「個人目標ってどうやってメンバーと設定するの?」を図で説明してみました
リーダーにとって、メンバーの目標設定と振り返りは毎回緊張するもの。
会社の期待に答えなければいけないし、メンバーの成長や給与、そして納得やモチベーションといった、チーム運営における重要要素が集約されたポイントです。
会社・チームの成長と個人の成長を最大化するための目標設定が最終ゴール。
そんな中、リーダー、メンバーともに腑に落ちない目標を設定するのは、お互いの不幸のはじまり。そんな目標だと納得感がある振り返りや査定ができるはずもありません。
前職はMBO型の目標設定をする組織で、営業、マーケティング、商品企画、オペレーション、メディア運営、イベントと、複数の組織のリーダーを経験させていただきました。note社に来てからは、note proやメディア企画、イベントチームなどを担当。
いろいろな職種の人と個人目標設定や振り返りをしていて、どのチーム、組織でも共通する手法が自分の中にあることをみつけました。
ちょうどnote社では現在、目標の設定期。そのやり方を自分の備忘含めてかいてみます。
・MBO型評価制度の企業のリーダーの方
・「リーダーってこんな事考えてるんだ」と参考にしたいメンバーの方
・「自分で自分の目標を考えたい」と思っている方
といった人たちに参考になればうれしいです。
MBOとは?
MBOとはManagement by Objectivesの略称で、多くの日本企業が使っている目標管理制度。半期に一回、上長と部下で会社やチームの目標元に、個人の目標を決め、期中見直しなどをしていき、お互いに「目標を握り合う」。経営学とマネジメントの父ピーター・ドラッカーが提唱。
STEP1:目標の種類は基本2つ
まず前提として、仕事における業務の種類を2つに分けて考えます。
①フローの日常業務
日々、ビジネスを回していく上で必須の業務。この業務がないと会社が止まってしまう仕事。
②ストックのプロジェクト業務
現時点では必須ではないが、先を考えるとやらなければいけない業務。組織やチームにとっての資産を作る仕事。
どちらかが大事、というわけではなく、どちらも重要なものです。
たとえば、営業だったら、
①売上目標や粗利目標+行動数
②受注した企画書をフォーマット化し、チームに横展開する
新人の教育を担当し、初受注まで導く
オペレーションだったら、
①日々の業務の実行数/工数+ミス率
②オペレーションフロー自体を改善し、そもそもの工数を削減
自分の業務をマニュアル化し、だれでもできる状態にして引き継ぐ
商品企画だったら、
①自分が担当している商品の売上+提案件数
②既存商品のブラッシュアップのための活動
新規商品の開発
営業への商品啓蒙
みたいなイメージです。
PLとBSの考え方と一緒なので、フローとストックの塩梅は違っても、その他の職種でも汎用性あるのではないかと思います。
STEP2:チーム目標のバランスを決める
個人目標は、チーム目標を役割分担し細分化したもの。まずはチーム目標を決めないと、当たり前ですが個人目標を決められません。
※チームの目標や戦略の考え方は、こちらのnoteを参考ください。
基本、チーム目標も、フローの日常業務とストックのプロジェクト業務に分割できます。その際、フローとストックのバランスは会社やチームのフェーズによって変わります。
フェーズが0→1期のときは、そもそも定型業務がないので、ストックを作る業務しかありません。営業であれば、営業するためのターゲット設定や、企画書フォーマットを作るのが仕事になりますし、オペレーションであれば、業務フロー自体を作るのが仕事です。頑張って、意味あるフローの日常業務を作るのが最優先になります。
1→10期になると、人も揃いルールもできてきて、だんだん日常業務の要素が強くなってきます。7割が日常業務になったら、1→10期は終わりな感覚。
10→100期は、日常業務がメイン。ただストックのプロジェクト業務は20%は残さないと、資産が劣化して会社やチームは衰退していきます。Googleの「20%は好きなことしていいよルール」や、「両利きの経営」も同様の論点を扱っていると、僕は考えています。
注意点は、会社が10→100期であったとしても、チームの状況はまた別である、ということ。新規事業系のチームであれば、目標はストックメインでしょうし、営業系であればフローでの成果が強く求められるようになります。
STEP3:メンバーの得意不得意で、個人目標に割り振り
こんな形で決めた、全体のチーム目標のバランスを、メンバー個々人にドリルダウンしていきます。
