いわゆる「雪原ビキニ」に関する考察
寒い。それにしても寒い。
こう寒いと心もきんたまも縮み上がる。
ひもじい、寒い、もう死にたい……不幸はこの順にやってくるという。
まあ寒いからと言って縮こまってばかりもいられないので、本日は皆さん大好きなビキニグラビアについて考察したいと思う。
ビキニグラビアに関しては以前、こういう↓考察をした。
この投稿が意外と好評だったので、その柳の下の二匹目のドジョウを狙おうというわけだ。
さて、今回考えていきたいのは「雪原ビキニ」だ。
前回は、なぜグラビアのなかには和室を舞台に女性が、
ビキニでその肢体を惜しみなく(いや、少し惜しみながら)晒しているものがある一定数あるのか、ということを考察した。
で、今回は「雪原グラビア」について考えていく。
「和室グラビア」に関しては、夏、海の近くの民宿に部活やサークルの夏合宿、もしくは社員旅行で訪れた際、海に行ってきた(あるいは海から帰ってきた)女子が水着を着たままくつろいだり、アンニュイにだらけたりしているシチュエーションを想定しているのであろう、という仮説を立てた。
しかし、なぜ雪原にビキニが???
これは、「和室ビキニ」よりもさらにわけがわからない。
いや、寒いよね? ふつう??
なんで雪原でビキニ着てんの??
おかしくない??
変態なの???
など、さまざまな疑問を抱かずにおれないが……これも「和室ビキニ」よりはさらにニッチなジャンルとはいえ、ある一定数の需要があるらしく、冬場になれば「プレイボーイ」や「フラッシュ」「フライデー」あたりにこの手のグラビアがいくつも掲載される。
なかにはいまトップグラビアアイドルである名前に「雪」がつく↑この人など、芸名(本名かもしれないが)のせいで「雪原仕事」が多いようだ。
基本的に雪原、とくにゲレンデで水着になる、というのは所かまわず肌を曝け出して肌を焼きたがる白人女性などではそう珍しいことではないようだ。
また、ロシアや中国ではゲレンデでのビキニ限定イベントなどもある。
あるいは、日本においてもゲレンデ開きのイベントなどで目立ちたい人はビキニや水着・パンいちになったりもする。
しかし、いわゆる雪原グラビアが醸し出しているのは、こういう「ハレ」のフェスタ感とは対極の世界だ。
あと、海外セレブはなぜかゲレンデでビキニを披露したがる。
しかし、こういう
「ワタシはワタシが好きなところでスキな格好をしてるだけ。コキたければその粗末なモノを勝手にシゴくがいいわ」
という翻訳調の声が聞こえてきそうな彼女たちのドヤ顔ビキニ写真と、いわゆる我々の「雪原ビキニ」は完全に趣を異にするものだ。
まず、こうした雪原グラビアから我々が感じることを挙げておこう。
・寒そう……
・冷たそう……
・かわいそう……
・仕事、選べないの……?
などなど、どうしてもわたしのようなジェントルマンは、寒風の中、雪景色に肌を晒して……いや、晒されるよう強いられている女性に同情を感じずにおれない。
とくに、こんなふうに↓被写体が笑顔であればあるほど。
しかし、そういうわたしたちの中に芽生える同情や憐れみこそが、こうした写真を撮ったりグラビアを企画したりする人々の狙いなのかも知れない。
たとえばこんなふうに……
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「ナタネちゃん、新しい仕事入ったよ~」
「あ、マネージャーさん、次はどこでビキニですか?」
とグラビアアイドル・野花ナタネ(仮名)はデビュー1年を待たずして、ビキニ仕事に前向きだった。
MEGUMIさんも小池栄子さんも、グラビアから今のキャリアを築いたのよ?
いやいや吉岡里穂さんや今田美桜ちゃんだって……とくに吉岡里穂さんはグラビアはイヤイヤだったらしいけど……グラビアでビッグチャンスを掴んだのよ!
それを言うなら馬場ふみかさんや内田理央さんだって……!!!!
あ、あの二人はモデルで仮面ライダー仕事も……
ま、それはそうとして、あたしだって今はグラビアばっかだけど、いつかはビッグチャンス掴んでテレビに出まくって、ドリームジャンボ宝くじやUR賃貸のCMに出まくって、NHK朝の連続テレビ小説のヒロインにだって……それに紅白の司会も……
と、マネージャーの声がナタネの野望を強制終了する。
「次の仕事はね~……野沢温泉だよ! 温泉にも入れるよ~!!」
「あ、ってことは……露天風呂にビキニで入るタイプのやつですか?」
「うーん、そういうカットももちろんあるし、寝乱れ浴衣カットもあるけど~……今回のメインは……」
「今回のメインは?」
「今回のメインはね~……ゲレンデだよ!!!」
ゲレンデグラビア。
ついに来た。ナタネにもこの試練の時が。
南国育ちのナタネは、寒さに弱い。
しかしそれにしても……なんで一体、ゲレンデでビキニを?
