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ドイツから学ぶべきことがわかる一冊

https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594080105

日本人が思い描くドイツは「真面目でなんとなく親近感のある国」だが、それはプロイセン人がつくった「ドイツ帝国」であり、ドイツに長らく君臨してきたオーストリア・ハプスブルク家の神聖ローマ帝国ではない。現在のドイツはいわば、プロイセンに乗っ取られた国だ。では、プロイセンとは何かと問われれば、ポーランドの東の果てから流れてきたよそ者のことだ。

プロイセン人がつくったドイツには典型的な特徴がある。一、生真面目。二、勢いに乗る。三、詰めが甘い。――世界大戦で二度の大敗を喫したように、途中まではうまくいくものの、調子にのって最後は大コケすることを繰り返してきた。

明治以来、そんなドイツに憧れた国が日本だ。帝国陸軍は最先進国のドイツ陸軍を師と仰ぎ、医者はドイツ語でカルテを書いてきた。しかし、いかに多大な影響を受けたとはいえ、日清・日露戦争に勝ち大国となったはずの日本は、なぜヒトラーと組むような悪手をとってしまったのか?

そして、戦後、敗戦国に叩き落された両国はまるで異なる復興を遂げた。東西分断で塗炭の苦しみを味わったドイツは戦い抜いて統一を勝ちとった一方で、日本は何を成し遂げたというのか……? かつてヨーロッパとアジアの中心であった両国の近現代史をひもとくことで、みえてきた現在にいたる宿痾とは? 「嘘だらけシリーズ」完結編。

上記のサイトより

実は非対称なドイツと日本

今となっては、第2次世界大戦での敗戦から世界二位と三位まで経済力を復活させた国、製造業が主力の国というところで共通点が多いドイツと日本だが、実は非対称なのがこの本を読んだ後の感想。
まず、近代に入る前については、比較にならないくらい、ドイツは今のドイツではない。プロイセンが作ったのが今のドイツ(なので、本来はドイツに含めてもいいオーストリアはドイツに含めずに独立国という位置付けになる)というのに対し、日本は国体が変わっていないし、近代では侵略されるといったことがない。

日本とドイツが出会う時

第1次世界大戦でのドイツはポカをし続けて、敗戦。その後、王政の終了と社会主義者が国家を乗っ取るという、文字通り社会が転覆。他方、当時の日本は大国の1つ。当時世界最強の英国と同盟関係にあり、かつ、軍事力も世界トップクラス。が、ここでアメリカにとんでもない大統領が登場して、日英同盟も終わり、大国らしい振る舞いができず、国連脱退、支那事変でもプロパガンダ戦に負け、何を血迷ったかここで同盟先をドイツにしてしまうという今から見たら信じられない選択をした日本はここでドイツと並ぶ。
当時のドイツといえば、すでに、国際法なんか無視でポーランドを蹂躙というところで、今でいったら、ロシアに協力しているイランとか北朝鮮とかそのレベル。

その後、大きく分かれる二つの国の存在感

その後、大戦に負け、ドイツについては東西分割があった。東側が共産主義に乗っ取られるという当時でも今でも悪夢そのものであるが、日本についてはそこまで酷いことは起こっていない。これは満州や北方の日本人が頑張ったとしか言いようがないがこれは余談。
ただ、ここから先はドイツから学ぶべきことが多い。
まずは、2回も大戦で負け、さらに国が分割されたにも関わらず、領土を戦前の状況まで戻したという点。日本の北方領土は明らかにロシアが約束を破って奪ったものだが、これを取り戻す気概が今の日本人にあるのか甚だ疑問。
次に、大国とほぼ同格になるべく、経済力だけではなく、軍事力も備えている点。GDPに対する軍事費2%を早期に実現。そもそも、国際社会への復帰が米英仏との軍事同盟という形なのも印象的。もっとも、東ドイツという陸続きの直接の脅威があったという条件は無視できないが、日本ではいまだに実現していないことを早々に実現したという点は学ぶべきである。
あとは政権を長く担当させるという点。戦後から前の首相メルケル氏までの間が8人しか大統領がいない。つまり、一番短く最弱と言われた大統領で3年弱。総選挙で公約を必須とすること、比例代表で複数政党が連立を作る環境にも関わらず、最低限の政治観が一致していること、政党がシンクタンクを使うことを義務化していること等、長期政権の前提となる近代化の要素が揃っていることがこれを支えているのであろう。

読了後の感想

いくつかの国と日本との関係を改めて整理した嘘だけシリーズの最後を飾るにふさわしい一冊だった。2024年の今、戦後の国際社会からの大転換期となっているので、本書での教訓を活かした世論形成やそれを実現させる議員が出てくるように後押しをするというのが我々の役目である。


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