開発中のゲームが面白くなさすぎるので1から作り直す話
1. 概要
こんにちは。にしすけと申します。趣味でインディーゲームの開発をしている者です。
最大4人で遊べるアクションゲーム「カップリングパーティ!」を2年半ほど開発したのですが、あまりにも面白くなさすぎるため、この度、ゲームを1から作り直すことを決意しました。
本記事は、作り直しに至った経緯や、今後どのように作り直すのかをまとめた内容になります。1万文字以上ありますが、興味がありましたらお手隙の際にぜひ読んでみてください。
2. ゲームについて
2.1. ざっくり紹介
「カップリングパーティ!」は、フィールド上のキャラを制限時間内により多くカップル成立させるのが目的のゲームです。
テーブルに案内して、ドリンクを作って、パーティを盛り上げて、カップルを作って、高得点を目指しましょう!
Unity使用。SteamとSwitchで発売予定。オンラインプレイ対応予定。最大4人でわいわい協力して遊べます。
ゲームの詳しい説明や、制作を始めたきっかけ、制作過程などについては、過去の記事をどうぞ。
2.2. 本作の2大コンセプト
本作は、次の2つのコンセプトを下地に作られています。
・カップルを作るゲーム
・協力型タスク管理ゲーム
以下、順に説明します。
コンセプト1:カップルを作るゲーム
カップリングは、特にアニメや漫画などの分野において、キャラクター同士の恋愛関係を表す言葉です。
ピンと来ない方は来ないと思うのですが、カップリングを楽しむ層というのが存在します。もちろん私含めて。
恋愛物の漫画やアニメなどを楽しむのはもちろん、恋愛以外のジャンルであっても、あっこのキャラとこのキャラの微笑ましい関係なんか良き!この子たち付き合ってくれないかな!とか想像したり。作中で恋愛関係にない間柄だったとしても、いやこの子たち裏で絶対付き合ってるよこっそり手とか繋いでるよ!と勝手に脳内でくっつけたりとか。あるいは一次創作・二次創作問わず、小説や漫画などの媒体で自らカップリングを産み出したりとか。
私も同人活動を10年以上続けているカップリング大好きマンでありまして、「カップルを作るゲーム」を題材に選んだのも、カップリングが好きな方なら絶対ぶっ刺さる!という確証があったからです。本当に刺さる人には刺さる。間違いない。もちろん刺さらない方も多いというのは重々承知しておりまして、そういった方は本作を純粋にゲームとして楽しんで頂ければと思います。
コンセプト2:協力型タスク管理ゲーム
制限時間内にタスクを効率よくこなすゲームのことを、筆者は勝手に「タスク管理ゲーム」と呼んでいます。
Overcooked!のプレイ動画
これらのゲームは、作業効率を極めるところに面白さがあります。頭を使わずただなんとなく作業するだけでは良いスコアは得られず、「この作業の後にこの作業をしよう、また待ち時間が発生するのでその間は更に別の作業をしよう」といった感じで、きちんと作業順を考えることでより良いスコアが得られるのです。
また、タスク管理ゲームのうち特にマルチプレイに重きを置いたものを「協力型タスク管理ゲーム」と筆者は呼んでいます。みんなで声を掛け合って効率よくタスクを進めていく作業がなんと面白いことか。大抵の場合は上手くいかずフレ同士で殴り合うことになりますが。
協力型タスク管理ゲームの例を挙げると、Overcooked!、Unrailed!、ピクミン、サーモンラン(スプラトゥーン2、3収録)などです。いずれも、みんなで協力して多くのタスクを時間内にこなすゲームであり、作業効率を極めるところに面白さがあります。
2.3. これらのコンセプトを採用した理由
ところで、なぜ「カップルを作るゲーム」と「協力型タスク管理ゲーム」を組み合わせたゲームを作ろうと思ったのか? 理由は簡単です。
どっちも好きだからだよ!!!
好きなモンと好きなモンを組み合わせたら最強だろうが!!!
インディーゲーム界隈でよく話題に上がる「好きなものを作るか、売れるものを作るか」については、かなり前者寄りになると思います。まあ本業の片手間に趣味でゲーム制作してるだけの人だしね!
