思い込みラストサマーin熱海 後編
前編のあらすじ
ラストサマーをかけ熱海にやって来たおっさん2人。
おっさん2人が周囲から浮いている事を気にしすぎたにっしゃんはとんでもない思い込みを炸裂させ、観光協会にお手数をかけてしまう。
それを見てニコニコ微笑む変人。
おっさん2人の熱海旅行は一体どうなってしまうのか!?
というわけで後編である。
話は少し前後して、海から上がり、駅の方まで戻る道中に遡る。
僕達はGoogleマップに沿って歩いていた。
実は行きは何も見ずに適当に歩いた結果、かなりの遠回りをしてしまっていたのである。
しかし帰りは海に入った事や諸々の事があり相当疲れている。
遠回りするわけにはいかない。
Googleマップを見ると行きとは全く違うルートが示されており、おそらくかなりの近道になりそうである。
僕達は「これやこれ!行きの道は何やったんや!絶対こっちの方が近い!」と言いながら意気揚々と歩こうとした。
と、その瞬間。
僕達の目の前に余裕で100段以上はある
とんでもない大階段が姿を現した。
僕達は思った。
え、Googleマップこれほんまに合ってる?
ワザとかましてきてない?
何かとんでもない大階段出てきてんけど。
漫画で主人公の修行パートに使われそうな階段やねんけど。
え、これを今年40歳のおっさんが上らなあかんの?
しかも片方120キロやで。
上りきれるか、これ??
僕達はあまりの階段に絶望しながらも、駅に戻るには上るしかないので上り始めた。
上れど上れど出てくる階段。
終わったかと思えば、また現れる階段。
まるでラグビー部時代の走り込みである。
まさか熱海に旅行に来て、あの練習を思い出す事になるとは。
そして何とか階段を上りきった結果、、、
変人、虫の息。
何故かにっしゃんより遥かにバテている。
変人はゼエゼエ言いながら「何で、、、120キロあるのに、、、俺よりバテてへんねん、、、」と悔しそうに言っていた。
知らんがな。
僕達は近くの自販機でアクエリアスを買い、一気に飲み干した。
めちゃくちゃうまい。
やはりアクエリアスはこっちがどれだけ喉が渇いているかで、うまさが全然違ってくる。
まさかこの歳でこんなにうまいアクエリアスがまた飲めるとは。
そう考えると、この階段も良かったのかもしれない。
変人はフラフラしながら
「今のところ全部上手くいってる!!!」
と謎のセリフを叫んだ。
いや、どこがやねん。
あんたフラフラやないか。
駅に戻った僕達は、僕が電話を終えた後、早めにホテルに行く事にした。
変人が階段でバテバテだからである。
ちなみに僕達が行くホテルは山の上にあり、行き帰りの送迎車に無料で乗る事が出来る。
送迎車が来る時間は16時、17時、18時で事前にスマホから席を予約しておくシステムである。
で、この予約はホテルを手配してくれた変人のスマホからしか出来ないので、旅の数日前に変人に席を予約してもらっていた。
変人は当初18時を推していたが、僕はおそらくおっさん2人だと18時までする事がなくなるか疲れて時間を持て余すだろうと思い、16時か17時を勧めていた。
それで結局17時に予約したのだが、変人が階段でバテバテ過ぎて一刻も早くホテルに行きたくなり、16時に変更出来ないか試してみる事になった。
スマホを操作し、送迎車の予約画面を開く変人。
横に座っていた僕は「まあたぶん厳しいやろうな」と思った。
何故なら僕は事前にそのホテルのレビューを複数見ており、その中のいくつかに「送迎車が満員になるから早めに予約が必要」みたいなレビューがあったからである。
つまり送迎車の席はいつもあまり余裕がないのだ。
しかもこの日はお盆。
いつもより混み合っている事が予想される。
なので時間の変更は難しいだろう、、、
そう思っていた瞬間、
変人が「あ〜もう全然空いてるわ!!!」と叫んだ。
僕はマジで!?と画面を見たのだが、そこには座席表みたいなものは全く映っていなかった。
え、全然空いてる??何が??何を根拠に??
