愛しのバベイオモイド神さま💕【最終話】 「西田少女地獄【3】」
■2005年・14歳
■2005年10月10日(晴れ)~11月20日(曇り)
(編注)この間、日記中断。
■2005年11月21日(雨)
日記さん。
おひさしぶりです。
今日は、とくべつに面白いことが二つあったので、ひさしぶりに報告します。
ひとつは、イバラキが自殺したことです。
あのしけたアパートの部屋で首を吊ったと、今朝の新聞に出ていました。
遺書などはなかったと書いてありましたが……
なんで死んだか、あたしにはわかりますよ。
たぶんあたしが訪ねていったあとにも、何人かあたしと同じような人たちが彼を訪ねてきたんじゃないでしょうか。
そしてイバラキは、あたしにしたのととおんなじような対応をくりかえして……
いいかげん、疲れちゃったのでしょう。
その気持ちは痛いほどわかります。
いや、べつに同情してるわけじゃありませんよ。
いま、あたしがイバラキに対して抱いていた思いをふりかえれば、頭をかきむしって転げ回りたくなるほど恥ずかしくなるのと同じで……
イバラキもまた、自分が今のあたしと同じ歳にやったことに対する恥ずかしさで、もう死ぬしかなかったんでしょう。
あたし、たぶん……
いまから何年たっても、あの日、イバラキに会いに行ったこと、それにそれまでの8年間を思い出すと、そのたびに恥ずかしさで頭がおかしくなりそうになるんじゃないかなあ……。
たぶん、ずっとそうでしょう。死ぬまで。
てか、誰だってきっと、こんなふうに苦しむんでしょう。
自分がこどもだった時のはずかしいことを思い出しては、一生、いちいち、なおりかけのかさぶたを剥がすみたいにしながら。
そうやって、死んでしまいたいくらい、恥ずかしい思い出を大事にしながら。
今ごろ、イバラキは地獄で舌を抜かれているのでしょうか?
閻魔大王の前で、彼が今さらウソを言うようには思えないですけれども。
あともうひとつの話。
昨日、柳川が警察に逮捕されました。
はい、あたしのお尻の穴を犯した、あの殺人鬼マニアのクラスメイト男子です。
今朝のホームルームで、担任の宮本先生(前もお話したと思いますが、不思議な色の眼をした、すっごくきれいな女の先生です)が、わたしたちに教えてくれました。
柳川はなにを考えたのか、公園で遊んでいる小学生の女の子を、右手に金づち、左手に包丁を持って、襲おうとしたそうです。
でも、襲った相手が小学生の女の子なのにあんがい強くて、逆に金づちを取り上げられ、頭をかち割られたそうです。
命にべつじょうはないようですが、当然、柳川は逮捕されました。
宮本先生は、あたしたちにこのことを伝えているとき、必死で「沈痛なおももち」を作っていました。
でも、あたしにはわかりました。
宮本先生が、必死でわらいをこらえていたことを。
なぜわかったかって?
あたしも宮本先生と同じで、必死にわらいをこらえていたからです。
警察の調べに対して、柳川は、
「遺薔薇鬼屠死夫を越える殺人犯になりたかった」と供述したとのこと。
…………………。
し―――――――――――――――――――――らねっと。
【了】
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