後に詳しくお話ししますが。
この2大コンセプト、実はあまりにも親和性が低く、最終的にどちらか一方を諦めざるを得ない形になってしまうのでした…
3. 協力型タスク管理ゲームの面白さ
ゲームの作り直しに至った経緯をお話しする前に、説明しておきたい内容があります。
これは2年以上の試行錯誤の果てに辿り着いた持論なのですが、
協力型タスク管理ゲームの面白さの根幹はバケツリレーである。
本章ではこれについてお話ししていきます。
なぜこれを今お話しするのかと言いますと、ネタバレになりますが、次の章で「面白さの根幹であるバケツリレーがどうしても実現できないため、ゲームを作り直すしかなくなったよ!」という話に持っていくためです。
ちなみに過去の記事で、協力型タスク管理ゲームの面白さに関する研究結果をまとめています。本章でお話しする内容とは重複しませんので、興味がありましたらぜひ読んでみてください(2万文字近くありますが)。
ただ、本章の内容も上記研究結果もあくまでゲーム制作ド素人によるものなので、もし的を射ていなくとも寛大な御心でお許しください!
3.1. 大タスクと小タスク
まず最初に言葉の定義をしておきます。
タスク管理ゲームには、ほぼほぼ「タスクを達成するためのタスク」が存在します。
たとえばOvercooked!では、ハンバーガーを作るという大きなタスクを達成するために、肉を焼く・キャベツを切る…などの小さなタスクをいくつか行う必要があります。
これらを複数のプレイヤーで分担しながらわちゃわちゃ遊ぶのが面白いというわけですね。
本記事では、ゲームクリアやスコア獲得に必要なタスクを「大タスク」、これを達成するための複数のタスクを「小タスク」と区別して呼ぶことがあります。
上の例でいうと、ハンバーガー作りが「大タスク」、肉やパンやトマトを用意するのが「小タスク」に当たります。
協力型タスク管理ゲームは、概ね上図のように制限時間内に大タスクを繰り返し、目標(高いスコアの獲得やステージクリア)を達成するゲームとなっています。
また、次の図は各ゲームの大タスクと小タスクを簡単に表したものです。
3.2. バケツリレーは楽しい!
ひとつのタスクをプレイヤー間で引き継ぎながら達成することを、ここではバケツリレーと表現することにします。
前項で挙げたハンバーガー作りのタスクを例に挙げます。この中でも肉を焼く作業はとにかく大変。肉を運び、切り、コンロに運び、焼き、パンに挟む必要があります。しかも、まな板やコンロがそれぞれ遠く離れて配置されているケースがほとんどで、肉焼き作業を1人で行うには非常に効率が悪い。そのため、「俺は肉切るからコンロに持って行ってくれ!」「OK運びます!」「焼くのは俺がやっとくからお前はキャベツ頼む!」みたいな感じで、複数のプレイヤー間で引き継ぎ引き継ぎしながらタスクをこなす必要があります。
自分のタスクを誰かに引き継いでもらう、あるいは誰かのタスクを自分が引き継ぐ。これを友達同士で声掛けしながら行うのは楽しいし、うまく連携が決まることで高いスコアが獲得できれば更に楽しい。連携プレーは気持ち良いものです。
Overcooked!にせよUnrailed!にせよサーモンランにせよ、この手のゲームの面白さの根幹はバケツリレーにあると思っています。
複数人で遊ぶゲームに求められているものって、やっぱり第一にコミュニケーションだと思いますし、じゃあタスク管理ゲームにおいてどうすればコミュニケーションを発生させられるのかというと、それはタスクを複数人で分担することが第一なのではないでしょうか。…唐突にギャグシーンが表示されたらそりゃコミュニケーションくらい発生しそうなもんですが、ここではあくまでタスク管理ゲームというジャンルに関する内容ということで。
というかタスク管理ゲームに限らず、みんなで協力して遊ぶゲームには当てはまるタイトルも多いんじゃないでしょうか、このバケツリレー理論。PHOGS!や、いっしょにチョキッとスニッパーズのようなパズルゲームに関してはまた別な気がしますが。
当てはまりそうなゲームといえば、たとえばマイクラでみんなで家を作る作業とか。対戦ゲームのスプラトゥーンとか。