ナタネは常々疑問に思っていた。
「あの、マネージャーさん……前から思ってたんですけど、あの……ゲレンデでビキニ、ってホントに需要あるんですかあ……?」
「なに言ってんのナタネちゃん? 冬はゲレンデでビキニでしょ? ゲレンデでビキニにならなくて、冬にどこでビキニになるの?」
「えっ……それはハワイとか、グアムとかオーストラリアとか……」
「ナタネちゃ~ん……海外ロケなんていまどどこも予算出ないよ? ただでさえ芸能人が冬にサイパンやシンガポール、セーシェルに行っては勝手にインスタで水着姿アップするもんだから、海外ロケグラビアの需要もなくなってんのよね~」
マネージャーの言葉の裏に
「それにテメエごときが海外ロケなど10年早いわ! てか10年後のテメエのビキニに価値があればの話だがな!!! ふはははははは!」
という本音が隠れていることは、ナタネにもわかった。
「でもそもそも、なんでゲレンデでビキニなんですか? ……あれっていったい、どんな状況? どういう設定なんですか?」
「状況? 設定? ないないないない! そんなのないよ!! ただ女の子が寒そうなゲレンデでビキニになってる、それにファンはコーフンするんだよ!!!」
とマネージャーの言葉に熱が入る。
「だから、なんで?」
「だから『なんで』とかじゃないな~……しいて言えば、肌感覚かな~?」
「は、肌感覚?」
「そうそう、いっっっかにも寒そうなゲレンデで、女の子がビキニになっている……当然、寒いじゃん? 冷たいじゃん? ナタネちゃんがゲレンデでビキニになって感じる肌感覚を、ファンはナタネちゃんのグラビアを通して味わいたいんだよ!!!」
「えっ? じゃあこの前、イメビで使ったローションとかも……同じようにファンは肌感覚を……」
「う、う、う~ん…………そ、それはどーーーーーかなああーーーー??? あ、あ、あれは……あれはどっちか、っていうと視覚効果が勝ってるかなーーーー?? 雪原ビキニとは違うかなーーーー???」
「そう……なんですか?」
ナタネは知っていた。
ローションでヌメるナタネの水着姿を見て、ファンが何を思い浮かべるのか。
それはある種の職業を連想させる……男たちが薄ら笑いを浮かべながら、こそこそとサービスを受けに行くある種の職業だ……
それにしても、ナタネには理解できないままだった。
いったいグラビアファンたちが、雪原グラビアに何を求めているのかを……
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こうした被写体の葛藤を想像すればするほど、我々グラビアファンは雪原グラビアに魅せられる。
この寒空の下、一面の雪景色のなかで、素肌を晒されている被写体。
その「させられてる」感。
「なぜ?」という理不尽な思いを胸に、ポーズを取り笑顔を作るモデルの複雑な感情。
間違いなく彼女らは、寒さに凍えている。
雪原でこんな恥ずかしい恰好をさせられている不条理を、寒さ以上に実感している。
この仕事を乗り越えた後に待つ栄光、名声、今後のキャリアへの野望、事務所からのプレッシャー、水着のプロたらんとする矜持……
そんな思いが、彼女らを水着で雪原に立たせている。
なぜ雪原でビキニ?
手袋とかマフラーとかしょうちゃん帽とかニットの上着とか羽織ったりしてても、それでもビキニ?
彼女らにそんな状況を強いているプロデューサーやマネージャー、カメラマン、企画者たちのやや嗜虐的な思惑。
雪原グラビアを見るわたくしどももまた、そんな倒錯した感覚の共犯者となる。
“寒そうなゲレンデで水着なんて超元気! ガチ健康的!!”
それは詭弁だ。きれいごとに過ぎない。
わたしたちは、カネや権力や業界の構造を盾に女性に理不尽を強いてサディスティックな愉悦を得る、ゲスな変態との共犯意識……
だからわたしたちは、雪原ビキニに魅せられ続ける……
まだ寒い季節が続く。
わたしたちは自分たちのドス黒い深淵に向き合いながら、真っ白な景色のなかでビキニを晒す彼女たちを求め続ける。
次回は、「廃墟グラビア」に関して考察したい。
気長に、こうご期待!!
<了>
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