と僕が混乱していると、変人は意気揚々と
「17時の予約削除して16時の方に予約変更するわ!全然空いてるし!」
と早々に17時の予約を削除してしまった。
そして流れるような動作で16時の予約のボタンを押し、
そして止まった。
16時の予約の画面が先に進まないのだ。
正確に言うと
16時 座席 1 +
となっておりこの+を押して、座席を2にしたいのだが、何回押しても1から変わらないのである。
変人は「何やこれ!画面がおかしい!」と+を連打しイラついている。
僕は「え、それ席があと1つだけって事じゃない?」と変人に言った。
すると変人は「それはありえない!」と一蹴した。
そして続いて「あ〜なんやこれ!画面がおかしい!1より増えへん!」と再びイラついた。
僕は「え、これ16時の席ってほんまに空いてんの?」と変人に確認した。
すると変人は「空いてる!大丈夫!こんな送迎バスみたいなもんは滅多な事じゃ埋まらへん!」と自信満々で答えた。
僕は「え、この画面から座席表って見れんの?座席表見たん?」とさらに確認した。
変人は「見てない!でも大丈夫!」と再び自信満々に答えた。
僕は内心「見てへんのかい!!!」と大きくのけ反った。
そしてこう思った。
さっきからこいつの自信はなんやねん!
根拠どこにあんねん!
これ絶対席あと1つって事やろ!
見てない!でも大丈夫!って何やねん!
お前は吉高由里子か!
あかん、これは怪しい。
めちゃくちゃ怪しい。
かなりまずい事になってる気がする。
先に17時の予約削除してもうたし。
最悪、送迎車で行かれへんようなるんちゃうか。
僕は再度変人に「これ席あと1つで満員って事ちゃうか」と進言した。
すると変人は少々うんざりした様子で「そんなことは、、、」と言ってから
「あ・り・え・な・い」と断言した。
その言い方はまるでドリカムの名曲未来予想図の「ア・イ・シ・テ・ル」のサインの様だった。
僕達の後ろでブレーキランプが5回点滅したような気がした。
全然思ったとおりに叶えられてないけども。
一通り+を連打し終えた変人は「あ〜これあかん!画面がおかしい!バグってもうてる!もう16時に直接行ってみよう!」と、とんでもない事を言い出した。
僕は「いやいやいや!それはまずいやろ!そうせんための予約やねんから!」と反論した。
すると変人は「大丈夫やって!バスなんか満員ならへんって!最悪立ちでもいいねんから!」とまさかの"立ち"の案を出してきた。
僕は「いやいや立ちなんかいけるわけないやん!立ち許したら予約なしでなんぼでも乗れるやん!絶対無理やって!」と再び反論した。
すると変人は「ん〜じゃあちょっとホテルに直接確認してみるか」とホテルに電話をかけ始めた。
僕は「これでハッキリする」とホッとした。
ホテルの方が電話に出て変人は事情を説明する。
「何か画面がおかしくて、人数が1より先に進まないんです!」
言い終わった後、ホテルの方が何か言ったのを聞いて変人は「えええ〜!!?」と叫んだ。
そして続けて
「あと1人で満員なんですか!?」と言った。
僕は思った。
だから言うたやろ!!!
何回も言うたやろ!
その思い込みなんやねん!
何でバスは満員ならんて思い込んでんねん!
根拠は何やねん!
しかし変人は諦めない。
「立ちでもいいんですけど、ダメでしょうか」
するとホテルの方の声は聞こえないが、何かを即答され、変人は「あ、ああ、、、そうですか、、、」と答えた。
おそらく「それは無理です!」と即答されたのだろう。
まあそらそうやろ。
そんなんせんための予約やし、山道立つん危ないし、そもそも市営のバスみたいに手持つとこないやろうし。
大体立ちって言い方なんなんや。
しかしこれは困った事になってきた。
16時無理で17時も削除したとなると、どうやってホテルに行けば、、、
僕は電話の横から変人に、さっき削除した17時の分、もう一回戻せないか聞いてみるよう頼んでみた。
ついさっき消したばっかりなのでまだ埋まってはないのではないかと思ったのだ。
しかし変人が聞いてみると17時の分も満員になってしまっているという。
万事休すか、、、
そう思った瞬間、、、
変人がこう叫んだ。
「え!?削除出来てなかったんですか!?」
そう。
変人が17時の予約の削除に失敗していたのだ。
なので予約がそのままになっており、無事送迎バスに乗れる事になったのだ。
まさかの大逆転。
奇跡的に助かった。
電話を終えた変人はまたもや叫んだ。
「今のところ全部上手くいってる!!!」
いやいや、あんたよう言うで。