協力して相手チームと戦うスプラトゥーンの場合、「相手をひとり倒す」というタスクひとつ取っても、味方の特殊能力に乗っかって相手との距離を詰めたり、仮に自分で倒せずとも味方が倒しやすいように相手を追い込んであげたりと、複数人で1タスクを引き継ぎ引き継ぎしながらこなしていくわけで。スプラトゥーンもまたバケツリレーを楽しむゲームのように思います。上手く連携が決まればとても盛り上がる。神ゲーですね。
3.3. バケツリレーが発生しないゲーム
こうして考えてみると、「協力型タスク管理ゲームはバケツリレーだ!」なんて、特別難しい話でも何でもないような気がしてきますね。
協力ゲームを作ろうとしてるんだから、作業を分担して遊ぶゲームデザインにするのは当然じゃないの? てかそもそもバケツリレーが発生しないゲームなんてあるの? なんて思われるかもしれません。
しかし、ゲーム開発に関する知識や経験が皆無だった開発初期、既存のゲームをふわっと参考にして見よう見まねでプロトタイプを作ってみたところ、見事に面白くない代物が出来上がってしまいまして…
このバージョンの何が面白くなかったかというと、個々のプレイヤーがただただ個別にタスクをこなせばよいだけの、バケツリレーが一切不要なゲームになってしまったことです。プレイヤー間での連携も声掛けも必要なく、まるでプレイヤー全員が1人用ゲームを個別に遊び、ステージクリア時にスコアを合算するだけのようなプレイ感。複数人で遊んでいてまったく面白くありませんでした。バケツリレーはゲーム側が意図的に促してあげないと発生しないようです。
ガワだけ似せても仕方ありません。既存のタイトルを参考にするならするで、なぜ面白いのかをきちんと分析しないといけないなと感じました。
…ここだけの話。
協力型タスク管理ゲームを作るにあたって、当然、同ジャンルのゲームを調査・研究しています。その中で、神ゲーOvercooked!のリスペクトゲームが多々見つかったのですが、ぶっちゃけ、バケツリレーが発生しないようなタイトルも割と見かけたりしました。複数人で遊んでも、ひたすら個々にタスクをこなすしかなく、連携も何も生まれないような。ぶっちゃけ面白k…げほんげほん。
どのようなゲームに出会っても、己の糧として私は突き進んでいきます。
3.4. バケツリレーが発生する前提条件
さて。協力型タスク管理ゲームにおいて、バケツリレーが発生する前提条件は何でしょうか。それは「ボリュームのあるタスク」だと思っています。
たとえば、水を1杯だけ運ぶタスクがあるとします。道中の移動が困難な場合、かつバケツリレーにより移動コストが軽減できそうな場合、果たしてバケツリレーは発生するでしょうか?
実際はケースバイケースかもしれませんが、この手のゲームは多くの場合、プレイヤーたちは常に多数のタスクを抱えており、誰もが目が回る忙しさで動き回っています。バケツリレーが発生しないとは言いきれませんが、プレイヤー1人が最後まで水の運搬を行う可能性は充分ありそうな気がします。たった一回の水の運搬の作業効率を上げたところで大してスコアアップに寄与しなさそうですし、こっちのほうが他プレイヤーが頭を使わなくて楽ですし(タスク管理ゲームは死ぬほど頭を使うゲームであり、思考コストを削減するのは作業効率を向上させる有効な手段だったりします)。
では今度は、水を5杯運ぶタスクの場合はどうでしょう。
さっきとは少し状況が違います。やはり他のプレイヤーたちは多くのタスクにてんてこ舞いになっているはずですが、これだけヘビーなタスクを1人に任せて時間をかけさせると、水の運搬タスクがボトルネックになり、スコアが伸びない可能性があります(この手のゲームは大抵の場合、ひとつのタスクが止まると連鎖的に他のタスクも止まってしまう)。ということは、人数を割いてでもバケツリレーを行う意義が出てきます。
つまり、ボリュームのあるタスクでないとバケツリレーは発生しないと考えられます。
※ある程度シビアな制限時間もバケツリレーの発生条件だと思っていますが、筆者が勝手に定義した「協力型タスク管理ゲーム」自体、大前提として「制限時間内にタスクをより多くこなすジャンル」としており、ここでは特に制限時間について取り上げることはしていません。
良い例としてはやはりOvercooked!です。たとえばハンバーガーの注文が同時に3つ入ったとします。これを1個ずつ作るのは作業効率が悪く、高得点を目指すなら、3つとも並行して超特急で作らなければいけません(なお、料理の提供が遅いとお客さんに怒られてスコアがごりごり減っていきます)。
