C.G.ユングを詠む(003)-少年期
C.G.ユングについて、河合隼雄先生が表された「ユングの生涯」の読後メモの3回目。
1回目と2回目はこちら。
その続きとなる。
天外伺朗さんの「運命のシナリオ」の口絵「無意識層に巣食うモンスターたち」からモンスターから意識層に着目して書き換えた図を、「意識と無意識の階層構造」として描いたものをまた載せておく。
7.変わり者ユング少年
九から十一歳ごろのユングは、内省する時間がほとんどで、ひとり遊びしている子だった。
それよりやや年を経ると、いたずらっ子の側面が出てくる。
代数は全く理解しようとしなかった。a=bでb=cならばa=cという論理がおかしいと考えていたそう。a,b,cと明らかに違うものを等しいとするのは理解できなかった。祖父のC.G.ユング(同名)も同じく代数は駄目だったそうだ。
因みに、河合隼雄先生はトルストイも数学ができなかったと書いている。複雑な方程式を駆使する相対性理論や量子論で宇宙を見なくても、鋭い感性があれば宇宙が理解できるのかもしれない。そっちの方が羨ましい。
十二歳になると、あることをきっかけに学校の帰り道とか、宿題をさせられそうになると意識を失う発作を起こすようになる。河合先生は「学校恐怖症」ではないかと書いている。
半年ほど不登校になり、近所を散策したり、漫画を書いていた。こんなふうに。
父親と知人との会話から、自分が経済的に非常に父親の負担になっていることを知ると、ユング少年には、発作を克服しようという意思が芽生える。2〜3週間で発作は治って、学校にも再び登校できるようになった。
ユングは、神経症とはどんなものが身をもって知ったと「自伝」に書いている。自伝を読む時に確認したい。
8.もう一人のユング
ユングは少年時代から、もう一人の人格が自分の中にいることに気がついていた。
人格No.2と呼んでいた。
これが少年ユングの人格No.1。No1の背後には、際限のないほどの深さと広がりをもつ人格No.2がいた。精神病理的な二重人格や、人格の分裂とは関係ないとユングは言っている。
私も、10人ぐらいは持っている。インテグラル理論のケン・ウィルバーも成熟した成人ならば10〜15ぐらいの人格とかペルソナを持っているはずと言っている。
それで、ユングの人格No.2は、老練な権威者であったようだ。
ユングの母も人格No.1とNo.2を持ち合わせていたらしい。
ユングの母親の人格No.2は時々、現れてユングを驚かしたらしい。エピソードは省略するが、自身の人格No.2との相剋は相当な苦労であった。
9.牧師であるユングの父との葛藤
ユングの父親は敬虔なクリスチャンの牧師であった。十二歳ごろから、その教えを素直には受け止められなくなった。牧師である父親の教えに沿うようにしたが、内側から溢れる考えを止めることはできなかった。
痛切な葛藤に末、ユングはこう解釈した。
二人が罪を犯すのもエデンの園を追放されるのも、「運命のシナリオ」か?ユングの見た凄まじいイメージについては『自伝』にこう書かれている。
10.ゲーテの戯曲「ファウスト」の影響
父親との意見の対立があった頃、母親の人格No.2からゲーテの戯曲「ファウスト」を読まねばならないと不意打ち的に言われる。
ユングの読後の感想は、、。
自然科学への興味もそのままに、これ以降ユングは哲学書を読み漁るようになる。ショーペンハウエルやカントなどである。
話をファウストに戻すと、私はこの戯曲も読んでおかなければと感じつつも今日まで読んでいなかった。オペラ・舞台や映画だけでなく、様々な神話と同じようにアニメ、漫画、PCゲームの底本的になっているようなので知っておきたかった。
それで、ドイツ語では読めない。原書の韻を生かしていると言われる森鴎外の邦訳も文語調っぽそうで読みづらいかと思い、Audible版で読んだというより聞いた。脚色がどう入っているのかわからないが、朗読というより声優劇仕立てになっている。
ユングは一旦お休みして次回は、ファウストの粗筋と感想を書く。ファウストのストーリーを要約してくれているところがネット上では見つからなかった。あっても微妙に違っていた。
今回はここまで。私のバイアスのかかった気づきなので、わかりにくかったり、初歩的すぎるところはご容赦願いたい。ご興味を持たれたら、河合隼雄先生の「ユングの生涯」を手にされたい。
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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
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