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inagakijunya
今となっては2兆円企業となった企業の創業者の自伝
ドン・キホーテの創業者が2015年に経営の一線を退くにあたって、自身の人生を振り返った一冊。
①現場にすべて権限を委譲。仕入れから値付けまで現場にやらせ、上は口を出せない。
②営業目標は各個人に立てさせる。徹底的な成果主義。
大手小売業は司令塔(本部)が徹底的な管理をおこなう「チェーンストアモデル」を採用しているが、これらは完全な逆張りだ。だが、これが大成功する。社内に活気がみなぎり、売り上げも上昇を続けた。
その後もドンキは幾多の困難に見舞われたが、安田氏はそのたびに徹底的に自らを追い込んで苦悶しながら考え続け、「逆張り」の視点で災いを福に転じてきた。本人の言葉でいえば「はらわたで考えなければ、真のブレークスルーは生まれない」。
はらたわで考えるとはどんなことなのか? また、逆張りで勝つための方法論とは?
抜群に面白い波乱万丈の人生物語と、ビジネスの世界に新風を吹き込む独自の経営哲学……こんなにユニークな作品はない。
本人が語るように、小売業の成功モデルである「チェーンストアモデル」とは逆のことを徹底することでドン・キホーテは成功したわけだが、これは成功の必要条件であって必要十分条件ではない。この裏には、会社を続けていく強い意志と時代の流れを引き離さなかった運もある。
また、海外進出に関する考え方も手堅い。中間流通が発達した国にしか出さないという方針を貫き、この本が出た時点ではアメリカとシンガポールだけで、現在でも、これらの国に香港マカオ、台湾、マレーシア、タイに出店しているものの、中国に進出していないというのは時代を見る目がある。