他プレイヤーがパンやキャベツやトマトや皿の準備に大忙しの中、あなたは肉を3つも用意しないといけない(前述の通り、肉焼きは非常に手間暇かかる)。しかもまな板もコンロも遠く離れた位置にあることが多い(どうなってんだこの厨房)。よって肉の準備はハンバーガー作りにおけるボトルネックになり得る。作業の優先度は高め。ではどうするか。フィールド上に散った他プレイヤーの手を借り、3つの肉をバケツリレーしながら仕上げていくのです。逆に言えば、バケツリレーが発生するようなゲームシステムやステージ構成を用意する必要があるわけです。
少なくとも、ハンバーガー作り×3がボリュームあるタスクでなかったとしたら、バケツリレーは生じなかったのではと思います(もちろん、ステージの制限時間などにより作業速度が求められることも前提として)。
ちなみに、例外的に「キャラは移動できないがアイテムだけは移動できるギミック」などをステージ上に配置することで、その場所でのみ強制的にバケツリレーを発生させることが可能です。たとえば下図のように、「キャラは行き来できないが、アイテムを投げて受け渡しできる崖」などです。
3.5. バケツリレーの表現方法
ところで、バケツリレーを表現する方法にはどんなものがあるでしょうか。言い換えるなら、タスクを他プレイヤーに引き継ぐ手段にはどんなものがあるでしょうか。
とりあえず思いつく限りでは、次の3点が考えられます。
① プレイヤーは通れずアイテムは通れるギミック
たとえばOvercooked!では、フィールド上のあちこちにテーブルが配置してあります。プレイヤーは通過することはできませんが、アイテムを置くことはできるので、テーブルを介してバケツリレーを行うことができます。似たものとしては、プレイヤーは乗れないがアイテムを載せることができるベルトコンベアなどがあります。
②アイテムがプレイヤーの手を離れて移動する機能
アイテムを投げるなど、アイテムがプレイヤーの手を離れて移動するような機能がある場合、これを用いてバケツリレーを行うことができます。要は、投げたアイテムが宙を飛んでいる間に自分は別の場所へ移動する、といった行動が可能になります。
③プレイヤーごとに異なる役割を持たせる
例を2点挙げます。
・スプラトゥーンは前衛職・後衛職がはっきり分かれています。先に述べた通りですが、前に出辛い後衛職と、後ろにいても仕事のない前衛職が、役割も位置も違う中で連携してひとつのタスク(相手を倒す、スコアを稼ぐ、前線を上げる、…)に取り組むことになります。
・Unrailed!では、木を切って運搬するというタスクがあるのですが、ピッケルを持つプレイヤーはひたすら木を切る、ピッケルを持たないプレイヤーはひたすら木を運ぶ、といった連携が必要になります。
もし仮に、このゲームにピッケルというアイテムが存在せず、誰もが木を切る能力を持っていたとしたら、タスクの役割分担(バケツリレー)は発生しづらいのではと思います。なぜなら、たとえばプレイヤーが2人いるとして、木を切る担当と木を運ぶ担当に分ける場合と、各々が個別に木を切り運搬する場合とで、作業効率が変わらないためです。
3.6. 本章のまとめ
本章の内容を簡単にまとめます。
1. 協力型タスク管理ゲームの面白さの根幹はバケツリレーである
2. バケツリレーが発生する前提条件はボリュームのあるタスク
3. バケツリレーの表現方法はいくつか考えられる
①プレイヤーは通過できずアイテムのみ通過できるギミック
②アイテムがプレイヤーの手を離れて移動する機能
③プレイヤーごとに役割を持たせる
4. 作り直しに至った経緯
お待たせしました。ここからようやっと本題に入ります。
結論から言いますと、なぜ「カップリングパーティ!」が作り直しに至ったかというと、前章で述べた「協力型タスク管理ゲームの面白さ」が実現できなかった(すなわち、バケツリレーが発生するゲームシステムが作れなかった)ためです。
詳しい経緯を順に説明していきます。
4.1. 面白さの言語化に注力した2年半
筆者はゲーム制作に関してド素人であり、本作が記念すべき第一作目になります(一応)。素人なりに面白いゲームを作ってやるぜ!と一念発起して開発に着手したはいいのですが…これがまあ上手くいかないこと。
過去2年半の経歴はこんな感じです。
作り直ししかしとらんやんけ!
