海水浴場はロボットを置いたままシーズンオフで閉鎖され、2人は離ればなれになってしまう。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/100268/

RHYMESTERの宇多丸さんがパーソナリティをやっているラジオ『アフター6ジャンクション2』の番組内番組として『メタルギア』シリーズや『デスストランディング』でお馴染みの小島秀夫監督のラジオ『KOJI10』が少し前から始まってまして、その中で小島監督が激推ししていたのが今作。

なるほどこれは良い映画だなーというか、それなりの年数生きてたら誰でも思い当たる節のひとつや二つあるなーってところをものすごくビビッドにえぐってくる一作だなと。

死んだ目で二人用対戦ゲームを一人で遊んで、マッケンチーズを適当にレンチンして食べるだけの毎日を過ごしているドッグの「別にダメじゃないんだけど、こういう人生で良かったわけでもない」感とか、向かいのマンションにいる仲睦まじげなカップル(これが違う動物同士のカップルというのもポイント)を見た時の「別に一人でも不自由してないけど、もし隣に誰かがいたらどんな感じなんだろう」って気持ちの動きとかがもう手に取るように分かっちゃうんですよ。

なので、ロボットが家に来てから明らかに世界が輝いて見えるようになった喜びというのもものっすごく伝わる。公園で『September』をBGMに二人でダンスするシーンとか最高ですよね。方向性は全然違うけど。見ていてあんなに気持ちの良いダンスシーンは個人的には『RRR』のナートゥ以来でした。

それ以外だと、いろんな映画のオマージュ(というには些かド直球すぎる気もしなくもないですけど)が散りばめられてるのも宝探し的な楽しさがありましたね。ドッグの家でロボットが初めて目を覚ました時にあからさまに『鳥』オマージュな窓際の鳥が羽ばたくシーンがあったり、海に行った時にあからさまに『ジョーズ』オマージュなドリーズームのシーンがあったり、ハロウィンの時にドッグの家を訪ねてくる子供が『シャイニング』の双子とか『エルム街の悪夢』のフレディのコスプレしてたりとか。気づけてないけどまだまだありそう。
ドッグが寝る前に読んでる本が『ペット・セメタリー』だったりするので、監督はホラーも結構好きなのかなーと思ったり。(ペット・セメタリーってあまり寝る前に読む本ではなくない……?)

2人が離れ離れになってからの流れも、特にロボットがひたすら純粋で善性に満ちてて、ドッグと再会する夢を何度も見るしその時に必ず口笛で『September』を吹くのがねえ……! もうねえ……!!

ただ。

すごく良い映画だったし、琴線に触れるキャラクターやストーリーもたくさんあったんですけど、そう思えば思うほど「もうちょっとこう……なんとかなったでしょうが!!」ってモヤモヤ感もついて回ってしまうのは正直否めないんです。

「お互い大切に想いあっていてもすれ違っちゃうことだってある」っていう意味で『パスト ライブス/再会』と似てるって感想をSNSだといくつか見て僕もある程度は同意なんですけど、あの映画のように「二人にはどうしようもない成り行きでああなるしかなかった」って言うには、ドッグのせいでこうなってしまった、っていう風に見えてしまう印象があって。

そもそもロボットがサビて動けなくなってしまったのも、ドッグが取扱説明書をちゃんと読んでおけば避けられたかもしれない話だし、ビーチが封鎖されてからも諦めるのが早すぎんか……? って思うし……
諦めが早い、で言うならもう一つ、ロボットと離れ離れになった後で友達になったダックとの関係を続けようとしないのもちょっとなーと。
突然引っ越したダックにも確かに問題はあるかもしれないけど「移住しました!」って手紙は一応くれたんだから少なくともドッグに対して一定の親密さは感じてくれているわけで、そこで手紙に返事を書けば友達としての関係は続けられたと思うんですよ。
そんなわけなので、ロボットの健気さに対してドッグには「お前もうちょっと……頑張れよ!!」って思ってしまって……

繰り返しになりますけどすごく良い映画だったし宝物みたいな場面もたくさんあります。なんだけど……なんだけど……!! っていう。

ただ一つ確実に言えるのは、映画史上最もEarth,Wind & Fireが聴きたくなる作品の一つだってことです。


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