心がパンクしちゃいました
初めて折れた心
ある日の深夜2時過ぎ、母の独言で起こされます。引き戸を挟んで正面に座り込んでいる様子。いつもより声が大きいような。1時間ほど放っておきましたが、耐えきれずに母をなだめて寝るよう促しました。しかし独言から私への訴えにかわります。
「お父さん、彼女のとこへ行けばいいのよ」
「私は(離婚の)覚悟はできている」
「そうすれば、夜中にコソコソ彼女を呼ばなくていい」
嫉妬妄想による妄言です。キリがないので引き戸を閉めて床につきました。少ししてようやく諦めたのか、階段を降りる音を最後に静かになりました。
朝6時、いつもの時間に起床すると母はすでに起きていました。雨戸を開け、庭の掃除をはじめています。その日はデイサービスへ行く日。動きすぎると腰が痛いと言い出すので、お茶を入れて母に家に上がるよう促します。疲れたのか腰が痛いのか、明らかに機嫌の悪い表情です。お茶をすする母に、「今日はデイサービスの日よ」と伝えると、
「え?そうね」
「今日は腰が痛いから休もうかね」
これに父が激怒。大きな声で「行け!」と怒鳴りつけます。
母はパニック。妄想攻撃のスイッチが押されるのです。初めてではありません。母がデイサービスを休みたがる時は、ほぼ同じ流れなのです。
「またはじまった」
いつもなら二人の間に入ってなだめるのですが、この日は完全に心が折れてしまいました。洗い物だけ済ませて部屋に戻って落ち着こうとしましたがダメでした。
財布と車のキーだけ手に取って家を出ました。
逃避行
父には「ちょっと出てくる」と一言だけ。目的地もないまま車を走らせました。イライラからまぶたの痙攣がとまりません。「とにかく落ち着ける場所へ」と車を南下させたのです。
結果、お城を目指しました。落ち着きます、城は。周辺も自然に囲まれて歩くには最高のコースでした。近隣の歴史資料館や博物館を転々として車に戻ったのです。時刻はすでに15時をまわっていました。
「帰ろうかな」
「いや、帰りたくない。今日は無理だ」
しかし車は自宅方向に走らせていました。自宅まで残り10kmあたりまで来たとき、格安ホテルを発見。一瞬考えて結論はこうです。空いてたら泊まる、満室なら帰ると。
天に判断を任せたところ、「今日は泊まりなさい」という返答でした。スーパーで夕食の惣菜とアルコールを買い込みチェックイン。父にはやや強引な理由をつけてLINEを送信。2ヶ月ぶりの一人の時間と空間。酒も進み、いつの間にか深い眠りについていました。
翌朝、ホテルで朝食を済ませ、ちょっとした罪悪感の中、自宅へ戻ったのです。父は何か察してたのか、私を問い詰めることなくいつもの日常が始まりました。
介護ストレスの対処法
明らかにリフレッシュできた朝でした。母に対しても昨日より気持ちに余裕がある自分に気づきます。介護生活において、今回のような逃避行も悪くないなと感じました。
「介護ストレスを軽減するポイント」を紹介した資料です。
今の自分が頑張りすぎてるとは思いませんが、休養を十分とることと言われれば罪悪感も軽減します。次は出不精の父を、何とか外に引っ張り出さなければいけません。ストレス解消が家で酒を呑むことしかありません。
晩酌の際、母が認知症になる前までの趣味をヒアリングしてみます。
「早く死にたいからいいんだ」
なんて言いながら酒を呑ませるわけにはいきませんから。