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書評「法のデザイン」(水野祐)

僕に仕事の基礎を教えてくれた師匠が、繰り返し話してくれた事がある。

ルールは守るものだ。自分を守ってくれるからな。

僕にとって、法律・ルールとは「規制」するものではなく、何かを実行するときの拠り所となるものだった。それは師匠に教わったからだ。だから、会社の管理部門と意見が食い違うことが何度もあった。

管理部門にとっては法律やルールは「守るもの」であり、僕とは解釈が違う。意見が食い違うことを前提に、話し合って妥協点を見つけようとしてくれる人なら良いけど、「ルールで決まっているからこれしかやらない」と言う人との話し合いは大変だった。

ある時「法律を駆使してイノベーションに取り組む弁護士」の記事を読んだ。

ルールを守ることを強要する弁護士ではなく、新しい取り組みを支援するためのルール作りや解釈に取り組んでいる弁護士がいると知り、水野さんのインタビューが記事が出ると必ずチェックしていました。

そして、水野さんが「法のデザイン」という本を発表したということは知っていたのですが、なかなか手に取る機会が訪れず、時間ができたこのタイミングで、ようやく手に取って読むことができました。

法律をどう解釈し、どう変えるか。

本書に書かれているのは、社会を発展させていくために、どう法律やルールを解釈し、時には作り変えていくべきか。考え方やアプローチの方法について書かれています。法律は守るか、破るか。この2択しかないと思われていましたが、法律で社会で起こる出来ることを全てカバーできるわけではありません。

条文に書かれている内容ではカバーできない「余白」をいかに解釈するか。大切なのは、いまの自分が向き合っている法律やルールを解釈するときに、自分のためだけでなく、社会のためになるような解釈ができるか。そして、時代に合わなければ、変えていく努力を惜しまないこと。本書はそんなことを分かりやすく説明してくれます。

「法のデザイン」の冒頭には、こんな言葉が書かれています。

「大切なことは、ルールは時代とともに変わっていく/変わっていくべきという認識と、ルールを「超えて」いくというマインドである。ルールを超えていくことは、ルールを破ることを意味しない。ルールがどうあるべきかということを主体的に考えて、ルールに関わり続けていくことを意味する。ルールを最大限自分寄りに活かすことは知性の証明に他ならない。」

冒頭に話した上司は、「ルールは守るものだ」と繰り返し話してくれるとき、こう付け加えるのも忘れませんでした。

ただ、どう解釈するかは個人の自由だ

法律に対する考え方を変えてくれる書籍です。おすすめです。


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西原雄一
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