削除出来てないわ、満員ないと思い込むわ、めちゃくちゃやないの。
予約画面開いてから今まで、正確一つもないやないか。
何で満員ないと思ったんや。
最初の「あ〜もう全然空いてるわ!!!」なんやったんや。
どこ見てそう思ったんや。
ちなみにその後理由を聞いても「いや、満員なんてないと思ってんけどなあ、、、」という言葉しか返ってこなかった。
おそらく本当にそう思ったのだろう。
もはや惚れ惚れするほどの思い込みである。
おっさんになるとここまで思い込みが激しくなるものなのだろうか。
まあ変人に関しては高校生の頃からこんな事よくあった気もするが。
そんなこんなで1時間経って時刻は17時。
予約の時間である。
バスを待っている僕達の前に
送迎のエスティマが現れた。
バスちゃうんかい。
誰やバス言うたやつ。
そら余裕で満員なるわ。
おそらくホテルの部屋数が少なく1回に送る人数も少ないので、バスクラスの大きさは必要ないのだろう。
ちなみにホームページのどこを見ても送迎"バス"とは書いていなかった。
もちろん送迎バスと言い出したのは変人。
思い込みに次ぐ思い込み。
思い込みの二度漬け禁止。
あとエスティマで"立ち"絶対無理やわ。
こうして僕達はようやくホテルに到着した。
カギを受け取り4階にあがる。
ドアを開けると、そこには
凄くいい感じの部屋があった。
部屋がキレイで、しかも広め。
さらに山の上だから見えないかと思っていた海も部屋からしっかり見える。
まさに申し分なし。
最高や!!
いよいよ旅行らしくなってきたで!
僕達はテンション爆上がりした。
冷蔵庫を開けると支配人からのプレゼントと書かれたお酒とジュースが入っていた。
最高である。
ちなみに受付時にはホットアイマスクや顔パックの中からどれか1つを選んで、もらう事が出来た。
至れり尽くせりである。
変人はやっぱり「今のところ全部上手くいってる!!!」と叫んだ。
しばらくしてからお待ちかねの夕食にでかける。
プレミアム会席"極"である。
地下一階のレストランに着き、席に案内される。
案内された先にあったのは、、、
横並びの凄くムーディーな席だった。
よ、横並び、、、
そしてムーディー、、、
おそらく全テーブルの中で一番いい感じになれる席に案内されてしまった。
何故こんな事に。
よりによっておっさん2人の時に。
他の席を見渡してもおそらくここが一番いい席。
プレミアム会席"極"を選んでいる関係もあるのだろうか。
これがカップルだったら大喜びだっただろう。
カップルだったら!
カップルだったのなら!!!
もちろんホテルの方は悪くない。
何せ予約の表記が「大人2人」なのだ。
まさかおっさん2人が来るとは思わないだろう。
いや、恋人同士の男性2人が来る事はあるかもしれないが、謎のラストサマーをかけた男性2人が来る事はまああるまい。
そしてこれに関しては僕達も悪くない。
そう、誰も悪くないのだ。
強いて言うなら悪いのはモテなかった過去の僕達だろうか。
非常にいい雰囲気を堪能しながら、僕達は料理に舌鼓を打った。
どの料理もとても美味しい。
特に和牛のステーキは最高だった。
ワインもどんどん進んだ。
まさに大満足である。
ご馳走様でした。
味もサービスも素晴らしかったです。
部屋に帰りちょっとゆっくりした後、僕達はプレイルームに行き、卓球とダーツを楽しんだ。
僕は中学時代卓球部で卓球が大好きなので、久しぶりの卓球は非常に楽しかった。
初心者ながら変人もなかなか楽しそうにしていた。
ここにきておっさん2人旅行がようやくフィットしてきた様に思える。
その後はこれまた雰囲気抜群の露天風呂付き大浴場に入り、部屋であらかじめ買っておいたお酒を飲み、色々あった1日目を終えた。
2日目。
最近の早朝バイト生活のおかげか、僕は1人朝早くに目を覚ました。
もう1回寝るという選択肢もあったが、せっかくなので1人朝風呂に出かけた。
朝の風呂はこれまた格別だった。
これぞ温泉付きホテルの醍醐味と言える。
部屋に戻り、爆睡している変人の耳元で稲川淳二座長の絶叫を流し、目を覚まさせる。
座長の絶叫で目覚めた変人は非常に目覚めが良さそうだ。
変人もひとっ風呂浴びてくる事になり、僕は窓辺に座り、しばらく1人でゆっくりした。
非常にいい時間である。
日々の喧騒を忘れる事が出来る。
どれぐらいの時間が流れただろう。
僕はずっと窓辺から見える景色を眺めていた。
綺麗な海。
穏やかな街並み。
全裸でくつろぐ変人。
素晴らしい朝である。
って、おい!!!
