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【インタビュー】西本願寺で働く人たち/vol.1
「まだ知られていない西本願寺の魅力を伝える、お寺の企画・広報の仕事」
お寺に参拝したことはあったとしても、まだまだ知らないお寺の中のこと。ここでは西本願寺で働く人たちに焦点を当て、お寺にあるさまざまな仕事や行事など、働く人の視点からお寺の姿を紐解いていきましょう。
今回お話を伺ったのは、龍山智海(たつやまともみ)さん。週末は広島県三原市にある実家のお寺の住職として、平日は西本願寺の内務室にて勤務されています。住職として、西本願寺職員として、二拠点で生活をする龍山さん。幼少期のお寺での暮らしや、西本願寺への就職、そして現在の働き方まで。僧侶として歩んできたこれまでの足取りについてお聞きしました。
僧侶として生きるか悩んだ学生時代
ーー龍山さんは、ご実家もお寺なんですよね。
広島県の三原市にある寺が実家なんですが、私が生まれたときは父が西本願寺で働いていたので、京都にいました。この近くの宿舎で暮らして、西本願寺中央幼稚園に通っていたんですよ。小学校にあがる前に、広島に戻りました。幼稚園では、金メダリストのカール・ルイスが西本願寺に来山された時に、園児みんなで「Welcome」と声をそろえて言う練習をしてお出迎えしたことがいい思い出です。
ーー小さい頃から仏教が身近にある環境だったんですね。
幼稚園のときが一番、仏教を自然な気持ちで受け入れてたのかもしれません。親がよく言うんですよ。「あんたが小さい時は『僕らみんな仏の子やもんな』って言うような素直な子どもだったのに…」って。そこから紆余曲折あって、今のようになってしまいました(笑)。
ーー他の家庭との違いを感じられたことはありましたか?
学校から帰ると、寺に※ご門徒(もんと)さんがお参りに来られるじゃないですか。だから、「お寺のぼっちゃん」として育ちました。お寺の行事があると参加しますし、机出したり、ちょっとした手伝いがあったり。思春期になると、わざと用事をつくって出ないこともありましたよ。
※門信徒:信者のこと
ーーお寺を継ぐという意識は、小さい時からあったんですか。
ぼんやりとですが、ありましたね。でも学生時代は、決められた通りに生きるのが嫌だなぁとは思っていて。迷いを持ちながらも大学院まで進んで、いよいよ就職活動というときに、お寺以外の選択肢も持ちたくて、一般企業も受けて内定をもらいました。
でもやっぱり実家のこともあるし、大学生のときに得度(僧侶となるための出家の儀式)は終えていたので、西本願寺の採用試験も受けました。そして、ご縁をいただき、やっぱり西本願寺で働こうかなと。
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ーー採用試験があることに驚きました。普通の就職と変わらないんですね。
私のときの採用試験は、仏教についてはもちろんですが、一般知識や英語もありました。でも英語はお釈迦様の話を和訳するという特殊な試験でした(笑)。研修が終了すると、配属先が決められます。事務方もあれば、参拝者の受付、僧侶としてお勤めをするなど、様々な役割があります。一般企業のように、人事異動もありますよ。
ーーお寺を継ぐか、西本願寺で働くか、どのように決められるのでしょうか?
お寺って、お寺の収入だけで維持していけるところばかりではないんですよ。お寺を継いで、平日は役所や一般企業で働いたり、学校の先生をして、維持されている方もいます。まずは経験や人との繋がりを増やすために西本願寺に勤務するという方もいます。私も平日は西本願寺で勤務して、週末は三原へ帰るという形で働いています。
開かれた西本願寺へ
ーー現在担当されている仕事について、教えてください。
私が所属している内務室は、一般企業でいう総務のような立ち位置の部署ですが、さらに企画や広報も担当します。例えば特別な式典やイベントなどを行うとき、チームを立ち上げて、各部署から人を集め、遂行します。さらに財団法人設立準備事務室も兼務してるんですが、ここでは一般財団法人の立ち上げを担当しています。財団法人では、宗教法人で取り組めない新たな分野の活動をしていく予定です。
ーー今回のメディア(note)の立ちあげにも関わっていただいていますよね。広報というところでは、どのような考えをもって取り組んでいますか?
もちろんご門徒さんに向けて情報を的確に届けることも大切にしていますが、このnoteもしかり、これまで浄土真宗の教えにあまり触れてこられなかった方、西本願寺と接点がなかった方にも興味を持ってもらえるような、開かれた西本願寺を目指しております。
note以外にも、新たな広報企画の一つとして、フリーマガジンを発行する準備をしています。元々発行している冊子があったんですが、主に西本願寺のことだけの情報発信になっていました。新しいフリーマガジンでは、西本願寺だけでなく周辺エリアのご紹介も積極的に行います。
昔はお寺の周囲に門前町が形成されて、そこに宿所や飲食店が立ち並び、にぎわいが生まれていました。誌面上で西本願寺周辺の魅力を伝え、人を呼ぶことができれば、それはかつてのにぎわいを取り戻す一助になるのではないかと考え、このような企画がスタートしました。
先ほど「開かれた西本願寺」と言いましたが、実はすでにお寺は地域に向けて開いてるんです。でも、外から見ると「用もなくお寺に入っていいのかな」「関係者しかお参りできないんじゃないか」と思われることもあると思います。このハードルを下げるためにも、ユニークな企画や積極的な情報発信に取り組んでいきたいですね。
おひとりさまでも楽しめます
ーー西本願寺の中で、お気に入りの場所を教えてください。
私が好きなのは、御影堂(ごえいどう)と阿弥陀堂(あみだどう)の間にあるお茶所です。ガラス張りなので、椅子に座って両堂を見ると、とてもきれいに見えます。以前はこの場所を使って、アパレルブランドのBEAMSとコラボレーションして、「ビームスジャパン西本願寺」を期間限定で出店しました。
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他にも映像のクリエイティブを手がける『NAKED』とコラボレーションして、唐門で光のインスタレーションを行ったこともあります。こういった期間限定の催しを行ったこともある場所は、特に思い入れが詰まっていますね。
非公開にはなりますが、「虎渓之庭」もお気に入りの場所です。中国の廬山にある「虎渓」という美しい谷があり、そこをイメージして造られたと言われています。本願寺の御影堂の屋根を山と見立て、大きな石は虎渓の谷を演出してるんですよ。
縁側にじっと座って庭と対峙する。風を感じながら、季節を感じながら、時が経つのも忘れて過ごす時間は格別だと思います。
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ー素敵な時間を過ごせそうですね。特別な日でなくても、参加できる行事などはありますか。
西本願寺では毎朝6時から阿弥陀堂と御影堂で「お晨朝(じんじょう)」と言いますが、朝のお勤めをしています。そこで読経を体験していただくのも良いのではないでしょうか。最近では若い方も参加されていますよ。
最初は「恥ずかしい」「難しそう」という気持ちがあっても、お堂という特別な空間で、ご参拝の皆さんと同じように声を出してみると、なんだかすっきりするんですよ。「仏教はよくわからないけど、楽しかった」「大きな声を出してすっきりした」というお言葉もいただいています。
声をずっと出し続けるのは、ある意味デトックスになるのかもしれませんね。まずは触れてみるという体験が大切なのだと思います。おひとりさまでも、お気軽にご参拝できますので、ぜひ多くの方に体験していただきたいですね。