その際、全員一律の目標をもたせるのは楽ですが、あまりいい成果はもたらりません。なぜなら人はひとりひとり特性が違い、得意不得意があるからです。特性に応じて、フローとストックのバランスを振り分けます。
いろいろな観点がありますが、得意不得意の例をフローが得意=「スペシャリスト型」、ストック得意=「ゼネラリスト型」とします。
前段の画像は営業の例ですが、オペレーションや企画業務でも、その人しかできない感性(業務の丁寧さや企画の精度)でパフォーマンスを出している方=スペシャリスト型、整理や再現性のある仕事が得意=ゼネラリスト型のイメージです。
チームの状況が1→10期で、フローとストックが半々だった場合、スペシャリスト型とゼネラリスト型それぞれに同じ割合を目標設定するより、得意な領域に寄せたほうが、本人も良いしチームとしても機能するはず。トータルが一緒だったらよいわけで、全員が同じ割合が効率良いはずはない。
同じ営業職であっても、お客様対応がうまい人にはフローで売上を稼いでもらって、バリバリ数字で貢献してもらう。逆にお客様対応はそこまででなくても、物事を整理したりするのが得意なタイプには、ストック型の企画書の新フォーマットづくりや事例収集をお願いしたほうがよいです。
ただしフローメインの人でも、ストックを0%にするのはやめましょう。会社やチームと一緒で、その人の成長を止めてしまう要因になります。
STEP4:個人のwillともすり合わせが必要
スペシャリスト、ゼネラリストといった要素もあくまでバランス。スペシャリスト型であったとしても、ゼネラリスト的観点を勉強して身につけることはできますし、また逆もしかりです。
自分の得意をより伸ばしたいメンバーもいれば、不得意を解消したいメンバーもいる。そういった個人のwillも目標設定時にすり合わせ、最終的な目標のバランスを決めます。これはメンバーのモチベーションにも関わりますが、結果的にはメンバーとチームの成長に関わってくる、リーダーにとってはストックの重要業務です。
また、リーダーがすべて1on1で設定することもできますが、チーム全体が他の人のwillや得意不得意わかっていると、チームの目標を開示したあと、メンバー同士で大まかな役割分担=目標設定を決められることもあります。ここまでいけているチームは、かなり良い状態だと思います。
STEP5:振り返りを見越して確かめ算をする
こういった形で個人目標を設定したら、振り返り時にきちんとお互い「やったこと」をアピールできるか、確かめ算をしてみましょう。
フローの日常業務であれば、定量的にすることが望ましく(というより定量化できていないと日常業務とは言えない)、ストックのプロジェクト業務は、新商品を作った、ノウハウ残した、人を育てて初受注した、というアウトプットの実例がわかりやすいものにすることがポイントです。
本人がすごくがんばったとしても、その価値を表現し会社に伝えられないと意味がないので、必ずこの確かめ算はしたほうがよいです。そのためにも、基本中の基本ですが、チームとメンバーの目標は、リーダーの上長にはかならず握るように。会社とメンバーの連結ピンになるのはリーダーの職務です。
実際の振り返り時には結果だけではなく、フロー、ストックともに「チームへの貢献」をポイントに、メンバーとは目線を合わせていきましょう。どちらの業務も、一人で仕事をするものではなく、その中でも役割分担しているはず。あるメンバーの振り返りをしている中で、他のメンバーの役割や貢献が見えてくるので、複眼的な評価がしやすく、チーム内での役割や得意不得意を改めて認識するため、チームやメンバーの成長のキッカケにもなります。
最後に:人から目標を考えない
自分の過去の失敗と自省の意味を込めて書きますが、メンバーのポジションや得意不得意といった特性ありきで、目標を考えるのは絶対NGです。
仕事にアサインするメンバーを考えるのであって、そのメンバーに合わせて仕事を作る、という順番ではありません。
気持ちよくアサインできる仕事がないとリーダーもメンバーも不安になりますが、あくまでチーム目標からのドリルダウンで考えないと、最終的にチームの目標と整合性が取れなくなり、会社として「なんでやってるんだろう」「やっても評価できない」という事になってしまいます。
情も入るのでリーダーとしては一番つらいときですが、ここは短期目線ではなくお互い長期の目線で、スキルアップやジョブチェンジなどの可能性を模索した方が前向きです。
僕もこの塩梅については日々悩んでいますが、最終的なリーダーの役割は、「チームやメンバーにとってつらい状況でも、前を向ける状態にできるか」に集約されるのかな、と考えています。
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