お前なに全裸でくつろいどんねん!!
何で全裸やねん!!
勘弁してくれ!!
部屋の窓ガラスには、いつの間にか部屋に戻ってきて全裸でくつろぐ変人が映っていた。
服を着る気配が全く無い。
聞くと、最近は家ではもっぱら全裸だそうだ。
いやあんた、そんなグラビアアイドルとかでたまにいる人みたいな事言われても。
何でおっさんなってからいきなり裸族なんねん。
ていうか、ここ家ちゃうし!!
僕は力を込めてハッキリと言った。
「や・め・て・く・れ」
またブレーキランプが5回点滅した気がした。
そうこうしてると朝ご飯の時間になり、僕達はまた地下一階のレストランに移動した。
今回は横並びではなく普通の席でとりあえず一安心である。
朝ご飯は釜炊きご飯がとても美味しかった。
ひとつ、醤油をかけるよう書いてあったのに気付かずかけずに食べ「これ味薄いなあ。でもそれがいいんやろなあ」とおっさん2人で言っていたのは痛恨ではあったが。
高校時代、変人がファーストキッチンでホットドックをソースが大量に置いてある事に気付かず「この素材そのままの味がいいんや!」と言いながら食べていた事を彷彿とさせた。
人間いくつになってもやる事はあまり変わらないものである。
朝ご飯を食べ、部屋に戻ると、程なくしてチェックアウトの時間となった。
荷物をまとめ部屋を出る準備をする。
時刻は9時55分。
チェックアウトの時間まで後5分。
急がなければ、そう思い変人の方をチラッと見る。
!!!
変人はベッドの上で顔パックをしていた。
こ、こいつ!?
か、顔パックしとる!!!
このタイミングで!!
チェックアウトまで後5分のこのタイミングで!
何で!?
何で今やんの!?
しかもめっちゃゆったりとした雰囲気醸し出してるし!
何で今そんな雰囲気出せんねん!
お前、前田慶次か!
図太さどうなってんねん!
僕に急かされ、変人はしぶしぶ用意をし、部屋を出た。
この人、1人でホテル泊まってる時、いつもどうしてるんやろ。。
そんな事を考えながら、エレベーターで一階に行く。
そしてチェックアウトを済ませ、
僕は変人に深々と頭を下げた。
そう。
ここまで変人に色々言っていたが、今回のホテル代
変人の全出しなのである。
こんないいホテル、金欠太っちょが自力で泊まれるわけがないのだ。
全ては変人さんの力なのである。
感謝してもしきれない。
何というか、、、
ほんとにもう、、、
ありがとう杉山(稲川怪談「迎えにきたマネージャー」より)
ホテルを出て、送迎してもらい、駅に戻った僕達はバスに乗り、熱海城に向かった。
2日目はどこか観光しようと決めていたのだが、この熱海城がベストと判断したのだ。
この熱海城、実は実在した城ではなくいわゆる「天守閣風」観光施設である。
なので観光するにはもってこいなのだ。
しかも横には「熱海トリックアート迷宮館」もある。
なかなか色々楽しめそうなのだ。
こうして僕達は熱海城に行った。
で、結論から言うと、、、
非常に楽しかった。
熱海城はまず、6階の天守閣展望台が素晴らしかった。
熱海の街並みを一望出来るのだが
マジで絶景。
絶景中の絶景。
めちゃくちゃ良かった。
ただ2人とも「相棒」の見過ぎで「ここで揉み合ったらすぐ落ちてしまうんやろうなあ、、、」と思ってしまった。
相棒あるあるでたまに被害者が「いや、そんな落ち方はせんやろ!」という信じられない角度でビルから転落する事があるのだ。
まあ、それはいいとして。
他にも5階から1階まで様々な展示などがあり、面白かった。
めちゃくちゃ楽しめた。
中でも面白かったのは、3階の浮世絵・春画展。
こちらはなんと18歳未満はご遠慮くださいとの事。
観光施設のワンフロアで18禁。
攻めてるぜ、熱海城。
すごいぜ、熱海城。
内容は是非行ってみてご確認を。
続いては熱海トリックアート迷宮館。
こちらも凄く面白かった。
様々なトリックアートが並んでおり、写真を撮っていけるのだが、本当に色んな種類があり、最後までめちゃくちゃ楽しめた。
というわけでその中の1枚。
おっさん2人でも関係なく、凄い楽しめたし、ここは本当に良かった。
