小説の値段
小説を書くきっかけは、ある科学の研究者に言われた言葉です。
「君の話し方、文章の切れがいい。なんでもいいから文章を書いてみてはどうか」
ちょうどその頃、ある出版社で著作権処理の仕事をしていました。毎日、作家達の書いた文章の一部を読んで、その作家に掲載の許諾をいただくという仕事です。
こんなゴミみたいな文章で小説家デビューできるのなら私にもできる。
ある日、ふと思いました。
大阪堺筋本町駅の地下でランチをしながらパソコンを広げ原稿用紙20枚ほどの短編を書きました。
2018年の夏、初めて書いたその小説があるコンテストの一次を通過したことをきっかけに本格的に小説を書き始めました。
そこから、色々と応募しましたが、どれも一次を通過することはありません。
コンテストで入選した作品がネットで公開されていたので読んでみる。
書評には、この作家は力を付けただとか、うんぬんかんぬん。
正直、なにがいいのかわからず。
でも、これが入選するということは、どこかに優れたポイントがあるのだろうと思いがんばって2回読んだがわからず。
それから、賞にこだわるのをやめ、あるサイトで小説を投稿し始めました。悲しいことに、最初は誰も読んでくれなかった。
それどころか、R18相当の描写があると運営側から警告され、修正するのが面倒だったのでR18がOKのサイトに一から投稿し直しました。
ブックマークは30件くらいで、多いとは言えませんが、更新する度PV数が伸び、読まれていることを実感できました。
書いているんだから、読まれないと意味がない。もっと言えば、商業価値が欲しいと思いました。
100話の連載が終わり、しばらく経ってから出版社から書籍化の話が届きました。
自分の書いた小説に初めて値段がつきました。