そうなんです。作ってはテストプレイし、あっこりゃダメだ面白くない、作り直そう…の繰り返し。
インディーゲーム界隈にはプロの方も多く、そういった方々であれば机上の段階でも面白い・面白くないを判別できたりするのでしょうか。しかしこちとら技術も知識もないド素人、実際にプロトタイプを作りつつ・動かしつつ、地道に試行錯誤を重ねるしかありません。
とは言え、闇雲に同じことを繰り返していたわけではありません。
2年半の間、なぜ面白くないかをきちんと分析して、面白くなるように改善して…を積み重ねた結果、本作のジャンルである協力型タスク管理ゲームがなぜ面白いのか、本作がなぜ面白くないのかを、かなりの解像度で言語化することができました。開発スタート時とは比べ物にならないほどの知見を得たのです。
3歩進んで2歩下がるどころではありません。
俺は進んでしかいない。
4.2. 噛み合わない2大コンセプト
さて、協力型タスク管理ゲームの面白さを概ね言語化しきったところで(たぶん)、次の目標はもちろん具現化です。そろそろパーフェクトなゲームシステムを考案し、無限作り直し編から解放されたいところです。
前章で述べた通り、協力型タスク管理ゲームの面白さの根幹はバケツリレーであり、そのためにはある程度ボリュームのあるタスクを用意するのが前提条件である、という持論に至っています。まずは取っ掛かりとして、この条件が満たされているかを検討してみます。ベースの部分があやふやだと、この上に何を積み上げても全て瓦解してしまうと考えます。
まずはお手本を確認してみましょう。
改めて、料理を作るゲームOvercooked!のタスクはよくできていると思います。何度も再掲しますが、たとえばハンバーガーを作るタスクを下図に示します。
各小タスクにはボリュームがあり(肉を焼く作業が本当に手間がかかる)、料理を作るにはそりゃ当然個別に具材を準備・調理しなきゃいけないでしょ、という妥当性に優れる。大タスクと小タスクの繋がりに違和感がない。「料理」と「協力型タスク管理ゲーム」は非常に親和性が高いと思います。
その一方で、本作はどうなっているかというと…
カップルを作るという大タスクを達成するための小タスクの内容が、未だに確定していません。
この2年半、「???」の部分をひたすら取っ替え引っ替えしてきたわけですが、相変わらずしっくり来るものが見つかっていない。ううーん、ここにぴったり当てはまるタスクって何でしょうか。面白さをほぼ言語化しきった(ような気がする)今、答えを見出すことができるんでしょうか…?
たとえば、場に集まったたくさんのモブの中から、いい感じの2人を選別するようなタスクはどうか? それは散々検討しましたが、協力型タスク管理ゲームに落とし込めそうにありませんでした(ボリュームあるタスクが思いつかない)。
あるいは…カップルを作るとなると、やはりプレイヤーは恋のキューピッド的な立ち位置になると思いますが、たとえば対話を中心としたタスクにして、言葉巧みに2人がくっつくように誘導してあげる? あるいは天使の謎パワー的なやつで2人の心の距離を縮めてあげる? それも検討しましたがどうにも上手くいくビジョンが見えません。本作は協力型タスク管理ゲームであって、料理のように、実際に手を動かす必要のある労働がタスクとして当てはまりやすいように思います。
となるとつまりなんだ。うむむ、どうにも「???」の部分が埋まらない…
そんな感じで紆余曲折しまくった結果。
現在、カップリングパーティ!の最新バージョンのタスクは次のようになっています。
ゲームの目標である大タスクを、「カップルを作る」から「既にカップルになった2人にドリンクを提供して更に親密になってもらう」に差し替えてみました。ドリンクの素材1〜3の説明は省きますが、テストプレイを重ねた結果、プレイヤーをバーテンダーとみなし、ドリンクを作って振る舞うゲームとしては、まあまあ違和感なく仕上がってきたように思います。
うーん、まあこれはこれで悪くない気がするのですが…
しかし。
しかしです。
これはあくまでバーテンダーゲームであって、カップルを作るゲームではないのです。紆余曲折の果てに辿り着いた苦肉の策でしかないのです。
違う!!違うのだ!!私は!!カップルを作るゲームが作りたいのだ!!バーテンダーをやりたいわけではないのだ!!既に出来上がり済みの2人にドリンクを出したいわけではないのだ!!誰と誰をくっつけようかな、でプレイヤーを悩ませたいのだ!!こっちの奥手そうなメガネ攻めちゃんと元気で明るくて誰とでも仲良くなれそうな高身長受けちゃんを出会わせたいな、攻めちゃんが嫉妬したり波乱諸々ありそうだけどそれ込みで微笑ましいし紆余曲折を経てくっついてほしいよね!!!もどかしいデートとかも容易に想像できるよね!!!でもあっちの子ともくっつけてみたいな!!!うーん悩ましいぜ!!!えっ何だよお前的には向こうの子とくっつくのが理想だって!?!?バカ言えクールな美形バリタチちゃんが周囲を無自覚に攻め落としていく中で電撃的にこの子とくっついて周囲がざわ…ってなるアレがいいんだろうが!!!とか!!!ねえ分かるでしょ!!!そういうアレを!!!カップリング妄想の極致を!!!カップリング勢同士のくっだんねえカプ談義を!!!協力型タスク管理ゲームに!!!落とし込みたいのだ!!!うおおおおおおおお!!!こなかが!!!結京!!!アリカレ!!!ゆの宮!!!のりなず!!!krtk!!!oiiw!!!うおおおおあああああああああ!!!!!!!!!!!!