お子さんがいる方は連れていったら、大喜びじゃないだろうか。
個人的には実家のお母さんに彼女がいると嘘をついてる変人が、女性の絵が描いてあるトリックアートを撮ってから「よし、実家に帰った時もし彼女の写真見せてと言われたら、これを彼女との写真と言い張ろう」と言っていたのが一番良かった。
狂気的すぎるやろ。
こうして僕達は大満足で熱海城の観光を終えた。
変人はまたもや「今のところ全部上手くいってる!!!」と叫んでいた。
何か決めゼリフみたいになってるし。
その後かなりの渋滞に巻き込まれ、疲れた僕達は海鮮丼を食べて、この旅を終える事にした。
しかし海鮮丼を探すが中々見つからない。
城とトリックアートに結構いたので時刻が15時を越していたのだ。
なので閉まっている店が多かったのである。
と、そんな中ふとあるお店が目に入った。
「うなぎ」である。
海鮮丼とはちょっと違うが、魅力的である。
しかし、値段的にもやりすぎな気もする。
とりあえずもうちょっと見て回ってから海鮮丼が無理ならうなぎという結論に至った。
そして海鮮丼を探すがやっぱり見つからない。
「これはもううなぎや!」と2人で叫び、店に戻ると
「本日分、終了しました」の張り紙が。
顔面蒼白になるおっさん2人。
変人が「あかん、全てが裏目に出てる!」と叫んだ。
今までのセリフの逆バージョンである。
と、その時。
玄関がガラガラと開き、店の人が出てきて
「あと2人分だけならいけますよ!!」と言ってくれた。
僕達は思った。
奇跡!!!
おっさん2人で良かった!
まさかここにきて2人が活きてくるとは!
3人でも4人でもなく、2人!
2人だからこそ辿り着けたうなぎ!
おっさん2人最高!
変人はもちろん「今のところ全部上手くいってる!!!」と叫んだ。
僕も「そやな!」と叫んだ。
おっさん2人差別(思い込み)から始まったこの旅。
最後はおっさん2人だからこそうなぎを食べる事が出来た。
おっさん2人も捨てたもんではない。
ちなみに久しぶりのうなぎはめちゃくちゃ美味かった。
大満足中の大満足。
がっつき過ぎて写真撮るの忘れた。
店を出て、変人は言った。
「あ〜もう満足や!夏にやりたい事、全部やった!!!」
僕は「夏にやりたい事??」とこの2日の内容を振り返って思ったが、そっとしておいた。
駅に戻り、電車までの時間がちょっとだけあるので、それぞれお土産を見て回った。
お土産を見ながら僕はボーっと考え事をしていた。
前半はおっさん2人の思い込みによって色々あったが、逆に後半は変人の「全部上手くいってる」の思い込み?によって楽しく過ごせた気がする。
やっぱり何事も悲観的になってはいけない。
最近の僕は相当悲観的になってしまっていた。
今後いい事なんてないんじゃないかと思ったりもしていて
だからこそ海のおっさん2人差別の思い込みにも繋がったりしたのだが
やっぱりそれではいけない。
現状がどうであれ、これから上手くいくと思い込みであっても信じていかんと。
ラストサマーラストサマー言うてきたけど、来年以降も夏はあるし、これからの夏もいい事はあるし。
そう思い込まんと。
信じるものは救われるやないけど、人生やっぱりそういう部分結構あるし。
まさかこの旅行、そして変人から、こんな事を考えさせられるとは。
ただまあ悪い方の思い込みはあかんけど。
最後言うてた「夏にやりたい事、全部やった」もよう分からんし。
海以外でどれが該当するねん。
あとラストサマーて結局何なんや。
そんな事を考えていると、変人が目を血走らせながら僕の元に駆け寄ってきた。
そしてこう言った。
「大変や、若い女の子がほんまに"それな!"て言ってた!!」
僕は?となったが、よくよく聞くと
変人は"それな!"がネットだけの言葉で実際に使っている人はいないと思い込んでおり、ドラマ等でたまに"それな!"が出てきた時は「それ実際使ってる人おらんねん!適当に作りやがって!」と怒っていたそうだ。
うん。
何の思い込みやねん。
こうしておっさん2人の熱海旅行は終了した。