【テクノロジーの話】【#最近の学び】家電製品アドバイザーへの道(その4 総括)
(その3)では、前回の家電製品アドバイザー試験(第44回)の結果をお伝えして、「次回の試験(第45回)に対する方針を6月までに決めたい」と書きました。
今回の記事は、その流れに沿ったものです。
まず結論から書きます。筆者はこの家電製品アドバイザーの資格に対して、(仮に受かっても)うれしく感じないであろう「壁」が見えたため、再受験を見送ることにしました。
以下は、その壁の正体を分析したものです。
おさらい
以前(その1)で、参考書「家電製品アドバイザー試験 早期完全マスター」(以下、単に参考書)の構成に違和感があったと書きました。
どういう構成だったかをおさらいすると、
まず最初に画像出力装置であるテレビがあり、その関連として放送規格や録画再生機の紹介があり、そのあとに、画像入力装置(カメラ、ビデオカメラ)が続く。
次に目から耳に移って、高音質の音楽を再生するオーディオプレイヤーや、出力装置であるヘッドホンやスピーカーが続く。
音つながりで、音声入出力を備えて会話ができる携帯電話が来て、そこから発展したのがスマートフォンである。
最後に、スマートフォンと近いもの、という流れでパソコンが登場する。
ここで筆者が感じた違和感は、「家庭用ゲーム機がない」ことと、「スマートフォンは賢い携帯電話なのか?」という二点でした。
いまの主役は誰なのか
参考書を監修した家電資格試験研究会と資格を認定する家電資格協会が、どのような関係にあるかは筆者は存じません。
ただ筆者は、参考書から「テレビ、オーディオ」という「20世紀のリビングの主役」へのかなりの偏りを感じました。
しかし今は21世紀も20年以上経過していますし、しかもその間のリビングの主役は「家庭用ゲーム機」だったのではないでしょうか?
現実としても、家電量販店の売り場のかなり大きなスペースをゲームコーナーが占めていると思うのですが、、、
スマホは何者なのか
スマホ=「賢い携帯電話」か
スマートフォンを文字通り解釈すれば「賢い携帯電話」です。しかし筆者は、これを文字通りに理解するのは本質を見失うもとだと思います。
一人一台持つのが当たり前の携帯電話は、大量生産の効果で特に半導体・二次電池・液晶の技術が進歩して高機能化します。
2000年代半ばにはQVGA(320x240)解像度でカラーのワンセグ放送も見られるようになりました。
しかし、CPUはMIPSやARMのシングルコアで、OSがiTRONではGUIは扱えず、動画の再生は専用のコプロセッサ(日立のSH-Mobileや東芝のMobile Turboなど)に任せていました。
その発想の延長では、ガラパゴス化が進むばかりで、スマートフォンは決して生まれなかったと思います。
スマートフォンは、マルチコアCPUとGPUという、パソコン向けと同じ設計思想の半導体(SoC:System on Chip)と、その上で動くGUIベースのOSを、どちらも自社で開発するという、ジョブスが腹を括ったところから生まれたものだと考えます。
しかし、それだけならやはり、日本メーカーの技術力でも作れてしまいます。
(現実にはQualcommのSoC "Snapdragon"とGoogleのOS "Android"を使うことになるわけですが、それは置いておいて)
スマホ=「小型のパソコン」か
当時、ノートパソコンの小型化も進んでいました。
Librettoは、1996年の初号機から2010年まで東芝が開発を続けました。
ソニーのVaio type-Uの発売は2006年、つまりiPhone発売の少し前です。
これらはOSがWindowsなので、使い勝手は申し分ない。有線LANやPHSモデムを使えばインターネットにも接続できました。
しかし、液晶画面が横長でしかも物理キーボード付きのため、片手で縦に持つことはできない。
そのデザイン上のわずかな?保守性のために、「膝の上に置いて使える小型のパソコン」ではあるものの「片手で持ちながら使える賢い携帯電話」にはなれませんでした。
スマホ=「ダウンロードできるゲーム機」か
そして、スマートフォンに最も近づいた電子機器が、携帯ゲーム機でした。
2011年発売のPS Vitaは当時のiPhoneと同じくらいの性能を持っていて、特にNTT Docomoの3Gモデムが付いたモデルは、ハードウェア視点ではスマートフォンとほとんど同じと言えます。
しかし、PS Vitaが出る前のPSP GOではダウンロード販売前提のビジネスモデルを試験的に模索していたにも関わらず、ゲーム小売業界との関係を壊せないソニーは、結局PS Vitaにもゲームカードのスロットを付ける判断を余儀なくされます。
アップル=「電機メーカー」なのか
スマートフォンという電子機器は「賢い携帯電話」でもあり「小型のパソコン」でもあり「ダウンロードできるゲーム機」でもあるのですが、アップルの場合はそれだけではなかった、ということです。
iPhoneが「優れたダウンロード販売サービス"iTunes"・"AppleStore"の専用端末」だったから成功した、と筆者は考えます。
日本の失われた30年は、東芝やソニーがアップルやグーグルに敗れた30年と重なりますが、同時に、確実に敗れるであろうことを経済産業省や関係する業界全てが正確に予見しながらも手をこまねいて見ていた30年でもあったように思います。
以前の記事で筆者は「財務省に殺される」と書きましたが、「経済産業省に殺される」とも言えますね。
まとめ
家電製品アドバイザー資格の参考書の中で、テレビやオーディオプレイヤーが長年リビングの主役に君臨する王様であり、ゲーム機なんぞはガン無視で、スマートフォンは最近出てきた若造のように扱われ、パソコンはそのスマートフォンのついでに出ている。
筆者はこのことを、日本がいつまでもIT後進国のままでいることの象徴のように感じたのですが、考えすぎでしょうか。