はい。そんなこんなで長年に渡り研究を重ねてきたわけですが、考えれば考えるほど、「カップルを作るゲーム」と「協力型タスク管理ゲーム」の親和性が低いような気がしてなりません。
このカップルを作るゲームという題材、ぶっちゃけソロ用のゲームのほうがよっぽど相性がいいと思うんですよ。アクションよりはアドベンチャー寄り。Overcooked!の料理タスクのような実際に手を動かす必要のある作業よりは、コミュニケーションをもってタスクをこなす方向性。あるいはパズルゲーム。
いやあオタク同士のカプ談義はすげえ盛り上がるんだけどなあ。あのしょーもないトークの楽しさをゲームに落とし込めそうな気がしてたんだけどなあ…うむむ。
協力型タスク管理ゲームの研究が進むほど、解像度が上がるほど、2大コンセプトの融合が現実的でないと思い始めたのです。
考えても考えてもいいネタが思い浮かびません。カップルを作るというタスクに対する、ボリュームのある実作業が思いつかない。
大変悔しいですが、もうそろそろ無理かもしれません。
4.3. カップルを作るゲームを諦める決断
いよいよ決断の時がやって来たかもしれません。
すなわち。
2大コンセプト「カップルを作るゲーム」「協力型タスク管理ゲーム」のうち、どちらか一方を諦める。
あ、突然ですがここで宣伝させてください。
最近別のゲームを作ったんですよ。iOS/Android向けの、カップルを作るパズルゲーム「カップルメーカー」です。本作の開発に行き詰まりを感じ始めていた頃、気分転換に短期間でささっと作ったものです(いうても6ヶ月かかりましたが)。
まーたカップルを作るゲームかよ!と思われるかもしれませんが、好きなものは好きなんだから仕方ありません。結局、このカップルメーカーが人生2作目にして人生初リリースという肩書きを得ることとなったのです。
カップリングが好きな方や、パズルゲームが好きな方にはきっと楽しんで頂けるかと思います。ぜひ遊んでみてくださいね!
以上、宣伝終わり。
…とまあそんな事情があって、「カップルを作るゲーム」を作りたい欲は、この時点である程度満たされてしまっているんですよね。一方、これだけ研究しまくった「協力型タスク管理ゲーム」は未だ形になっていない。
ということは。
2大コンセプトのうちどちらを諦めるべきか、結論が見えてきた気がします。
「カップルを作るゲーム」→差し替え。
「協力型タスク管理ゲーム」→続投。
これが現実的かなあと。
ちなみに、この2年半で作成したゲームシステムやスクリプト諸々はほぼ使い物にならないため、実質1からゲームを作り直す形になります。
4.4. 余談
そういや、協力アクションやアドベンチャーではなく、対戦ゲームという形で「カップルを作るゲーム」を表現した作品を見かけました。「百合紅-ゆりくれ-」というボードゲームです。
場に複数の女の子キャラがおり、ゲーム開始時、プレイヤーたちはそれぞれ内緒で推しカプを決めておく。女の子たちの関係をうまいことコントロールしていき、自分の推しカプがくっつけば勝利、というルールのようです。調べた感じとても面白そうです。
5. 作り直しの方向性を考える
とは言え、カップルを作るゲームは相当お気に入りのコンセプトであり、これを諦めるのはとても後ろ髪を引かれまくる思いなのですが…とにかく、カップリングパーティ!のプロジェクトデータは一旦このまま寝かせておくことにします。
本記事を執筆している時点で、まだどのように作り直すか決まっておらず、当面の作業はアイディア出しになると思います。ちなみに最近第二子が産まれまして、0歳児と1歳児のダブル育児に日々奔走しており、まともにPCを触る時間がありません。できることと言えば隙間時間に頭の中でアイディアを巡らすくらい。そんなわけで、実は作業のタイミングとしては割と丁度良かったりするのです。
現時点で手元に残ったコンセプトはたったひとつ、「協力型タスク管理ゲーム」のみ。これはあくまで土台に過ぎないので、ここに何かしら他のコンセプトを乗っけることになります。料理とか。引越し業務とか。消防活動とか。部屋のリフォームとか。
旧2大コンセプトは前述の通り、どちらも好きだからという理由だけで親和性を度外視して採用しました。今回は協力型タスク管理ゲームに合いそうな題材を選びたいと思います。そんなの当たり前だろって?うるせえ!!
