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#心に残る上司の言葉

 そうですね。

 高本課長はとても親切丁寧で、どちらかと言えば面倒見のいいタイプです。わたしには入社以来、ずっと優しくしてくれました。
 
 業務の教え方も丁寧ですし、得意先への訪問時には必ず同行してくれました。
 そんなときはランチタイムならお昼を、そうではないときはカフェでスイーツを、いつも奢ってくれるんです。

 なんでこの人、わたしにこんなに親切にしてくれるんだろう?
 と不思議でした。
 というのも、高木課長……実は社内ではあまり女子ウケがよくないタイプなんですね。

 身長が低くて太っていて、ちょっと加齢臭がキツいからでしょうか。
 目つきがなんとなくギラギラしていて、不審だからでしょうか。
 そのせいか40をすぎているのに高本課長は独身です。
 まわりに女性の影もありません。

 むしろ、社内では女性に避けられているタイプでした。

「ハルナ、ぜったい気をつけたほうがいいよ。高本ぜったい、あんたに気があるよ。狙われてるよあんた」

 と同期のヒナコがお昼ご飯のときにわたしに言いました。

「え~……そんなわけないよ~……わたしなんか誰も狙わないよ~……」

 わたしは自分の容姿にそれほど自身がないので、いくらなんでも、とてもじゃないですが、高木課長がわたしに下心があって親切にしているようには思えませんでした。

「ああもうっ! ハルナ、あんたムボービなんだから! てかあんた、けっこう社内の男から狙われてるよ? みんなあんたのおっぱいとかお尻とか、ジロジロ見てるよ? 気づかない?」

「え~……そんなわけないじゃん~……」

「あああああ……ほんとにイライラするっ! ……あんたって天然ボケ装ってモテ狙うタイプ? ね、いろんな男が……高本よりはずっとマトモな男だって、あんたのこと狙ってんだからさ……いくらなんでも、高本にだけは食われちゃダメだよ? 妬んでんじゃないからね? これ、親切で言ってんだからね?」

 ヒナコはなぜか、ほんとうにイライラしている様子でした。
 たしかに……なぜかわたしは子どもの頃から同性の友達をイライラさせることが多いです。

「うん……わかった~……気をつける~……」

 と、ヒナコには言ってみたものの、わたしは高本課長に関して、何をどう気をつければいいのか、さっぱりわかりませんでした。


 それから1週間くらい後……わたしは高本課長と同行して得意先を周り、かなり遅い時間になったので、その日は2人とも直帰することにしました。

 そしてそのまま、全国チェーンの居酒屋へ。

「ほら、もっと飲んで飲んで!」

 と高本課長がお酒を進めます。

「は、はい~……」

 と、わたしの居酒屋での記憶はここまでです。
 わたしは昔から、それほどお酒に強いわけではないのです。


 ……気が付くと、知らない部屋にいました。
 というか、思い切りラブホの部屋です。

 高木課長がわたしの服を脱がせています。

「あ、あの……あの課長……」

 ほぼ、ブラいちパンいちの状態まで脱がされていました。

「けっこう、着やせするタイプなんやなあ……ええ身体しとるでえ……」

 なぜか高本課長は関西弁で言いました。

「え、あの、そんな……きゃっ!」

 ブラが剥ぎ取られます。

「ほれほれ出たでえ……お月様みたいにまんまるで、でっかいおっぱいさんのお出ましや……」

「あっ……いやっ……そんな……やめっ……んんっ!」

「なんやもう、乳首ビンビンやないかいな……スケベな身体しとると思とったら、芯からスケベやったみたいやなあ……」

「ま、待って……くだ、さいっ……んんんっ!」


 それから先の詳細は省きますが、高本課長から言われた言葉だけがいまも頭の中に鮮明に残っています。

「ほれ、四つん這いになりいいな……おう! こりゃまたおけつもでっかいなあ……バック専用の恥ずかしいおけつしとるやないか……」

 とか、

「なんや……もうこんなに濡らして……可愛い顔して、どうしようもないドスケベ女やなあ……自分、ちょっと変態入っとるんと違うか……?」

 とか、

「ほれほれ、我慢せんともっと声出してみいな……隣の部屋に聞こえるくらい、もっとでっかい声で喘いでみいな……」

 とか、

「これまでの彼氏に、こんなスケベな体位でヤられたことあるか? ……ないんか? よしよし、おっちゃんが教えたるわ……」

 とか、

「おっぱいが揺れとるでえ……あんまり揺れるんもなんやから、下から支えといたるわ……ほんま揉みごたえがあるお乳やのう……」

 とか、

「イきそうなんか? ……イくとくはイく、っちゅうんや……お前のお父さんお母さんが、娘がこんな中年のおっさんにヤられてイってもうた、と知ったらどんなに悲しむやろなあ……? そや、イくときは“お父さんお母さん、ごめんなさいっ! ハルナ、イっちゃうっ!!”って言いながらイくんや……」

 とか、

「ほんまにわしらは身体の相性ええのう……どないや、今度は会社のトイレとか給湯室とか屋上とかで、一発かまさへんか……? せや、得意先のトイレでカマすんも、オツなもんやでえ……」

 とか……

 いろんなことを言われました。



 高本課長とはあれっきりで、今はもうすこしわたしと年齢の近い、どちらかと言えばさわやかな先輩男性と付き合っていますが……その男性はわたしにとても優しいです。

 でも今でもあの夜、高本課長に言われたことを思い出すと、少しお腹の下あたりがじんじんします。

#心に残る上司の言葉

【了】

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