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ライ麦畑でつかまえてのこと。④

◯です。前回の続きです。

なお、前回最終回といったものの、総じての感想を別で投稿しようと思うので、次回が節目となります。

それでは。


僕は唖(おし)でつんぼの人間のふりをしようと考えたんだ。      ―P.308 L.15より引用

この台詞、「ライ麦畑でつかまえて」の作中で一番有名な台詞ではないでしょうか。

村上春樹訳だと、「僕は耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」になります。これならわかるって人も多いかと思います。

ホールデンが、西部へ行く決心をして、そこでの生活を妄想した際の一言。こうすれば誰とも話をしないですむ。このインチキな世界の奴らと。

そんな思いがあるのだと思います。

この台詞が有名なのには、攻殻機動隊の影響もあるかと思います。

"I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes"

この文字は、攻殻機動隊に出てくる「笑い男」のマークに描かれています。

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ちなみに、この「笑い男」という名前自体もサリンジャーが執筆した『ナイン・ストーリーズ』という短編集のひとつから来ています。これも未読なので読んでみたい、、、。

作中でもこの文章は出てきます。ただ、そこには末尾に"or should I ?"と書き足されています。ならざるべきか。

他にもホールデンのお気に入りの赤いハンチングが出てきたり、「世の中に不満があるなら自分を変えろ、それが嫌なら耳と目を閉じ口を噤んで孤独に暮らせ」という台詞が出てきたりと、攻殻機動隊にはサリンジャーが深く絡んでいます。

個人的にこの作品は大好きなのでおすすめです。


フィービーがぐるぐる回りつづけてるのを見ながら、突然、幸福な気持ちになったんだ。本当を言うと、大声で叫びたいくらいだったな。それほど幸福な気持ちだったんだ。なぜだか、それはわかんない。ただ、フィービーが、ブルーのオーバーやなんかを着て、ぐるぐる、ぐるぐる、回り続けてる姿が、無性にきれいに見えただけだ。全く、あれは君にも見せたかったよ。 ―P.330 L.13より引用

ホールデンの旅路の果て、最後に見たものはフィービーが回転木馬に乗る姿でした。ホールデンは、変わらないでほしいと願った妹の変わらない姿を最後に見れたのだと思います。

何気ない日常のようですが、ホールデンにとっては、それは宝物のような記憶であったのです。

メリーゴーラウンドに乗る大切な人を見守る、という描写はこの作品によって幸せの象徴になったような気がします。

クアンティックドリーム社から発売されたゲーム「Detroit: Become Human」においても、女の子のメリーゴーラウンドに乗った姿が、安息、幸福の象徴のように描かれています。

ぼくも将来、子供を遊園地に連れていき回転木馬に乗せたいなあって思いました。時間が止まるような、幸せな世界があるのだと思います。


誰にもなんにも話さないほうがいいぜ。話せば、話に出てきた連中が現に身辺にいないのが、物足りなくなってくるんだから。           ―P.332 L.5より引用

この「ライ麦畑でつかまえて」を締めくくる一言。このホールデンの旅路を思い出しながら、彼自身が病床でこれを語ります。

ホールデンは、この数日間おおくの人に出会いました。

彼らのことを語るうちに、だんだん寂しくなってきたのかなあと思います。

ホールデンは結局寂しがり屋なんだと思います。

結局、こんな寂しい気分になるなら、いっそのこと話さないほうが良かったということでしょうか。

ホールデンは自分でも何を言っているのかわからないと言っていました。ホールデンは成長しようとしています。

何を言っているかわからないということはつまり、過去の自分では絶対に言わなかったことを言っているということです。

この旅は、ホールデンにとって大切なものだったのだと思います。

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