とりあえず、現段階でふわっと考えているアイディアのうち、有力候補は次の2点です。
・赤ちゃんをお世話するゲーム
・農作物を育てるゲーム
これらを簡単に紹介します。
5.1. 赤ちゃんを育てるゲーム案
①概要
みんなで協力して赤ちゃんのお世話をしよう!
舞台は保育園や託児所など。プレイヤーは保育士さん。たくさんの赤ちゃんたちがいっぱいいて、ミルク、おむつ換え、だっこ、遊んでほしい…などのタスクを次々に要求してきます。これらをみんなで協力して制限時間内にこなし、高得点を目指そう!
②良いところ
・最近第二子が産まれたばかりのため、育児ネタは個人的にタイムリーで興味が強い
・育児ゲームは多くなく、この題材だけで目立てそう
・うまくビジュアルが決まればめちゃくちゃ可愛いゲームになる気がする
③良くないところ
・まだボリュームのあるタスクが思いつけていない(バケツリレーが発生するようなネタがない)カップルを作るゲーム同様、ここがネックになってボツになる可能性も
・今のところ99%以上Overcooked!のコピー品になりそう。プレイ感やステージ構成がほぼ一緒になる未来しか見えない。本家を遊んだらええやん…となる。Overcooked!をリスペクトしつつも独自要素をがっつり盛り込んで別ゲーと化した「PlateUp!」のような大改造が必要になる
5.2. 農作物を育てるゲーム案
①概要
みんなで協力して農作物を作ろう!
土を耕し、肥料を撒き、水をやり、野菜を作って納品だ! 次々に農作物の注文が入るので、制限時間内に山ほどこなして高得点を狙おう! 牧場物語をハイスピードな協力型タスク管理ゲームに落とし込むイメージ。
②良いところ
現時点でボリュームのあるタスクが割と形になってきている。赤ちゃんお世話ゲームよりはバケツリレーが発生しそうな手応え。
③良くないところ
農作物を作るという題材は、牧場物語に限らずありきたりすぎて埋もれそう。特にsteamで山ほど見かける。やるならやるでかなりのパンチ力が必要。一言で差別化ポイントを言えるだろうか。
6. 終わりに
ここまで書いておきながら、やっぱカップルを作るゲームの題材でいい感じにまとまりそうなんで作り直しやめますわー!とかなったら面白いですね。いや面白くないな。
ちなみに本記事でだらだら述べたバケツリレーの話、前述の通りゲーム制作のド素人がえいやっと考えただけのものなので、本当に合っているかどうかもよく分かっていません。きっと心優しきガチプロの方が採点してくださるに違いない!
それにしても、ゲーム制作は奥が深すぎますね。2年半も費やしたのにまだ研究段階でしかなく、何も形になっていないも同然です。やり応えがありすぎる。エタる方が多いのも頷けます。
本作が日の目を見るのが先か!筆者のモチベが切れるのが先か!過酷なデッドヒートを見届けろ!
はい!文章がだいぶ雑になってきたところでそろそろ終わりです!こんな長々とした文章にお付き合い頂き誠にありがとうございました!にしすけ先生の処女作にご期待ください!
24/08/23追記
そんなわけで作り直しの方向性を色々考えた結果、「工場でおもちゃを作るゲーム」で行こうかなと思います。本記事と過去記事で説明した、面白くないポイントを全てクリアできているつもりです。まずはプロトタイプを作って様子を見てみます。
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