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1.定義
特許出願等に基づく優先権制度とは、特許出願をする際に、我が国に既にした自己の特許出願等(先の出願)の発明を含めて包括的な発明として優先権を主張して出願をした場合、その包括的な特許出願に係る発明のうち、先に出願されている発明について、その特許審査等の基準日又は基準時を先の出願日又は出願時とするという優先的な取扱いを認める制度をいう。
2.制度趣旨
本制度の導入により、
第一に、基本的な発明の出願後に、当該発明と後の改良発明とを包括的な発明としてまとめた内容で特許出願を行うことができ、技術開発の成果が漏れのない形で円滑に特許権として保護されることが容易となり、
第二に、先にされた特許出願又は実用新案登録出願を基礎として優先権を主張して特許協力条約(PCT)に基づく国際出願において日本国を指定(PCT8条(2)(b)にいう自己指定)した場合にも、その指定の効果が我が国において認められることとなった。特許協力条約に基づく国際出願であって日本国を指定国に含むものは、その国際出願日にされた特許出願とみなされる(184条の3第1項参照)ことから、特許法に特段の定めがない限り特許出願として特許法の規定の適用を受けることとなり、本条の規定の適用も受けることとなる。
要約すると、国内優先権制度は、①先にされた発明及び後にされた改良発明の両方について、漏れのない形で特許権による保護を図ること、及び、②制度の国際調和、を趣旨としています。
3.その他
国内優先の場合、発明の同一性(単一性)に注意しましょう。これは、優先権の基礎とした出願に係る発明と、優先権を伴う出願に係る発明の間に、発明の単一性がなければ、優先権主張による出願日遡及効がないからです。
優先権主張は特許請求の範囲に記載された発明について主張するものですから、明細書に実施例の追加がなされていても、原則として、優先権主張は有効です。
優先権主張の効果が「認められない部分」に対する特29条の判断は、優先権主張を伴う出願の出願時を基準として判断されます。このため、追加した部分が原因で拒絶(49条)される場合もありえます。
3.1.優先権の基礎となった出願の公開擬制による特29条の2の適用
例えば、優先権の基礎となった出願Xの明細書等にA及びBが記載されており、優先権を伴う出願YにB及びCがされているとします。
出願X:A、B
出願Y: B、C
この場合、出願Xに出願公開請求がなされない限り、出願Xの出願公開がなされることはありません。
しかし、出願X、出願Yの両方に記載されたBについては、出願Yについて特許掲載公報の発行、又は、出願公開がされた時に出願Xについて出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものと擬制して、特29条の2の適用があります(特41条3項)。この特41条3項の効果が、いわゆる「公開擬制」による効果です。
一方、出願Xにのみ記載されたAについては、出願X、出願Yを特29条の2の他の出願として、特29条の2が適用されることはありません(特41条3項)。
4.判例(東京高裁H15/10/08「人口乳首事件」)
この判例では、国内優先権主張を伴う出願に新たな実施例が追加された場合の優先権主張の効果が示されました。具体的には、後の出願の特許請求の範囲の文言が、先の出願の当初明細書等に記載されたものといえる場合であっても、後の出願の明細書に、先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになる場合には、その超えた部分には優先権主張の効果は認められない、とされています。
具体例を使って説明します。例えば、優先権の基礎となった出願Xの明細書等にA及びBが記載されており、優先権を伴う出願YにB及びCがされているとします。この場合、出願Xを基礎とした優先権の効果は、出願Yに係るCには及びません。
・特許法41条
●過去記事
・特許法41条 国内優先権
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