見出し画像

青い薔薇【ショートショート】989文字


ガラケーの小さな画面で
箱庭をつくり薔薇を育てていた


たいがいは赤だけれど
魔法がかかると青になる
そして キラキラと輝くのだ

どうしてもキラキラさせたい
画面の中のネジを回す
何かを願うように力を込める

そんな事をして
夜の不安をまぎらわしていた

いつからだったか
なんとなく眠れなくなり 


朝まで眠れなくなっていった


⌘⌘⌘


寝具を変えたらリラックス出来ると彼が言い出し
ニトリの横にあった布団専門店へ買いに行った

布団といえばここ 
他のお店は選択肢にない

彼の実家での決まりは私達の決まり
それでないといけない

見合った価値を私に私が見出せなくても
ここでないといけないのだと言う

ベスト オブ ベストは必ずあるからと


小一時間がたった頃 青いペイズリー柄の39800円の羽毛布団を見せてきた 

「値引きもされており、品質も素晴らしい!」
目を輝かせている きっと眠らせてくれるよ


ふいに目線を奥の方へ向けると
25800円の値札が目に入ってきた


薄いブラウンで葉脈がプリントされており
足りない何かを運んできてくれる気がして
目線を彼に向けると 

「いけないよ、39800円の品にしなさい
安物を買ってもしょうがないのだよ」

希望が安物と言われた気になり
意固地になって25800円の羽毛布団に決めた


さぁ 葉脈の羽毛布団よ
ふかふかの私の希望

眠らせておくれ
お願い


眠れない


まだ 眠れない


まだまだ 眠れない


新品の羽毛布団で初めて寝たのは
キジトラの「のん」
毛並みの艶がよく どんくさいけれど
可愛い声で鳴く男の子


眠っている「のん」の背中を撫でながら
「なぁ〜んで眠れないんだろねぇ」
膝の間に顔をうずめて泣いた

そんな日が続いたある日
彼女の眠れないが
眠れるに変わるきっかけが訪れた

泣いている彼女に 彼が言った一言


「昼間寝れるんだろう?それでいいじゃないか」


途端に心が軽くなった
なぁんだ
私は存在していいんだね

昼に生きても
夜に生きても
私はわたしでいていいんだね



何で夜に生きてはダメだと
思っていたんだろう?
だんだんと 時計の針が動き出した
少しずつ 少しずつ


彼女の夜眠れないは 眠れるとなり
彼と同じ時間を歩けるようになった


ここにいていいと思えた日の
5月の日と 寒い冬の晴れの日の



ママになれた彼女と
パパになれた彼と


眠らせてと願った葉脈は
小さな男の子のものになった



ママの匂いがして
安心すると言って
夏でも離さない
最高の眠れるとなったんだよ



青い薔薇はここにあったんだね



















イイな❣️と思ったらサポートお願いします。ASD、カサンドラ関連の書籍購入、note内でのサポートに使わせていただきます。